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私の後宮に入れてやろう

娼館でなにか学んできたのか?

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「で? 娼館でなにか学んできたのか?」

 夜、寝所でジンが訊いてきた。

 なにを期待しているのですか、王よ。

 初夜もまだなのに。
 なにを学んでこれると思うのですか、と思いながら、アローナは言った。

「いえ、娼館の方々に、いろいろと相談に乗っていただきたかったのですが。
 結局、こき使われて終わりました」

「こき使われたって、お前が娼館でなんの役に立つのだ」

「いえ、カーヌーンを弾いたりですね」
と言うと、ジンは、

「……なんということをするのだ、お前は。
 店に客が来なくなって、賠償金を支払えとか言われたらどうするつもりだ」
と言ってくる。

「そんなことありませんよ。
 結構楽しんでらっしゃいましたよ、お父様」

「……なんだって?」
とジンが訊き返してきた。

「お聞きになっていらっしゃいませんか?
 レオ様が娼館にいらっしゃって。

 他の娘だと無礼があったら殺されるかもしれないというので、私が酒の席につかされました」

 どうやら、レオが娼館にいたことをジンに言ったものかどうか迷ったアハトが護衛たちに口止めしていたようだった。

 だが、ジンはそもそも、あの父親がおとなしく幽閉されているわけもないと思っていたらしく、特に気にしている風にもなかった。

 気になるのは別のことのようだった。

「お前が父にカーヌーンを弾いてみせたのか」
「はい」

「……父は金を返せと、娼館の女たちに迫ってなかったか」

「だから、面白がってらっしゃいましたよ。
 お父様が弾かれるカーヌーンで、私が歌を歌ったり」

「ずいぶんと楽しそうではないか……」
といじけるジンにアローナは言った。

「あと、シャナは男だとバレてます」

「やはり、あの女好きの父は騙されなかったか。
 まあ、シャナはああ見えて腕が立つから殺されはしないだろうが」

「お父様、それも面白がられてるみたいなので、そのままシャナを置いてくださるんじゃないですかね?」

 何事も起こりそうにないので、シャナの方が飽きて帰ってきそうですね、と言ったのだが。

「スパイに入ってても、やることは普通のことだろう。
 スパイが飽きずに楽しいという事態になることこそ、最悪だ」
とジンは言う。

 まあ、それはごもっとも、と思ったとき、

「……父にはなにもされなかったか」
とジンが訊きにくそうに訊いてきた。

「カーヌーンを弾いて歌っただけか」

「はい。
 それと、酌をしただけです」
と言うと、何故かジンは悔しがる。

「お前、私には酌をしてくれないじゃないかっ。
 私はしてやってるがっ」

「……し、しましょうか」
とアローナは慌てて、そこにあった酒瓶を手に取った。

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