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街で屋台を眺めてみます
結局、なにをしに行ったんだろうな……
しおりを挟む群青色の夜空にぼんやり白く浮かび上がるメディフィスの城。
馬車を引く馬の蹄の音を聞きながら、アローナが篝火に照らし出された城門と城を見ていると、ジンが言ってきた。
「アッサンドラも美しい街なのだろうな」
砂漠の遥か向こうにある懐かしい故郷を思い出しながら、……はい、とアローナは頷く。
「すまない。
里心がついてしまったか」
とジンが謝ってきた。
「いえ、兄もエンもたまには来てくれそうですしね」
鷹なんか、その辺をいつも旋回してそうだしな~、とアローナは満天の星が見える夜空を見上げた。
城の中に入ったアローナは、みなに出迎えられながら思っていた。
結局、なにをしにいったんだったかな……と。
島に流れ着いて、家を建てた記憶しかないんだが。
ああ、あと、娼館で働かされてお小遣いをもらったか。
そもそも、そんなことをしに出かけたんだったろうか、と思ったとき、アハトと目が合った。
先に戻っていたようだ。
めっ、という感じにあの眼力で叱って来たが、アローナは苦笑いで誤魔化し、ジンの陰、アハトの死角に入るようにして部屋へと引き上げた。
部屋に戻っ途端、ジンが宣言してくる。
「式が終わるまで、お前には触らないようにする」
だが、その手は、また逃げたりしないようにか、アローナの腕をガッシリとつかんでいた。
いや、触ってます……、とその手を見下ろし、アローナは思う。
「今度から、お前の考えを優先し、触らないようにする」
いや、だから、触ってます。
「……お前が出ていくまで追い詰めてすまなかった」
いや、追い詰めたのはアハト様ですよ……。
「今度、お前が自分を見つめ直しに旅に出るときは私もついていこう」
いや、あなたとのことを見つめ直すのにあなたがついてくるの、おかしくないですか?
と思うアローナにジンは、
「恐ろしかっただろう、いろんなところに連れ去られていって」
と言い、今度は手を握ってくる。
いや、だから、また触ってますよ、と苦笑しながらも、アローナは振り解かず、その握られた手を見たまま言った。
「あ、でもいいこともありましたよ」
なんだ? と見下ろすジンにアローナは、ふふふ、と笑う。
「いろいろ使えそうな、有能な人たちを見つけましたからね」
「……なにかこう、悪寒がするな」
誰のことなんだ? というように見るジンには答えず、アローナは言った。
「まあ、いろいろありましたが。
終わりよければすべてよしですよねっ」
「……いや、いいか?」
とジンは手を握ったまま、真顔で訊き返してきた。
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