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理由がありませんっ
そ、その人、支社長ですよっ
しおりを挟む「あの、一緒に操舵室行ってもいいですか?
ちょっと興味があるので」
そう深月に訊かれた陽太は、
「……いいぞ」
と素っ気なくいいながら、振り向かずに歩き出す。
深月、お前が興味あるのは、俺か?
それとも、操舵室か?
十中八九、操舵室だろうな、と思いながらも、少しの期待を持って、陽太は操舵室へと向かった。
操舵室を堪能したあと、深月たちは病院へと向かう。
深月が病室に入ると、万蔵が、
「ほら見ろ。
本当に連れてきたじゃないか」
と条子に向かって、笑った。
元気そうな祖父にホッとしながら、
「なんの話?」
と深月が問うと、
「いやいや。
老い先短いわしが入院したんで。
わしを安心させようと、お前がいい人を連れてくるんじゃないかと話してたんじゃ。
わしは深月のジジの万蔵じゃ。
ちょっと落ち着きのない娘じゃが、気は優しいから、よろしく頼む。
ところで、あんた、偉い男前だが、深月の何処がよかったんじゃね」
と万蔵は深月の後ろを見て言い出した。
なにっ?
と深月は振り返る。
外で待ってるのかと思った陽太が一緒に病室の入り口まで来ていた。
「飛鳥馬陽太と申します」
何故、名乗るっ?
と深月はまた陽太を振り返った。
そこで名乗ると、まるで、本当に付き合っているみたいだからだ。
実際、条子も、病室に入ってきて、母と祖父とに頭を下げた陽太を、
これがうちの婿っ?
と目を輝かせて見ている。
万蔵はマジマジと陽太を眺め、何故か何度か頷いたあと、訊いていた。
「そうか。
飛鳥馬さんか。
で、飛鳥馬さんはいつから深月と?」
「一月末からです」
それは貴方が此処に異動してきたときですよっ。
いつから知り合いか、というのなら、正解ですけど……、と思う深月の前で、万蔵は更に突っ込んで陽太に訊いている。
「じゃあまだ、付き合い始めてそんなに日は経ってないんじゃのう。
ところで、飛鳥馬さん、仕事はなにを」
「彼女と同じ会社で働いています」
まあ、嘘ではないですよね~、と思ったとき、万蔵は、そうかそうか、と頷いたあとで陽太に言った。
「ときに、飛鳥馬さん、仕事は忙しいかね?」
「ええ、まあ」
と陽太が答えると、
「そうか。
じゃあ、無理かのう。
実はわしが怪我したせいで、祭りの舞い手が足りなくなったんじゃが」
と万蔵は言い出した。
おじいちゃん、その人、支社長です……。
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