貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

菱沼あゆ

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自分探しの旅に出たいんですけど

アローナの居場所

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「居所を買えとはどういう意味だ」
とジンがシャナに訊くと、

「実はアローナ様から便りが来まして。
 この伝書オウムを難破して漂着した島まで連れてこいと」
とシャナは言う。

 おお、とアハトたちが声を上げた。

「アローナ様は島に流れ着いていらっしゃるのかっ」

「居場所がわかったのはよかったが。
 なんでアローナは私ではなく、お前に助けを求める?」
とジンが不満げに言うと、アハトが、

「そりゃ、ジン様から逃げたのに、ジン様に助けてを求めてくるわけないじゃないですか」
とズバッと言ってくる。

 うっ、と詰まりながらもジンが、

「で、アローナはその伝書オウムとやらを何故、島に連れてこいと?」
と感情を抑え、シャナに訊くと、

「伝書させて、助けを呼ぶみたいですよ」
かしているような鷹に頭をつつかれながら、シャナは言ってきた。


「……それ、インコ持ってったお前がついでに助けてくればいいんじゃないのか?」

「そうなんですけどね。
 なんだかわかりませんが、まあ、アローナ様なんで」

 なにが起ころうとも、アローナ様なんで、と流しそうな雰囲気でシャナは言ってくる。

「どうされますか?
 今、ジン様がアローナ様の居場所を買わなければ……」

「買わなければ?」

「レオ様――」

「なにっ?
 父上にアローナの居場所を売るというのかっ」

「いえ、レオ様もご存知なので、今度はレオ様が売りに来ると思いますよ」

「どういう状況だ……」

 アハトが、
「つまりは、ジン様が助けに行かなければ、誰もアローナ様を助けには行かないと言うことですね」
と言ってくる。

 確かに。
 シャナは本当にインコだけ渡して帰りそうだし。

 レオも自分で兵を出してくれそうにはない。

 っていうか。
 そう言うということは、お前も助けには行かないんだな……とアハトを見ながら、ジンは思った。

 アローナの居所が知れたので、アハトはもう落ち着き払っている。

 こっちは顔を見るまで心配で夜も眠れそうにないのに、と思うジンにシャナが言ってきた。

「ジン様、すぐに助けに行かれてもいいんですけど。
 伝書インコが助けを呼びに来てからにしてくださいよ」

 上陸せずに船で待っててください、とシャナは言う。

「待て。
 何故、伝書インコに気を使って待たねばならん」

「なんだかわかりませんが。
 盗賊のかしらがどうとか書いてありましたよ」

「盗賊っ?
 アローナは盗賊にかどわかされたのかっ?

 早く行ってやらねばっ。
 恐ろしい思いをしているに違いない!」

「そうですかねえ」
と肩にインコと鷹を乗せたまま、シャナは小首を傾げる。

「絶対、盗賊の方が恐ろしい思いをしてると思いますけどね」



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