上 下
46 / 65
エミリ、魔法の絨毯を所望す

エミリ、部屋を作る

しおりを挟む
 
 よしっ、なんか忙しくなってきたぞっ、とエミリはロンヤードや兵士たちのための部屋の準備にとりかかる。

 魔王様が同じ部屋をたくさん複製してくださるみたいだから、とりあえず、ひとつ、これと思う部屋を作ればいいわけよね?

 どんな部屋が落ち着いて。
 どんな部屋が便利かな。

 リゾートホテルのような感じ?

 エミリは想像してみた。

 ふかふかのソファに大きな南国の観葉植物。

 ウェルカムドリンクに、王様みたいな広いベッド。

 戸惑った兵士たちが広い部屋の中央に全員で寄り添い合い、
「落ち着きませんっ」
と震える幻が見えた。

 かと言って、私が奴隷としてくらしてた横穴みたいなのも情緒ないしなあ。

 魔族の人たちの部屋も参考にならないしな。

 あの人たち、家具とかにはこだわらないし。

 休むという概念があまりないから。

 とりあえず、誰にも襲われない自分の陣地があればいいみたいだしなあ。

 レオのような将軍クラスの上官でも、眠るときは、なにもない穴にごろ寝しているだけのようだった。

 便利なものがそろったたくさんの部屋かあ。

「あ、そうだ」
とエミリは思いつく。


 魔女アンジェラが作った、人間が食べてもあまり死にそうにない草や肉で作った鍋料理が外で振る舞われていた。

 要するに、魔族の役には立たない草ということなのだが。

「あの、お部屋の方ご用意できたんですけど」
とエミリは微笑み、みなに声をかける。

「兵士たちにまでとは、かたじけない。
 ほんとうに我々は外で寝たのでよかったのだが。

 ……いや、ほんとうに外で寝たのでよかったのだが」

 ロンヤードは遠慮しているのか、そう繰り返す。

 特に魔物たちが怖くはないエミリは、ロンヤードたちが城に泊まりたがらない理由がピンと来ないまま、
「まあ、とりあえず、中へどうぞ」
と彼らをふたたび城に通した。


 城という名の巨大な岩山の中には、長い長い廊下ができており、たくさんの木のドアがあった。

 それぞれのドアの側にランプがあり、廊下は雰囲気のある感じに明るい。

 そのドアの前に、レストランのボーイのような格好をした虫歯菌たちが、手に白い布をかけ、頭を下げてずらりと並んで立っていた。

 虫歯菌たちが、エミリが王国から来た人間たちをもてなすと聞いて、おもてなしを買ってでたのだ。

 失礼だが、そんな知能があったとはっ、とエミリは虫歯菌たちのご厚意に感謝する。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

菱沼あゆ
ファンタジー
 旅の途中、盗賊にさらわれたアローナ。  娼館に売られるが、謎の男、アハトに買われ、王への貢ぎ物として王宮へ。  だが、美しきメディフィスの王、ジンはアローナを刺客ではないかと疑っていた――。  王様、王様っ。  私、ほんとは娼婦でも、刺客でもありませんーっ!  ひょんなことから若き王への貢ぎ物となったアローナの宮廷生活。 (小説家になろうにも掲載しています)

異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。 息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。 壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。 茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。 そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。 明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。 しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。 仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。 そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。

護国の鳥

凪子
ファンタジー
異世界×士官学校×サスペンス!! サイクロイド士官学校はエスペラント帝国北西にある、国内最高峰の名門校である。 周囲を海に囲われた孤島を学び舎とするのは、十五歳の選りすぐりの少年達だった。 首席の問題児と呼ばれる美貌の少年ルート、天真爛漫で無邪気な子供フィン、軽薄で余裕綽々のレッド、大貴族の令息ユリシス。 同じ班に編成された彼らは、教官のルベリエや医務官のラグランジュ達と共に、士官候補生としての苛酷な訓練生活を送っていた。 外の世界から厳重に隔離され、治外法権下に置かれているサイクロイドでは、生徒の死すら明るみに出ることはない。 ある日同級生の突然死を目の当たりにし、ユリシスは不審を抱く。 校内に潜む闇と秘められた事実に近づいた四人は、否応なしに事件に巻き込まれていく……!

