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……帰って来てしまいました
未悠の秘密
しおりを挟むなんだかわからないが、みんなでゲームをすることになり、未悠がエリザベートにゲーム盤を借りにいくことになった。
戻ってくると、タモンの部屋の前には、ユーリアが居た。
ユーリアは一応、自分にとって姑、ということになるのだろうから、そういう意味で身構えることはあったが、彼女自身を嫌いとかいうことはなかった。
「お妃様もいかがですか?」
とゲーム盤を見せ、言うと、ユーリアは何故か焦った風に綺麗な細工の箱を見せ、言ってくる。
「み、未悠。
実はこの中に指輪がっ。
私には開けることが出来ないのですが……っ」
「あら?
いけませんね。
鍵が壊れてしまったのですか?」
「ああ、いえ。
アドルフには開けられるはずなのです。
だから、未悠、アドルフに開けてもらって、この中の指輪を……」
人の話を話半分に聞いては、駿に怒られていた未悠は、此処でもやはり聞いてはおらず、箱が開けられないのかなーと思いながら、ぱかっ、と箱の蓋を持ち上げてみた。
「あ、開きましたよ、お妃様」
と笑って言ったが、何故かユーリアは固まっている。
あれ?
開けちゃまずかったのかな?
そういえば、アドルフがどうとか言っていた気が……。
この箱は、アドルフが開けないといけなかったのだろうか、と思って、慌てて閉める。
黙ってそれを見ていたユーリアは、何故か、自分がそれを開けてみようとした。
だが、何故か開かない。
「未悠」
と呼びかけられ、もう一度、箱を突き出される。
やはり、開けろという意味か? と蓋を持ち上げると、さっきはよく見なかったが、中に煌めくピンクの石が散りばめられた、可愛らしい指輪が入っていた。
「あ、可愛い」
と言いながら、開いたままの箱をお妃様に渡したとき、アドルフが、
「未悠? なにをしている」
と話し声を聞きつけたのか、顔を出してきた。
「アドルフ」
と言いながら、ユーリアはその箱を閉めて彼に向ける。
なんだ? という顔をするアドルフに、
「開けてみなさい」
と言った。
アドルフは、なんなんだ、という顔をしながらも、その蓋を開けてみていた。
頷いたユーリアは、その箱を取り、もう一度閉めると、
「シリオを呼んできなさい」
とアドルフに命じた。
現れたシリオに、ユーリアは言う。
「シリオ、この箱を開けてみなさい」
は? と言いながらも言いつけに従い、開けようとしたシリオだが、何故か蓋は開かなかった。
沈黙が訪れる。
ユーリアは箱を手にしたまま、
「王を問い詰めなければ……」
と呟き、踵を返そうとした。
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ、王妃様っ」
と未悠は不穏な気配に、ユーリアの腕を引っ張る。
「王に血の近い人間なら開く箱?」
タモンの部屋にユーリアごと箱を持ち込むと、ユーリアはようやく、タモンに事情を語った。
「アドルフが開くのは当然です。
王の子ですから」
と言うユーリアの言葉に、最初からこれを開けさせてもらっていれば、いちいちお妃様に確かめなくてもよかったような、と未悠は思っていた。
まあ、どの辺りの縁者まで開くのかよくわからないのだが、と思っていると、ユーリアが言う。
「シリオでは開きませんでした。
此処まで直系から血が遠くなると、王族でも無理だということです」
ユーリアの言葉を聞きながら、タモンは、かぱ、とその箱を開けて見ていた。
「私は開くな。
王弟まではいけるようだ。
……未悠が開けられたのは、単に、彼女が異世界の人間だからではないのか?
この世界の理が彼女の前では無意味なのかもしれないではないか」
「タモン様、異世界から来たと言っているのは未悠だけです。
もしかしたら、この子は、王の隠し子なのかもしれないではないですか」
そう来たか……。
「だが、それで、アドルフと結婚するというのはおかしいような」
というタモンの言葉を聞かず、ユーリアは、
「私は結局、タモン様とは浮気しなかったのに、王の方に隠し子が居るなんてどういうことなのですかっ」
いや、それ、確定ではないですし。
私の話も聞いてっ、と思っている未悠の前で、
「私は王を問い詰めてきますっ」
とユーリアは言い出す。
いやいやいや、お妃様、落ち着いてください、と思いながら、チラ、とアドルフを見上げると、アドルフも困った顔をしていた。
そうだ。
もし、私が王の隠し子なら、私とアドルフとは兄妹ということになってしまうのだが……。
いや、こちらの世界に飛ぶときに、時間のズレが生じている可能性もあるから、姉弟ということもありうる。
でも、実はちょっと疑ってはいた。
自分が王の子かどうかはともかくとして。
親が居ない自分が、こちらの世界とあちらの世界を行き来出来る理由。
それは、私がもともと、この世界の人間だからなのではないだろうかと――。
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