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不審な人物が現れました
誘い込まれる喫茶店
しおりを挟むここが――
喜三郎が珈琲を淹れている店か。
あいつの店なのだろうか……。
そんなことを思いながら、末太郎は道に立っていた。
緑に包まれた感じのいい喫茶店。
喜三郎がここにいると聞かなければ、かなり好感を抱いていたことだろう。
だが、喜三郎がここに出没していると聞いたからこそ、来たのだが。
そんなことを末太郎が考えていると、横からいつも自分に付き従ってくれている白田が言う。
「とりあえず、入ってみましょう」
二人で喫茶店の敷地に足を踏み入れかけ、はっ、とした。
店の扉を開け、とんでもない美女が現れたからだ。
長い黒髪に白い肌。
小さい顔。
知的な瞳。
しっとりとした雰囲気。
いつまでも向かい合って語り合いたいと思う感じの美しい女性だった。
……実際、向かい合って語り合ったら、物騒な話しかしてこないのだが。
末太郎たちは、そんなことは知らなかった。
「いらっしゃいませ。
どうぞー、お入りくださいっ」
とその美人に微笑みかけられ、外からまず、様子を窺おうと思ったことも忘れ、二人はフラフラと店に入り込んでしまった。
なんだろうな~?
おじいさんたちがこっちを窺っているようだ。
玄関前を少し掃こうと思い、外に出かけた琳は足を止めた。
「琳ちゃん、どうかしたの?」
年齢はそこそこ行ってそうだが、綺麗な常連さんが窓際の席から声をかけてくる。
「はあ、おじいさん二人が何故だか、外からこちらを窺ってらっしゃって。
このお店、入りにくいですかね?」
全然、と言って彼女は笑う。
メガネをかけ、髪をひとつにまとめて、ノートパソコンを打ちながら普通に会話してくる。
見るからに頭の良さそうな人だと、ずっと思ってはいるのだが。
突っ込んで訊かないので、未だに何者なのか、よくわからない。
まあ、お客さまのプライベートに首突っ込まない方が居心地いい空間が作れますしね、と、
「いや、犯人たちのプライベートはっ!?」
と将生たちに叫ばれそうなことを思いながら、琳は外に出てみた。
何故か自分の顔を見て、ビクつく老人たちに微笑みかけ、
「どうぞ、お入りください」
と声をかけると、老人たちはおずおずと店に入ってきた。
……地味な色のシンプルなジャケットとかだけど。
二人とも、ずいぶんといい仕立ての服だな。
何者なんだろう? と思いながらも、笑顔で席に案内する。
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