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海に浮かぶ証拠と第三の殺人(?)
暁島の十三不思議
しおりを挟むそのまま、消えずの火を二人で眺めに行く。
薄暗いお堂の中で、今日も赤々とした炎がもったいないくらい燃えていた。
その炎に顔を照らされながら、倖田は大真面目に言ってくる。
「宮島の七不思議とかあるじゃないか。
対抗して、暁島の十三不思議とか考えようかと思うんだが」
何故、そんな不吉な数字にしましたか、と思いながら、茉守は問うた。
「十三もあるんですか?」
「『消えずの火は、ほんとうに千年前からの火なのか』とか。
『消えずの火って、宮島からのパクリじゃないのか』とか。
『火の番をしに上がってくるジイさんは、いつも年をごまかすが、本当は幾つなんだ』とか」
「……そんなに細かく分けたら、消えずの火だけで、十三行きそうですね」
と茉守が言ったとき、
「あの~、すみません」
と明るいお堂の外から遠慮がちな女性たちの声がした。
「倖田先生ですよね?」
OLのグループらしき観光客が立っていた。
「あの、私たち、先生の大ファンなんですっ。
後援会のリーフレットも大事に取ってますっ」
ああ、あれ、顔がバーンッと出てるもんな……。
「一緒にお写真とか、お願いできますかっ?」
政治家にファンってどうなんだろうなと思ったが、倖田は愛想よく応対し、握手までしていた。
「あ、じゃあ、私、写真撮りましょうか」
とつい茉守は言っていた。
「こちらは、役所の菊池さんです」
と倖田が茉守を適当に紹介する。
観光地を役所の人間と見て回っていたという設定なのだろうか。
いや、案内してもらっていたのは、こっちなんだが、と茉守は思う。
「すみません。
お願いしますっ」
と彼女らに言われ、スマホを預かった茉守は消えずの火のあるお堂の全景が入るように少し下がって写真を撮ろうとした。
「あの、人が増えたりしてたらすみません」
と言う。
茉守が撮ると、霊が写り込むときがあるからだ。
えっ? 人が増える……?
と女性たちはなんだかわからないまま、苦笑いしていたようだったが。
倖田はすぐにわかったようで、溜息をつき、
「誰か別の奴に――」
と言いかけた。
ニートとマグマが下から歩いて上がってくるのが見えた。
茉守は、
「かき氷屋さん」
とお堂の隣にあるかき氷屋を呼ぶ。
えっ? なんですかっ?
と茉守の言動を不安に思っているらしいかき氷屋が怯えたように返事してくる。
「すみません。
私、お店番しますから、写真撮ってください」
と茉守が言うと、
「なんだ、そんなことなら別にいいですよ」
とホッとしたように言い、スマホを受け取ってくれた。
茉守はかき氷屋にやってきたマグマたちに向かい、いらっしゃいませ、とデパートの店員のように優雅に頭を下げる。
「……なんか山頂の売店がグレードアップされた感じがするぞ」
とマグマが呟いていた。
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