7 / 41
捧げられし王様
ひとつ、いいだろうかっ!?
しおりを挟む「それで、その金塊を牢獄に入る前に知り合った宝石商に売り渡してですね」
今、牢獄挟んだか!?
さらっと!
とジェラルドは心の中で絶叫していた。
「そういえば、さっきの砂金の川の話も牢獄で聞いたんですけど」
そこで、ハルモニアはこちらの表情に気づいたのか、教えてくれる。
「あ、牢獄ですか?
いろいろ適当な予言してたら、民衆を惑わすものとして、牢屋にぶち込まれたんです」
お前だったのか、噂の怪しい予言者はっ。
あの女神像を作った一族の男とともに牢屋に放り込まれたとかいうっ。
そんな風に弾きつつ、語りつつ、周囲にまで気を配れるのはすごいと思うし。
上に立つ者の素質はあると思うが。
話の内容に問題がありすぎて、この娘を妃候補にしておいて大丈夫かと不安になる。
「そうだ。
この船は牢獄が縁でもらったようなものなんですよ」
待て。
その話も気になるが、何故、牢獄に入ったのか、そのくだりをもう少しっ、と言いたくなる気持ちをジェラルドは、ぐっと堪える。
口を開いてしまったら、その瞬間、この美しいがとんでもない娘が側室妃になってしまうからだ。
誰だ。
こんなロクでもない決まりを作ったのはっ、と思ったが。
宰相にそんな決まりを作らせてしまったのは、自分のせいだ。
「この帆船、昔、世界に名を馳せたという大海賊、ゼリウスが隠してたものらしいんですが」
そいつは、未だに世界中でお尋ね者になっている奴だが。
「牢名主さまに言われて行った、『大海賊』っていう居酒屋の店主がもういらないからとくれました」
私もよくお忍びで行ってる居酒屋っ。
気さくで気のいい、働き者の店主は女性の胴くらいありそうな太い腕をしているのだが。
その腕には大海賊、ゼリウスがしていると噂のイカリとドクロを組み合わせた刺青がある。
……ゼリウスの真似をしているのだといつも笑っていたが。
まさか、ホンモノだったのかっ!?
街の子どもたちもよく伝説の大海賊ゼリウスの真似をしているから、その延長くらいに考えていた。
娘は、ポロポロとハープを軽やかに奏でている。
目を閉じ、曲に入り込むように弾いているその姿は女神のように美しい。
だが、ひとついいだろうか、娘よ。
お前の話とこの儚げな曲がまったく合っていないのだがっ。
ああ、突っ込まずにいられないっ!
若いのに、常に落ち着いていて威厳がある、と侵略した土地の民からも崇拝される偉大なる王、ジェラルドは森のケモノのように、ウロウロ甲板を歩き回りはじめる。
67
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

ひめさまはおうちにかえりたい
あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる