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異世界の物が落ちています

ぐるぐるする人々

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「なっ、なんで充電器があるんですかっ」
 アキはイラークに訊いた。

 イラークがミカを見ると、ミカは頷き、奥へと引っ込む。

 ナイフを手にしていたイラークは大量の玉ねぎをスライスしかけ、アキを手招きした。

「やれ」
と命じられ、

「ス、スライスーッ!」
とアキが玉ねぎの山に手をかざすと、玉ねぎが一気にスライスされた。

「よし、よくやったな」
 スライスの山を前に、ポチのように褒められたとき、ミカがそれを持ってきた。

「この宿によくやってくる隣国の王子妃がいつかランプが切れたときにくれたんだ。
 確か『じゅうでん』できると言っていたぞ」
と手回しのライトを見せてくれる。

 携帯が充電できて、ラジオも聴けるタイプのもののようだ。

 いや、ここでなにが聴けるのかわからないが……と思ったとき、ミカが微笑み、言ってきた。

「私はあのとき一緒にいただいた飲み物が美味しかったです。
 確か、こらーげんとか言う……」

「それ欲しかったです……」
 異世界で疲れを感じる今日この頃、アキは思わず、そう呟いていた。

「でも、結構、異世界から人来てるんですね」

 こんなところで、手回しの充電器に出会うとはと言いながら、目の覚めるようなオレンジのそれを見る。

 数種類のコネクタもついていた。

 古い携帯だからどうだろうと思ったのだが、なんとか充電できそうだった。

 タイガー・テールに名前が変わった経緯いきさつなどを話しながら、ぐるぐる充電器を回していると、イラークが、

「手際がいいな。
 お前も上手く肉が焼けそうだな」
と言ってきた。

「肉?」

「裏でケモノの肉を丸焼きにするとき、火の上でぐるぐる回してあぶるんだ。
 あとでやらせてやろう」
とイラークが言ってくる。

「……け、結構です」

 特に積極的にやりたいことではない。

 焼かれる前の肉を見たくないしな、と思いながら、アキはぐるぐるしていた。



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