上 下
78 / 94
学校VR ~七不思議~

呪われてるっぽい

しおりを挟む
 
 一、二……と乃ノ子はちゃんと一段ずつ数えながら、階段を上がっていた。

 現実世界が見えていない乃ノ子に、みんなが慌てて道を開ける気配を感じる。

 十一、十二……

「十三っと」

 十三段だ。

 呪われてるっぽい、と思いながら、とん、と乃ノ子は上の廊下に足を乗せた。

 その瞬間、暗闇が明るくなる。

 あれ? と乃ノ子は廊下が白いコンクリートになっていたことに気がついた。

 そこは夕暮れのお弁当屋さんの裏だった。

 制服で姿ではなく、今の服装をした彩也子がいる。

 側溝の蓋の上に転がる白骨死体を見下ろしていた。

「これ……私なのかしらね」
と呟いている。

 いや、あんた生きてんじゃん、と思ったとき、現実に返った。

 ゴーグルを外してみる。

 普通にみんなが近くに来て、騒いでいた。

「十三段!?
 やっぱり、十三段!?

 ちょっと下りながら数え直してみてっ」
と紀代が言ってくる。

「突き飛ばすなーっ。
 落ちるでしょうがーっ」
と紀代に背を押され、乃ノ子は慌てて手すりをつかんだ。

 下にいる彩也子はあまり目を合わせずに、なにか考えているようだった。



 これ以上、学校の霊がいる場所を知りたくないので、次の七不思議の場所まで乃ノ子はVRゴーグルを外して歩いていた。

 紀代と風香と彩也子が先頭で騒いでいて、次が神川。

 そして、イチと乃ノ子だった。

「イチさん見えなかったから、やっぱり生きてるんですね」
 ゴーグルを手に乃ノ子は言う。

 つける人間によって違うようだが、乃ノ子の場合、このゴーグルをつけていると、生きた人間は見えない。

 イチが見えなかったことに安堵して乃ノ子は言ったのだが、イチは、
「なに基準で判定してんだ」
とたいして気の無い様子で言ってきただけだった。

 そのとき、チラと神川がこちらを見た。

 イチが、
「神川」
と呼びかける。

「……せっかく生まれ変わったんだ。
 俺のことも気に入らないようだし。

 そのまま俺たちには関わらずに生きていけ。

 お前は今のお前の人生を生きるんだ――」

 すると、神川はピタリと足を止めた。

 なにかをこらえるように俯き、低くうめいたあとで、神川はいきなり振り向き、叫んできた。

「そう思ってるのなら、そういう格好いいセリフ、言ってこないでくださいよっ!

 男だったら、
『いえ。
 俺は生まれ変わってもイチさんに付いていきますっ』
とか言いたくなっちゃうじゃないですか~っ」

 もう~っ、と神川はよくわからない文句を言ってくる。

「……神川、お前は少年漫画の読みすぎだ」
とイチは言っていたが。

 なんだかよくわからないが、男にしかわからないなにかがあるらしく。

 神川とイチが話しながら歩き出してしまったので、乃ノ子はひとり最後尾で、窓の外の月を眺め、考えていた。

 彩也子とお弁当屋の裏の白骨死体についてだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈 
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 令和のはじめ。  めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。  同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。  酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。  休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。  職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。  おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。  庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

処理中です...