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ムラサキカガミ
アプリの秘密
しおりを挟む授業中、乃ノ子はぼんやり黒板を見ながら考えていた。
ジュンペイのチャットアプリと都市伝説アプリは、やはり関係あるのだろうか。
イチさんが実はジュンペイだとか……。
いや、ないな。
話し方もアイコンも雰囲気全然違うし。
芸能人であるジュンペイのあの明るさが作り物だとしても、やはり、なにかが違う気がする。
じゃあ、ジュンペイのあのチャットボッドを作った人とイチさんが関係あるとか。
その可能性は高い気がするけど。
だとしたら、なんのために、そんなことをやっているのだろう。
そして、私が都市伝説と入れたら、イチさんのアプリが動き始めたけど。
紀代がやっても動かないのは何故なんだろう。
そんなことを考え、悩んでいる間に放課後になっていた。
その日の放課後、乃ノ子があのお弁当屋さんの前を通っていたら、友だちが言ってきた。
「ねえねえ、ムラサキカガミって知ってる?」
「あ、教えたな?
その言葉、二十歳まで覚えてたら死ぬって言うんじゃなかったっけ?」
殺人だっ、と乃ノ子が叫ぶと、友だちは笑う。
「他にもあるよ。
紫の亀とか」
「紫多いね」
「黄色のハンカチとか」
「それ、幸せになるんじゃなかったの?
そんな感じの映画があったよね」
「あと、赤い沼とか。
メリーちゃんニンギョウを覚えてると死ぬっていうのもあるよ」
と友だちは言う。
「さっちゃんニンギョウなら、しばらく忘れられそうにないけどね」
乃ノ子は苦笑いして、そう言った。
「でも、集めるの、言霊町の都市伝説じゃないと駄目みたいなんだよね」
「一般的なものでも、言霊町でその怪異が起こればいいんじゃないの?
此処のオリジナルでないと駄目なの?」
と友だちが突っ込んで訊いてくる。
「わかんないから、とりあえず、色を変えてみようかな。
他の色の鏡にするとか」
「ゴールデン鏡とかはすでにあるよ」
うーん、と唸った乃ノ子は、
「家に返って、百色色鉛筆を見ながら考えてみる」
と言った。
友だちは笑い、
「じゃあ、私、こっちだから」
と言って、横断歩道を渡って帰っていってしまった。
乃ノ子はひとり、陸橋の上を歩きながら思う。
なんにしようかな、色。
なでしこ色の鏡。
可愛すぎるな。
バナナ色の鏡。
……ちょっと陽気な感じがするな。
陸橋の真ん中辺りで、ふと足を止めた乃ノ子は、夕暮れに染まる街を見下ろし、呟いた。
「今日は、さっちゃんは疾走してないみたいだな~」
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