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学校VR ~七不思議~

呪われてるっぽい

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 一、二……と乃ノ子はちゃんと一段ずつ数えながら、階段を上がっていた。

 現実世界が見えていない乃ノ子に、みんなが慌てて道を開ける気配を感じる。

 十一、十二……

「十三っと」

 十三段だ。

 呪われてるっぽい、と思いながら、とん、と乃ノ子は上の廊下に足を乗せた。

 その瞬間、暗闇が明るくなる。

 あれ? と乃ノ子は廊下が白いコンクリートになっていたことに気がついた。

 そこは夕暮れのお弁当屋さんの裏だった。

 制服で姿ではなく、今の服装をした彩也子がいる。

 側溝の蓋の上に転がる白骨死体を見下ろしていた。

「これ……私なのかしらね」
と呟いている。

 いや、あんた生きてんじゃん、と思ったとき、現実に返った。

 ゴーグルを外してみる。

 普通にみんなが近くに来て、騒いでいた。

「十三段!?
 やっぱり、十三段!?

 ちょっと下りながら数え直してみてっ」
と紀代が言ってくる。

「突き飛ばすなーっ。
 落ちるでしょうがーっ」
と紀代に背を押され、乃ノ子は慌てて手すりをつかんだ。

 下にいる彩也子はあまり目を合わせずに、なにか考えているようだった。



 これ以上、学校の霊がいる場所を知りたくないので、次の七不思議の場所まで乃ノ子はVRゴーグルを外して歩いていた。

 紀代と風香と彩也子が先頭で騒いでいて、次が神川。

 そして、イチと乃ノ子だった。

「イチさん見えなかったから、やっぱり生きてるんですね」
 ゴーグルを手に乃ノ子は言う。

 つける人間によって違うようだが、乃ノ子の場合、このゴーグルをつけていると、生きた人間は見えない。

 イチが見えなかったことに安堵して乃ノ子は言ったのだが、イチは、
「なに基準で判定してんだ」
とたいして気の無い様子で言ってきただけだった。

 そのとき、チラと神川がこちらを見た。

 イチが、
「神川」
と呼びかける。

「……せっかく生まれ変わったんだ。
 俺のことも気に入らないようだし。

 そのまま俺たちには関わらずに生きていけ。

 お前は今のお前の人生を生きるんだ――」

 すると、神川はピタリと足を止めた。

 なにかをこらえるように俯き、低くうめいたあとで、神川はいきなり振り向き、叫んできた。

「そう思ってるのなら、そういう格好いいセリフ、言ってこないでくださいよっ!

 男だったら、
『いえ。
 俺は生まれ変わってもイチさんに付いていきますっ』
とか言いたくなっちゃうじゃないですか~っ」

 もう~っ、と神川はよくわからない文句を言ってくる。

「……神川、お前は少年漫画の読みすぎだ」
とイチは言っていたが。

 なんだかよくわからないが、男にしかわからないなにかがあるらしく。

 神川とイチが話しながら歩き出してしまったので、乃ノ子はひとり最後尾で、窓の外の月を眺め、考えていた。

 彩也子とお弁当屋の裏の白骨死体についてだ。


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