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ダイダラボッチはなんで課長に憑いてるんでしょうね
恋に落ちました……
しおりを挟む……よかった。
いっしょに食べに行くことになって。
食事している私を他の店で待ってるとか意味不明だし……、と思いながら、萌子は社食で冷やし中華を食べていた。
「……課長はイケメンで出世頭かもしれないけど、不器用すぎるわ」
と何故か、自分ではなく、多英が総司に対する不満を述べていた。
「えー? そうですか?
あんなイケメンでやり手なのに、恋愛に慣れてない感じがぐっと来るじゃないですか~」
とめぐたちは言っていたが。
「ぐっと来るというか。
私は課長の得体の知れない行動に、胃と心臓がぐっと来てますけどね……」
と呟きながら、萌子は冷やし中華の上にのったキュウリをパリパリ食べていた。
「胃と心臓がぐっと来てるわりには、よく食べるじゃないの」
とずんずん減っていく萌子の冷やし中華を見ながら、多英が言ってくる。
ごま風味の冷やし中華を眺め、萌子は呟く。
「いやそれが、私、冷やし中華、嫌いなんですよね。
なんで頼んじゃったんでしょうね」
「そういえば、萌子が頼んだの、初めて見たよ」
とめぐが苦笑いして言っている。
「ごま風味なら食べられるかな、と思った気はするんですが。
そのあとの記憶がないんです。
気がついたら、此処でトレーにのった冷やし中華食べてました」
と言って、
「……えーと。
大丈夫?」
と多英に言われてしまった。
どうしよう。
私、めちゃくちゃ動揺しているようだ。
みんなが課長が私を好きなこと前提で語ったりするから。
課長のことだから、いろいろ考えすぎて、常人には理解できないところまで発想がいってしまっただけかもしれないのに。
でも――。
萌子は目の前にあるものを見つめながら考え、呟いた。
「……もしや、これは恋?」
「いや、俺の目を見て言うな」
とたまたま目の前にいた藤崎が言ってくる。
「で?
お前自身は課長を好きなのか?
課長の気持ちはよくわからなくても、自分の気持ちならわかるだろ」
そう藤崎に言われ、萌子は、うーんと悩む。
「今こう、リンゴを手にして迷っている感じなの」
「リンゴ?」
「これを食べたら、恋がはじまるのなら、食べようかな、どうしようかなみたいな」
「リンゴ食べて恋がはじまる話なんてあったか?」
「え?
白雪姫だよ」
「それは毒殺のはじまりだ……」
毒リンゴだろ、食うな、と言われてしまう。
「……あの話、毒リンゴ食べるくらいの危険を犯さないと恋がはじまらないという教えなのかと思ってたわ」
「……それは言い得て妙だな」
俺も最近、そんな気がしてる、と藤崎は言う。
「話聞いてくれて、ありがと、藤崎。
……ところで、またなにかに憑かれてるよ」
藤崎の後ろで、ウリがなにかに激突してひっくり返っていた。
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