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先生、事件ですっ!

危険な郵便物

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「先生、調査料金はお支払いしますから、一緒に携帯電話会社に行ってくださいませんか?

 真実を知るのが怖いんですっ」
と言う平川に、

「いえ、私が訊いてきましょう。
 スマホでもそういう事象が起こったりするのかどうか」
とようやくいつもの桂らしいことを言ったと思ったら、

「津和野に携帯電話会社があると思いますので、訊いてきます」
と言い出した。

 萩にもありますよっ!?
と夏巳は心の中で叫んだが、桂を信望している平川は何故かそこで感激する。

「先生、ありがとうございますっ」

「では、津和野からまたご連絡致します」
と桂が言うと、ありがとうございます、と平川は深々と頭を下げて帰っていった。

「……水曜か」
とエンジンをかけながら、桂は呟く。

「いや、きっと奥さんは浮気してないな」

「えっ? 何故ですか?」

 意外に名推理なときがあるからな、と思ったとき、誰かが桂側の窓を叩いた。

 見ると、郵便屋さんだった。

「桂先生、郵便です」

「日曜ですよ」
と今、受け取りたくないのか、桂は即行言った。

 またなにかに邪魔される前に出発したかったのだろう。

 だが、郵便屋さんはお構いなしに笑顔で職務をまっとうしようとする。

 リズミカルにまた窓を叩き、
「レターパックです。
 手渡しの」
と言ってきた。

 桂は渋々窓を開ける。

 サインをし、受け取ったレターパックの中に入っていたのは、真っ白な洋風の封筒だった。

 赤紫の紋章のシーリングワックスで封印してある。

 封筒にはなにも書かれていないが、レターパックの差出人の名前は――

「怪盗X……。
 よくこれで配達したな、郵便屋」
と桂が封筒を見ながら呟いていた。

 日曜でも忙しげな郵便屋さんはとっくの昔に消えている。

「ちゃんと住所が書いてあるからじゃないですか?」

 この近くの住所のようだ。

「あと、(株)と小さく書いてありますよ」

 株式会社怪盗X。

 怪しいことには変わりないが、これだと会社名にも見える。

 郵便局で拒否されないようにだろう。

 ……私なら拒否するが、株式会社怪盗X。

「なかなか小賢しい連中だ」
と封筒を見ながら桂が呟いた。

「えっ?
 先生、知ってる方なんですか? 怪盗X」

 そんな怪しい知り合いが居るのなら、津和野になんて行かなくても、すぐにも事件を起こしてくれそうだが。

 しかし、それにしても、この住所。

 このすぐ近くのようなんだが。

 この番地、何処だったかな?

 あと差出人の電話番号が妙に語呂がいい感じなのが気になるが、
と夏巳が封筒に書かれた住所を見ながら思ったとき、桂が封筒を開け、中身を取り出した。

 結婚式の招待状のような厚みのある白い紙。

 桂がそれを開けると、週刊誌から切り貼りしたらしい文字が見えた。

「先生っ、絶海の孤島に招待されてますよっ」
と横からそれを読んだ夏巳は叫んだが、ぽい、と桂はそれを後部座席に投げ捨てる。



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