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ダイダラボッチはなんで課長に憑いてるんでしょうね
それは不器用なことだな
しおりを挟む週末、その話を総司から聞いた司は、
「それは不器用なことだな」
と言ったあとで、ほれ、と家にあったキャンドルをひとつ持ってきた。
「萌子と隅の方でつけてみろ」
と司は言う。
総司は、祖父母と藤崎と共に、境内で話していた萌子を手招きする。
日が落ちかけた薄暗がりで、司に言われた通り、細長いガラスの器に入ったコーヒーミルク色のキャンドルに火をつけると、パチパチと薪が爆ぜるような音がした。
芯に自然木を使っているので、このような音がするらしい。
揺れるオレンジ色の光に萌子の笑顔が照らし出された。
「わあ。
焚き火してるみたいですね」
……なんかすごい喜んでる。
マンション買ってやろうと言ったときは、全然、喜んでなかったのに。
花宮がもらって、ほんとうに嬉しい物はなんなのか。
してもらって、ほんとうに嬉しいことはなんなのか。
それを知ることは、マンションを買ってやることより、ずいぶん難しいことのような気がする。
でも……と総司が萌子を見つめると、萌子は、ふふふとこちらを見上げて笑ってくる。
……可愛い。
ウリ坊より。
そう思いながら、総司は振り返り、司に礼を言った。
「あ、ありがとうございます、司さ……」
司は上を見てなにか言っている。
……誰に? と見上げたそこには、ダイダラボッチがいた。
もしや、ダイダラボッチと話してる!?
俺でもまだ話せないのに。
やはり、神っ!?
と見上げていると、それに気づいた司がこちらを向いて言ってきた。
「いや、耳がいいだけだ」
「耳?」
「ずっと小さな声で話していたようだ、ダイダラボッチ」
と言うので、総司はバチバチ言っている萌子の側から離れ、静かな場所で耳を澄ましてみた。
いや、萌子がバチバチ言っているわけではないのだが……。
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