冷酷魔法騎士と見習い学士

枝浬菰
ファンタジー
一人の少年がドラゴンを従え国では最少年でトップクラスになった。 ドラゴンは決して人には馴れないと伝えられていて、住処は「絶海」と呼ばれる無の世界にあった。 だが、周りからの視線は冷たく貴族は彼のことを認めなかった。 それからも国を救うが称賛の声は上がらずいまや冷酷魔法騎士と呼ばれるようになってしまった。 そんなある日、女神のお遊びで冷酷魔法騎士は少女の姿になってしまった。 そんな姿を皆はどう感じるのか…。 そして暗黒世界との闘いの終末は訪れるのか…。 ※こちらの内容はpixiv、フォレストページにて展開している小説になります。 画像の二次加工、保存はご遠慮ください。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く

川原源明
ファンタジー
 伊東誠明(いとうまさあき)35歳  都内の大学病院で救命救急センターで医師として働いていた。仕事は順風満帆だが、プライベートを満たすために始めた婚活も運命の女性を見つけることが出来ないまま5年の月日が流れた。  そんな時、久しぶりに命の恩人であり、医師としての師匠でもある秋津先生を見かけ「良い人を紹介してください」と伝えたが、良い答えは貰えなかった。  自分が居る救命救急センターの看護主任をしている萩原さんに相談してみてはと言われ、職場に戻った誠明はすぐに萩原さんに相談すると、仕事後によく当たるという占いに行くことになった。  終業後、萩原さんと共に占いの館を目指していると、萩原さんから不思議な事を聞いた。「何か深い悩みを抱えてない限りたどり着けないとい」という、不安な気持ちになりつつも、占いの館にたどり着いた。  占い師の老婆から、運命の相手は日本に居ないと告げられ、国際結婚!?とワクワクするような答えが返ってきた。色々旅支度をしたうえで、3日後再度占いの館に来るように指示された。  誠明は、どんな辺境の地に行っても困らないように、キャンプ道具などの道具から、食材、手術道具、薬等買える物をすべてそろえてた。  3日後占いの館を訪れると。占い師の老婆から思わぬことを言われた。国際結婚ではなく、異世界結婚だと判明し、行かなければ生涯独身が約束されると聞いて、迷わず行くという選択肢を取った。  異世界転移から始まる運命の嫁ちゃん探し、誠明は無事理想の嫁ちゃんを迎えることが出来るのか!?  異世界で、医師として活動しながら婚活する物語! 全90話+幕間予定 90話まで作成済み。

【完結】暁の荒野

Lesewolf
ファンタジー
少女は、実姉のように慕うレイスに戦闘を習い、普通ではない集団で普通ではない生活を送っていた。 いつしか周囲は朱から白銀染まった。 西暦1950年、大戦後の混乱が続く世界。 スイスの旧都市シュタイン・アム・ラインで、フローリストの見習いとして忙しい日々を送っている赤毛の女性マリア。 謎が多くも頼りになる女性、ティニアに感謝しつつ、懸命に生きようとする人々と関わっていく。その様を穏やかだと感じれば感じるほど、かつての少女マリアは普通ではない自問自答を始めてしまうのだ。 Nolaノベル様、アルファポリス様にて投稿しております。執筆はNola(エディタツール)です。 Nolaノベル様、カクヨム様、アルファポリス様の順番で投稿しております。 キャラクターイラスト:はちれお様 ===== 別で投稿している「暁の草原」と連動しています。 どちらから読んでいただいても、どちらかだけ読んでいただいても、問題ないように書く予定でおります。読むかどうかはお任せですので、おいて行かれているキャラクターの気持ちを知りたい方はどちらかだけ読んでもらえたらいいかなと思います。 面倒な方は「暁の荒野」からどうぞ! ※「暁の草原」、「暁の荒野」共に残酷描写がございます。ご注意ください。 ===== この物語はフィクションであり、実在の人物、国、団体等とは関係ありません。

処理中です...