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エミリ、魔王の森に行ってみる
魔王様の限界
しおりを挟む収穫してすぐ、素早く焼いたり煮たりして食べたタケノコはえぐみも少なく、美味しかった。
「よし、食べ物、ちょっぴり解決」
いや、タケノコ、そのうち、みんな竹になっちゃうんで、解決とも言えないが、と思いながら、エミリはみんなと魔王の城こと岩山に戻る。
さて、この部屋、どんな風にするかな?
などと自室となっている岩山の穴でエミリが考えているころ、レオはひとり、いろいろと悩んでいた。
魔王様とエミリ様。
なんだかんだで仲良さげではあるのだが。
もうちょっと進んだ関係にならないものだろうか。
エミリ様には魔王様と真の意味でつがいとなっていただき、魔王様の精神的な支えとなっていただきたい。
人間やなにかが攻め込んできても、どっしりと構えていられるような――。
レオは二人の仲が進む方法を考えた。
まずは、エミリ様に魔王様と親しんでいただき、信頼関係を作ることだな。
人間の恋人同士のような感じで仲睦まじくなれば、エミリ様も魔王様を信頼されるに違いない。
レオはいつか見た人間の恋人同士の様子を思い出してみた。
「魔王様、エミリ様。
お暇でしたら、ちょっといらしてくださいませんか?」
レオは二人を森の美しい花畑に連れ出した。
まあ、人間が口にしたら死んだり、触ったらかぶれたりする花が多いのだが。
「ほう、これは」
「まあ」
と魔王とエミリが声を上げる。
花畑の中央には一本のどっしりとした木があった。
その太い幹の周囲にぐるっと円形の木のベンチがある。
レオが今、作ったものだ。
レオは小声で魔王に言う。
「ぜひ、エミリ様と腰掛けられ、美しく危険な花々を仲良くごらんください」
エミリが、
「いや、何故、危険な花のある場所を選びましたか……」
と呟いていたが。
そう言われも、この辺りは、危険でない花は少ない。
「エミリ様、美しい花には棘や毒はつきものですよ」
そうレオが言うと、
「すると、エミリは美しい花ではないことになるな」
と魔王が余計なことを言う。
「いや、充分、危険だと思いますよ、いろんな意味で……」
とだけ、レオは言った。
魔王はもう一度、ベンチを見て頷き、
「ありがとう、レオ。
素晴らしい椅子だ。
お前の心遣いに感謝する」
とレオに言った。
レオは感激しながら言う。
「ささ、どうぞ、お座りください。
あっ、花は人間が触れると危険なので、ぜひ、エミリ様を抱き上げてお連れください」
「うむ、なるほど。
よし、エミリ、行こうか」
と言った魔王は、荷物を担ぐようにエミリをひょいと左肩に担いだ。
荷物を担ぐような感じというか。
人間の親が聞き分けのない子を肩にうつ伏せにのせて、おしりぺんぺんする直前のような感じというか。
……嫁を抱き上げるのは、そういう体勢ではございません、と思ったが。
まあ、人間と違って、愛とか恋とかに関心の薄い魔族の王には、これが限界かな、とも思っていた。
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