上 下
78 / 97
花嫁のれんの秘密

秘密を話そう

しおりを挟む

「なにかいまいち目的は達せられなかったが、約束だ。
 あの花嫁のれんの秘密を話そう」

 ガゼボに戻り、アキたちはアンブリッジローズの話を聞いていた。

 いや、秘密を話そうって、ここ、めちゃくちゃ使用人の方とか行き交ってますけど、と思ったのだが、アンブリッジローズは語り出す。

「もらったんだ、あの花嫁のれんとか言うものを」

「誰からですか?」

「おばからだ。
 作るのにハマッたらしくて、大量に作って若い娘たちに配ったんだ」

「……うちの近所のおばさんにも居ましたよ。
 ハワイアンキルトにハマッてご近所さんに配ってる人が。

 可愛いんですけど、何処にかけようかなと迷って、タンスにかけて、まだそのままなんですけど。

 っていうか、あれ、大量生産されたものだったんですね?」

「もともとはな。
 当時若い娘だった私ももらってしまい、ちょっと困ったんだ。

 嫁に行くときに使うものらしいのだが、私は魔術を極めようと思っていたので、嫁に行く予定はなかったしな。

 でも、世話になっているおばさまの手前、私はそれを活用しようと思って、花嫁のれんに術をかけ、それで時の洞窟への入り口を開くことにした。

 ところがマダムヴィオレはその花嫁のれんの使い道を思いつかず、
「ちょっと置いておいてよ」
と言って、私の塔に置いていってしまったのだ。

 奴も結婚する気はさらさらなかったらしい」
とアンブリッジローズは語る。

 なんか……自由気ままな人たちの集団だったんだな、と思いながら、アキは、

「で?」
と言った。

 は? とアキの問いかけの言葉に、アンブリッジローズは訊き返してくる。

「花嫁のれんの秘密とは?」

「いや、あれ自体は大量生産されたものだというのが秘密だ」

「秘密じゃないじゃないですか~。
 それにしても、なんで、加賀藩の花嫁のれんがこの世界にあるんですかね?」

「昔から異世界から来る人間はいるから、向こうのものがこちらに広まったのか。
 こちらのものがあちらに行ったのか。

 時間の流れは一定ではないしな。

 まあ、うちのおばは珍しいもの好きだったから」

「そのおば様は?」

「千年経ってるんだぞ。
 いや、私以外は数百年か、それ以下か。

 もう二、三度生まれ変わってるんじゃないのか?

 そういえば、今の王の姪がおばに似てるから、あれかもしれんなあ」

 なんか……ゆる~く流れてんな、此処の時間、とアキは思う。

 でもまあ、と王子はを開いた。

「元はただの花嫁のれんでも、アンブリッジローズ様のように、なにかの門に変化へんげさせる人間がいると、ただののれんではなくなるわけだから。

 お前の母親の花嫁のれんもなにかの力により、変化したのかもな」

 うーん、そうですねーとアキは言ったが、その答えはまだわからなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私異世界転移しちゃった⁉ ~女子高生の一日~

ファンタジー
私異世界転移しちゃった⁉ 昨日の夜は普通に家のベッドで寝ていたのに、起きるとそこは暗い洞窟の中だった。 洞窟の中には魔物が住み着いていてもう大変。一刻も早く抜け出さないと。 外に出たあともいろいろ待ち受けているだって⁉ もう、勘弁してよ~~‼

転生者なので、冒険者登録に必要な本人確認書類がないんですけど……

豊科奈義
ファンタジー
 少年は最強ステータスを授けられ、異世界に転生する。  いざ、ギルドに冒険者登録をしようと思った矢先、住民票の写しと本人確認書類を求められるのであった。 ※異世界ファンタジーですが、異世界っぽい要素はほとんどありません。 なろう、カクヨム、アルファポリス、ノベルアップ+にも投稿

異世界ぼっち

オレオレ!
ファンタジー
初の小説、初の投稿です宜しくお願いします。 ある日クラスに魔法陣が突然現れ生徒全員異世界へそこで得たスキル魔法効果無効(パッシブ)このスキルを覚えたことで僕のぼっちな冒険譚が始まった

最強の聖女は恋を知らない

三ツ矢
ファンタジー
救世主として異世界に召喚されたので、チートに頼らずコツコツとステ上げをしてきたマヤ。しかし、国を救うためには運命の相手候補との愛を育まなければならないとか聞いてません!運命の相手候補たちは四人の美少年。腹黒王子に冷徹眼鏡、卑屈な獣人と狡猾な後輩。性格も好感度も最低状態。残された期限は一年!?四人のイケメンたちに愛されながらも、マヤは国を、世界を、大切な人を守るため異世界を奔走する。 この物語は、いずれ最強の聖女となる倉木真弥が本当の恋に落ちるまでの物語である。 小説家になろうにの作品を改稿しております

処理中です...