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支社長室に神が舞い降りました
また誰かが攻撃してくるかもしれませんっ
しおりを挟むお昼休み、社食に行った深月は油断なく辺りを窺っていた。
「なんなのよ、そのスナイパーみたいな目は……」
と由紀が呆れたように言う。
「いえ、また誰かに攻撃を受けるのではないかと」
と深月は言ったが、
「してくるわけないじゃん。
この間の惨状、みんな見てるのに」
と沙希が言う。
「でもまあ、ある程度、攻撃受けるのはしょうがないわよねえ。
みんな我こそはと思ってたんだから」
と言う由紀に、
「我こそは?」
と深月は訊いた。
「我こそは、秘書になって玉の輿って意味よ」
「秘書になったからって、玉の輿ってわけでは。
とりあえず、やるのはスケジュールの管理とか――」
と深月は現実的なことを語ってみたが、
「だまらっしゃい」
とみんなに言われる。
「日々同じことの繰り返しのOL生活。
そういう夢を見ることも大事なのよ。
あー、一個夢が絶たれたから、あんた、コンパの世話しなさいよ」
と由紀が言った瞬間、也美が、
「そうよ、コンパよ、コンパッ。
どうなったのよっ」
と言い出す。
……そうだ。
コンパを仕切れと前も言われたんだった。
杵崎さんをメンバーにして。
神楽の練習と秘書騒ぎで忘れてたなーと思った深月は、
「ちょっと杵崎さんに言ってこようっと」
と食べ終わっていたトレーを手に立ち上がる。
なんだかんだで、みんなにはお世話になっているから、そのくらいのことはしてあげようと思ったのだ。
隣のテーブルにいた純たちも話を聞きつけ、よろしくーと手を振っている。
「杵崎さん、杵崎さん」
と深月は廊下を歩いていた杵崎を見つけ、呼びかけた。
「コンパの話、覚えてます?」
「ああ、俺じゃなくて、メンバーにと思って、話振っといた奴が覚えてて、この間急かされたんだが。
やるのか本当に。
お前、今、忙しいだろう」
「あー、やっぱり、私は行かないかもなんですけど」
と深月が言うと、
「幹事が来ないとかあるか。
来いよ。
お前が来ないなら、俺は行かない」
と杵崎は言う。
「もしかして、よく知ってる人がいないと心細いとか?」
と女子社員に囲まれると、居心地悪そうな顔をする杵崎を思い出しながら、
「金子さんもいますよ」
と言ったのだが、
「……そいつはよく知りすぎていて、むしろいない方がいい」
と言われてしまった。
総務に戻った深月はデスク片付けねばなーと思いながらも、入社してからの思い出に浸り、ぼんやりしていた。
入社してからずっと総務だったので、此処を去るのは感慨深いものがある。
今では仲良くしてもらってる先輩たちも、最初は怖かったよなー。
いや、こっちが勝手に緊張してただけだけど、と思ったとき、スマホが鳴った。
『今日、衣装の確認。
来れる人だけ来て』
と神楽のグループにメッセージが入っていた。
深月が返信するより早く陽太船長が、
『遅くなるかもしれませんが、大丈夫ですっ』
と敬礼して言っていた。
そのスタンプを見て笑う。
本物もこのくらい可愛らしければな~。
そう思いながら、自分も、
『了解ですっ』
とスタンプを送る。
すぐに既読1になったので、支社長かな、と思いながら笑って、スマホをしまった。
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