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エミリ、魔王の森に行ってみる
ようやく実感湧いてきました
しおりを挟むレオはなかなか気が利いている。
こんな美しい場所に……
人間が触れたら危険な花ばかりではあるようだが。
こんな場所に、ふたりきりでいたら、エミリも心軽くなって、私に心を開くのではないだろうか。
そんなことを魔王は思っていた。
エミリを円形のベンチの前に下ろし、座るように促すと、エミリはちょこんと、腰掛けてくれた。
うむ、では、と魔王はエミリの真横に腰を下ろす。
だが、エミリは、すすすっと離れていった。
エミリよ。
我々はこれから夫婦となるのに、腰も触れんばかりに近づいたからといって、そんなに逃げる必要はあるまい。
そう思いながら、魔王は、またエミリに近づいた。
だが、エミリは、また、すすすすっと離れる。
魔王は、懲りずにエミリを追う。
エミリは逃げる。
二人は大きな木の周りを一周していた。
「レオッ」
と思わず、魔王は叫ぶ。
「なんで、こんな形にベンチを作ったのだっ」
ええーっ?
さっき、お褒めくださったではないですか~っ、という顔で、レオがこちらを見ていた。
魔王から逃げながら、エミリは思っていた。
いや~、食事もしない。
風呂にも入らないというから、なんだか霞のような存在みたいに思っていたけど。
真横に座られると、体温らしきものを感じるではないですか。
これなら、人間の男の人と変わらない気がする……と思ったエミリは急に、結婚、というものがリアルにのしかかってきて。
思わず、魔王から逃げていた。
いざというとき、逃げられるなにかが欲しいっ、と思いながら、魔王と二人、ぐるぐる木の周りを回り続ける。
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