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美しい姫か、賢い姫か
見送りの儀式と任命式
しおりを挟む旧王家の姫を誰に当てがえばいいのか迷っていた王にとっても、その話は渡りに船だったらしい。
盛大な見送りの儀式が行われた。
アイリーンが真っ白なドレス。
王の娘、バージニア姫が金のドレスで参列する。
美しいが、見るからに気の強そうな顔をしているバージニアが言う。
「アイリーン、あなたはただの数合わせで行くのだから、なんの心配もしなくていいのよ」
アイリーンと年も近いのだが。
趣味嗜好が違いすぎて、そんなに一緒に遊んだ記憶はない。
「はい、ちょっと異国を旅するくらいの気持ちで行ってまいります。
お気遣いありがとうございます」
アイリーンの侍女、三つ年上のメディナは、バージニアがアイリーンの側を去ったあと、小声で言ってきた。
「まあ、なんです? あの言い方。
私、あの方、苦手です。
今まであまり接触もなかったから、助かってたのに。
彼の国では、顔を合わせる機会も多いのでしょうか?」
「いやあ、ないんじゃない?
向こうはこの国の姫。私はただの数合わせだし」
式の最後に、それぞれがコルバドスの使者がいる別室に呼ばれ、妃候補の任命状のようなものを手渡されるようだった。
任命の間に行くと、使者、コリー・ドキニオンが待っていた。
宰相ベネディクトもこちらに移動してきている。
幼い頃から知るアイリーンの旅立ちに、ベネディクトは涙ぐんでいるようだった。
アイリーンは使者の前にひざまずく。
使者は巻き物を広げ、アイリーンの名を読み上げた。
「アイリーン・アシュバーン。
そなたを8888番目の妃候補に任命する」
8888……と口の中でつぶやくと、不満に思っていると思われれたのか、
「東洋では縁起のよい数字らしいぞ」
と使者がフォローを入れてくる。
「我が国に着いたら、王は順番に巡っていらっしゃるので、静かに待つように」
いやいや。
それは一体、いつ回ってくるのですか。
妃候補ということになってはいるけれど。
王様と会うことすらなさそうだ、とアイリーンは胸を撫で下ろす。
そのあと開かれたパーティで、アイリーンは使者に問われた。
「そういえば、ほんとうにこの娘でよいのかとアルガス王に念を押されたのだが、お前にはなにかあるのか」
「はあ。でも、王様にはなにも関係ないことですから」
8888番目。
王様、絶対、回って来なさそうだからな、とアイリーンは思う。
「そういえば、バージニア姫は何番目なのですか?」
そうなんの気なしに訊いてみた。
「8887番目に決まっておるだろう。
お前の前なんだから」
「じゃあ、姫のところにも回ってこないじゃないですか」
「王様に目通りかなう順番は、先着順だ。
身分は関係ない」
それはそれで公平だな。
私は8888番目で助かるけど。
姫はキレそうだな、と思いながら、支度を整え、すぐさま旅立ったバージニア姫に数日遅れて、国を出た。
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