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捧げられし王様
またしてもっ
しおりを挟む「ジャスラン、生きていたのか、よかった」
山と湖の国、ルーガリアに行くと、ジャスランたち一行は兄たちに出迎えられた。
「なるほど。
あの女神は、カンターメンの王の妃だったのか」
酒と料理でもてなしてくれながら、一番上の兄が言う。
「女神……?」
とジャスランは思わず訊き返していた。
「ある日、ドラゴンを従えた女神が現れ、我らを救ったのだ」
「……従えてたか?」
連れ去られたんだと思うが、とジャスランは呟く。
「山火事が止まらなくて困っていたのだが、ドラゴンが口から出した炎で、その周囲をぐるりと焼いてくれ、火事を止めてくれたのだ。
みな、ドラゴンに乗って現れた娘を女神と崇め奉っている」
「……何処へ行っても、そんな感じなんですね」
とコルヌが言い、
「もう、あいつが王になればいいんじゃないか?」
そうジャスランは呟いた。
一応、年老いた皇帝にも挨拶したあと、ジャスランはそうそうに山に行こうとする。
ハルモニアとドラゴンが滞在している村があるのだ。
「ハルモニア姫に会いに行くのか?」
「ああ」
「ジャスラン、国はもう落ち着いている。
帰ってきて、結婚しろ。
お前の母の家を継げ」
「いや……」
「そんなにカンターメンは居心地がいいのか」
「まあ、面白い」
そうか、と言った一番上の兄は、
「カンターメンは懐柔するのが上手いから、そもそも交渉を受け入れるつもりもなかったのだが。
ちょっと話してみるか」
と言っていた。
「わかった。
王に伝えておくよ」
だが、そこで兄はちょっと上を見て、考える風な顔をしたあとで言う。
「実は、ひとつ、まずいことがある」
「まずいこと?」
「スタンがハルモニア姫とドラゴンのもとに行き、我々のメッセージを伝えてくれたりしていたのだが。
……すっかり、ハルモニア姫にメロメロのようで」
「なんだって?」
行ってみればわかる……と腕組みした兄は渋い顔で言った。
「止めてくれるな、ジャスラン。
私はハルモニアと結婚する」
「兄上……」
スタンはジャスランの二つ上の兄だった。
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だが、それが何故か、あのハルモニア姫にメロメロらしい。
……ハルモニアは凶悪ではないが。
なんというか、こうと思ったら、即、行動みたいなところが、奴の母親に似ているな。
兄上はマザコンだったのかな、と思いながら、ここから帰らぬと村の入り口で踏ん張る兄を見る。
「ハルモニアを連れて帰らねばならないのに、まず、この兄を退けないといけないとは……」
そうジャスランは呟いた。
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