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理由がありませんっ

だが、中身はおっさん

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 さて、お片づけして帰るか。

 五時半過ぎ。

 今日は早く帰れそうだと深月は足許のゴミ箱をつかむ。

 ゴミ箱のゴミを捨てて、業務終了だ。

 まだ明るさの残る窓の外を見た。

 陽のあるうちに、家まで帰りつけたら、なんかもうけ~と思うのだが。

 冬はなかなか難しい。

 引き出しに入れていたスマホを取り出したとき、チャットアプリに幾つかメッセージが入っているのに気がついた。

 そのほとんどが宣伝だったが、そのうちのひとつが。

『今日は神楽殿。
 練習来れる人来てー』
 だった。

 神楽のグループからだ。

 可愛い女の子がぺこりとしているスタンプだったが、送っているのはおっさんだ。

 いつも無料スタンプの適当なのを送ってくるから、そんな感じになるのだ。

 みんなからはもう、了解、了解、了解と返事のスタンプが入っている。

「了か……」

 了解、と深月も入れようとして気がついた。

 了解、と船長のような格好をした可愛い男の子が敬礼しているスタンプがある。

『陽太』

 ……陽太ーっ?

 いつの間にチャットのグループに入ってましたかーっ!?

 さかのぼってみたら、確かに陽太が招待されて入室している。

 ……了解ってことは今日も来るのだろうかな、と思っていると、深月のスマホに新しい友だちとして、陽太が現れた。

『乗せてく』
とだけ船長陽太が言ってくる。

 やはり、船でなのか……?
 船長だから、とスタンプを見ながら、深月が返事を迷っていると、後ろで、

「返事は?」
と声がした。

 ひっ、と振り返ると、陽太がこちらを見ずに通り過ぎるところだった。

 部長のところに行って、二、三話し、戻ってきた陽太に、
「間に合うんですか?」
と言うと、

「今日はなんとか。
 次からは、お前が秘書になって調整しろ」
と小声で言う。

「嫌ですよ」
と言ったとき、カウンターに由紀以上に派手な女が現れた。

「ちょっと」
とこちらを見て言ってくる。

 私か?
 支社長か?
と陽太を振り向いたが、

「支社長なわけないでしょっ。
 あんたよ、あん……っ」
と激昂しかけて女はこらえたようだった。

 何処かで見たと思ったら、別の棟に居る由紀の同期で、呑み会で一度一緒になったことがある人だった。

 確か、なんとかいう人なんだけど……。

 名前はわからないなーと思う深月に、

「総務、もう終わりなの?
 急いで伝票が欲しいんだけど」
と女は言ってくる。

 わ、わかりました、ともう彼女が書き込んできていた備品伝票を受け取ると、深月は備品倉庫に向かい、ダッシュした。
 


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