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第三章 のっぺらぼう
面倒臭いお人だんすね
しおりを挟む「本当にしょうのない方だんすね。
咲夜が首を突っ込まないよう、見張っておいてくれと頼んだだんすのに」
なんで一緒に覗き女探しに参加してるんだんすかと、ひとり桧山の部屋に呼ばれた那津は怒られていた。
「すまない」
と那津は素直に詫びる。
「いつもあんな場所にひとりでは可哀想だなと、つい、思ってしまって」
桧山は溜息をついて言う。
「貴方も長太郎と同じだんすね。
甘やかせばいいってものじゃないだんすよ」
「長太郎というと、あの油さしの男か」
あの顔と雰囲気で女を甘やかすようには見えないのだが……。
だが、桧山は、
「ああ見えて、咲夜の言いなりだんすよ」
と言う。
「かと言って、今更、他の者を咲夜につけるわけにもいかないだんすけど」
咲夜の存在を知る人間は少ない方がいいからだろう。
何処から広まるかわからないらだ。
「長太郎にお目付役を任せたのは、左衛門か」
「そうだんす。
長太郎は若いけれど、信頼されているだんすからね。
長太郎は左衛門の――
息子だという話だんす」
「そうなのか?」
「馴染みの芸者が産んだ子なんだんすがね」
遊女でもなく、芸者というところがまた、ややこしそうだと思った。
「長太郎はそのことを?」
「知ってると思うだんす。
息子らしい扱いを受けたことはないと思うだんすけどね」
ところで、さっきの話だんすが、と桧山は話を変えた。
「覗き女は霊じゃないというのは、本当だんすか」
「あんたが途中で来たから、確認は出来なかったが。
二つ目以降の覗かれた障子には穴が空いてなかったんじゃないのか?」
「そうかもしれないだんすね。
若い者が障子を張り替える話をしてただんすが、何枚もという話ではなかっただんすから」
「そうか。
では、覗かれた女の方が問題だ。
そのとき居合わせた女に会えないか」
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