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容疑者マグマと第二の殺人

死体が山頂から落とされた理由

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「だいたい、なんで俺がニートに罪を着せるんだよっ」

「ニートの方がモテるからだろ」

 前科者だからと言わないところが、マグマさんだな、と思いながら、茉守は二人のやりとりを眺めていた。

「混乱してますね」
と言うと、倖田が振り返って睨む。

「……お前も大概、混乱させてるだろ」

 そんなセリフを聞き流し、茉守はロープウェイの方を目を細めて見る。

「ロープウェイだと係の人も居るので、人目につきますし。
 斜面転がした方がやっぱり早いですよね。

 と言いますか。
 そんなややこしいアリバイ作るより。

 海の近くに呼び出して殺して、投げ捨てた方が、証拠が少なくて、犯人、わかりにくいですよね。

 あのプチプチとか、でっかいサイズなんで、入手経路、簡単にわかりそうですし」

 マグマから少し離れた倖田が、ふう、と疲れたように溜息をついて言う。

「まあそうだな。
 フリマアプリやってる主婦が、梱包用に持ってるにしてはデカいしな。

 工場とか、店とかから持ってきたんだろうかな。

 ホームセンターで購入したにしても、ネットサイトで買ったにしても、ある程度、割れるかもしれないし。

 確かに海にそのまま投げ捨てた方がよさそうだ」

 茉守はそこで少し考え、
「でも、フリマサイトで使う梱包資材とかは、100均で小さいのを買うより、ホームセンターなどで大きなのを買った方が安いらしいので。

 フリマサイトをやる主婦が持ってないとは言い切れないかもですね」
と言った。

 倖田とマグマが驚いて訊いてくる。

「なんでそんなにフリマサイトの梱包に詳しいっ」
「お前、フリマとかやるのか!?」

 まったくイメージになかったからだろう。

「らしいですよって言ったじゃないですか。
 美容院にあった雑誌で読みました」

「美容院に行くのかっ?」
と二人同時に叫ぶ。

 ……この人たちの中の私、どんな感じなんだろうな、と茉守は思う。

「ところで、死体が山頂から落とされた理由ですが。
 ニートさんに罪を着せるためじゃないのなら。

 この場所に死体が落ちてしまったのは、たまたまで。

 何処かに運ぼうとして、落としてしまっただけ、という可能性もありますよね」

「まあ、そうだな」
と倖田が頷く。

「その場合は、何処に運ぼうとしてたんでしょうね」

 マグマが、
「お前が言うように海に投げ捨てようとしたとか?
 うっかり山頂で殺してしまって。

 此処は観光客も来るから目につくと思った犯人が、上から落として、海まで持っていこうと思ったとか」
と言ったが、倖田が、

「海まで運んでく方が目につくだろ。
 山中に投げといた方がいい。

 まあ……いつかなにかで、こんな感じに転がり落ちてくる可能性はあるが」
と呟く。

「……海に投げ捨てようとしたのなら、別の理由である可能性もありますよね。

 犯人は、島に遺体を置いておいてはならない、という島の風習に従って。
 遺体を海に落とそうとしたのかもしれない」

 え? と倖田たちが見る。

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