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ホンモノの出るお化け屋敷

おしゃべりな奴は誰だ?

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「おしゃべりな奴、だーれだっ?」
といきなりやってきて、茂の目を塞いだものがいた。

 眼鏡と深めにかぶったキャップ。

 一応、変装しているようだが、どう見てもジュンペイだ。

 いや、ジュンペイさん。
 その、目隠しとだーれだ、の使い方おかしいです。

 そして、おしゃべりなのは、その人です、と思いながら、乃ノ子は茂を見る。

「ジュンペイさんっ」
と慌てたように茂はジュンペイを振り返っていた。

「あんまり乃ノ子ちゃんが可愛いから、つい余計なことまでしゃべっちゃった?」
と笑ってジュンペイは言っている。

 さすが芸能人様。
 照れもせず、そういうこと言うんですね……と思っていると、ジュンペイは勝手に乃ノ子を紹介しはじめた。

「この人、福原乃ノ子ちゃん。
 僕の兄の仕事を手伝ってくれている子なんだよ」

「えっ? 実は死んでるお兄さんのっ?」
と茂は訊き返している。

「実は死んでるっていうか。
 死んでるはずなのに生きてたっていうか、ちょっと不思議な兄なんだ。

 ……兄。

 兄なのかな……?」
とジュンペイは根本的な不安を訴えてくる。

「さ、寒気がするような話しないでくださいよ~っ」
と訴える茂に、

「大丈夫、大丈夫。
 僕でも滅多に実体には会えないレアキャラだから。

 突然、夕暮れの道で君の前に現れて、ぎゃーっ、なんてことはないと思うよ」
とジュンペイは笑って言っている。

 そのギャーッの瞬間、なにが起こるのか気になるところなんですけどね、と思う乃ノ子の前で、

「さあ、休憩終わりっ。
 行った行った」
とジュンペイが茂の背を叩く。

 そのとき、きゃーっという楽しげな悲鳴とともに、女子高生二人とお化けがお化け屋敷から飛び出してきた。

「あーあ、もう。
 乃ノ子ちゃんが、サービスしすぎるから、あれがうちの定番になっちゃったじゃん。

 幽霊っぽく引き上げてくの大変なんだからね」

 確かに。
 幽霊役の人はうらめしやのポーズをとり、後退していってお化け屋敷に入ろうとするが、幼児に白い着物の裾をつかまれ、絡まれている。

 助けに行った茂を見ながら、ジュンペイは乃ノ子に訊いてきた。

「さて、乃ノ子ちゃん。
 なにから訊きたい?」




 なにから、と言われると、訊きたいことが多すぎて、と乃ノ子は困っていた。

 というか、さっきから、チラチラこちらを見ている人たちが……。

 女子高生や主婦のような方々が、
「あれ、ジュンペイじゃない?」
と囁いているのが聞こえてくる。

 そのたびに、ジュンペイはそちらを向いて、笑顔で手を振り、

「なんだ、ジュンペイじゃないじゃん。
 そっくりさんだよ。

 ジュンペイだったら、女子高生といるとこ見られたら逃げるよ」
とか言われていた。

 でも、早くしないと、そのうち突撃してくる女子高生とかいそうだな、と思った乃ノ子は訊いてみた。

「あの、ジュンペイさん、イチさんとのご関係は?
 私、友だちに勧められて、あなたのチャットアプリをはじめて、イチさんと出会ったんですけど」

「さっき言ったじゃん。
 兄だって」

「……実は死んでるお兄さんなんですよね?」

 うん、それがさ、とジュンペイは腕組みして、遊園地の上に広がる夕空を見上げて言ってくる。

「僕の兄は生まれる前に死んでたはずなのに。
 なんでだかわからないけど、いるんだよね。

 どっちの記憶が正しいんだろうね。
 ほんとうに兄はいなかったのか。

 いたのに、いないことにされてたのか」

 夕空を映すその瞳は、そう言えば、イチと少し似ていた。

「どっちでもいいだろうが。
 とりあえず、俺は今、此処に存在してるんだから」

 うわっ、と乃ノ子は声を上げていた。

 イチがいつの間にか側に立っていたのだ。

 ……人間の現れ方ではない、と乃ノ子は思う。

 気を抜いたら、鏡に映らなくなるようだしな、と思う乃ノ子の心を見透かすように、今日も黒ずくめのイチはニヤリと笑って言ってくる。

「よし、乃ノ子。
 俺とミラーハウスに入ってみるか。

 面白いものが見えるぞ」

 なにも見えないの間違いでは……。

 乃ノ子は、ひとりミラーハウスにたたずむおのれの姿を想像していた。


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