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恋の予感がします

血迷うな、ラロック

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 そんなラロックの視線に気づいたようにアントンが言う。

「いやいや。
 彼女はあげられないぞ。

 我が国のものではないからな」

 いや、そもそも私、物ではないんですけど……。

 そして、褒美に下賜かしされるほどの美女でもないんですけど、と思うアキの前で、ラロックが、

「でも、略奪したのですから、もう貴方のものでは?」
とアントンに向かって言い出した。

 こら待て、と思うアキの横で、王子が、
「血迷うな、ラロック」
と冷ややかに親友を見る。

 そうそう。
 女性はモノじゃありませんよ、と思ったのだが、王子が言いたいのは別のことだったらしい。

「こんな女の何処がいいのだ」
とふたたび、言い出した。

 本気で疑問そうだ。

 だからですね~。
 貴方の中の私の評価が一番低くないですかと言ってるんですよーっ、
と思うアキを振り向き、王子は、

「いや、俺以外の誰にも価値のない女ならいいなと思っているだけだ。
 他の男に奪われなくていいから」
と言ってきた。

 ちょっと照れながらも、アキは思っていた。

 いや、そんな女を好きでいいんですか、貴方は、と。

 王子はラロックを見据えて訊く。

「だいたい、何故、急にアンブ……タイガー・テールを好きになったのだ」

 いや、だから、言い換えなくていいです、と思っている間に、ラロックが、

「なんとなくです」
と言い出した。

「なんとなくか……」

「王子はいつから何故、アンブリッジローズ様を好きになられたんですか」

 そう逆に問われ、王子は、うーん、と唸り、
「……いつからなんだろうな。
 そして、何故なんだろうな。

 なんとなくだな、なんとなく」
と呟いている。

 私が今、此処にいる意味も。

 彼らが私を争っている意味もよくわからなくなってきた、と思いながら、とりあえず、目の前に美しく盛られている果物を食べてみた。

 意外に酒と合う、と思いながら。


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