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理由がありませんっ

御神楽、緊急会議ですっ

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「大丈夫なのっ?」

「足以外、ピンピンしてるけど、これは踊れないわねえ。
 誰か今から代わりの人探さないと」
と条子は言う。

 そこで条子はスピーカーに切り替えたようだ。

「ほら、おじいちゃん、深月が心配してるわよっ」
と言う声が少し遠くなる。

「深月ーっ。
 わしは大丈夫じゃーっ」
と祖父、万蔵まんぞうの声が聞こえてきた。

 いつも通りのハリのある声に、ホッとする。

「にしても、困ったわねえ。
 今から、トシさんたちがおじいちゃんの代役をどうするか探すみたいだけど。

 ともかく、人手が足りないからねえ。

 十二年に一度の大祭なのに、ほんとに……。

 まあ、ともかく、今日は緊急会議よ」
と言うので、練習はないのかと思ったのだが、

「ちなみに、おじいちゃんは出られなくても、会議があっても、稽古は中止じゃないわよ、早くしなさいっ」
と条子は言ってくる。

 小さな街だが、この大祭はテレビなども取材に来る大きな祭りだ。

 祭りを見るために、わざわざ遠くの街から帰ってくる人たちもいるので。

 中止です、とか縮小化しました、とかいう訳にもいかない。

 なにを置いても、稽古は優先するようだ。

 深月は、
「俺の屍を越えていけって感じね」
とうっかり言って、万蔵に、

「わしゃまだ死んどらんっ」
と怒鳴られた。

 ともかく、とりあえず、そっちに行くと約束して、電話を切る。

 深月が陽太を振り返り、

「すみません。
 私、今から病院に……」
と言おうとしたとき、陽太はおのれのスマホから顔を上げ、言ってきた。

「今確認したところによると、病院は海岸沿いだな。
 程よく、すぐ側に、たまに利用させてもらう漁港がある」

 いや、貴方、なんでそんなあちこちの漁港に顔が利くんですか、と思っていると、
「こっちに異動してきたとき、漁業組合に挨拶に行ったんだ。
 そのとき、船と釣りの話で盛り上がったから」
と言ってくる。

 そうか。
 工場の関係で、漁業組合とは話するよな。

 ていうか、支社長自ら出向いてたのか、と思いながら、
「じゃあ、ノリさんとか知ってます?」
と訊くと、陽太は操舵室に向かいながら、

「ああ、定長さだながさんか。
 知ってる。
 人の来ない釣りポイントを教えてもらった」
と言う。

 ……意外に地元に浸透してんな、この支社長。
 来たばっかりなのに、と深月が思っていると、陽太は、こちらを振り向き、

「好きなとこでくつろいでろ。
 デッキでも、リビングでも、ベッドでも」
と言ってくる。

 いやいや、ベッドはよくない思い出があるので、と赤くなったのを見てか、陽太はちょっと笑って言ってきた。

「風呂には入るなよ。
 すぐに着くからな」

「はっ、入りませんよっ」
と言い返したあとで、深月は、

「あの、一緒に操舵室行ってもいいですか?
 ちょっと興味があるので」
と訊いてみた。

 操縦するところを見てみたかったからだ。



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