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なんだかんだで魔法が使えました

今の言葉で頷く女がいたら見てみたい

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「我が国には昔から、いろんな国から人質の姫がやってきていた。
 いや、やってきたりやって来なかったりした……」
と王子は何故か言いかえる。

「どういうことなんですか……」

「国を出た姫が父の許まで、たどり着いかないことがよくあったのだ」

「それは、旅が過酷だと言うことですか?」

 白い洞穴の壁に反射した青白い光の中。
 王子の美しい顔を見上げながら、アキは訊いた。

「いや、迎えに行ったものと消えたり。
 自分のところからついてきた従者と消えたりするらしいのだ」

 過酷な長旅の中で支え合っている間に、親密な関係になってしまうのだろう。

「まあ、父の後宮にはたくさん女性がいるから。
 何人かたどり着いていなくても、父は気にしていない、というか気づいていない。

 形の上だけ人質にもらえばいいわけだから、実際は何処かに落ち延びていても構わないわけだし」

 ……なんか似てるな、王様とこの人、とアキは思った。

 王子も嫁をもらわなければ、いろいろと面倒くさいから、千歳を超えている老婆で魔女なアンブリッジローズを嫁をもらおうとしたようだし。

「でも、後宮に多くの女性がいらっしゃるのなら、王子以外にもたくさん王子様がいらっしゃるのですか?」

「いや、姫ばかりで王子の数は少ないのだ」

 だから、お前の話も私のところに来たのだ、と王子は言う。

「第一、父は忙し過ぎて後宮にはあまり立ち寄らない。
 だから、女性の人数のわりに子どもは少ない」

「では、王子もいずれそんな感じに」
と言うと、いや、と王子は言った。

「私はお前の他には、女性はめとらない」

 大きな湖なので、波のように水面が揺れる。

 壁を照らす月明かりもそれに合わせて揺れていた。

 その光の中で、真っ直ぐ見つめて、王子に言われ、アキは不覚にもどきりとしてしまった。

 だが、王子は淡々と言ってくる。

「言わなかったか。
 女にまつわるいろいろが、めんどくさいんだ。

 だから今はなんとなくお前と仲良くやりたいと思っている」

 なんとなくってなんですか……。

 なんという情熱のない愛の語らいだ。

 いやいや、幾ら貴方が王子様でも。
 それで女がときめいて、はい、貴方と一生添いげますと言うとでも思っているのか。

 だが、ロマンのない王子はさらに言いつのる。

「お前が後継ぎを生まなければ、他の嫁をもらうようにしつこく言われると気がついたのだ。
 だから、お前と仲睦なかむつまじくなるのが一番だ。

 さあ、睦まじくなろう!」

「嫌です」

 今の言葉で頷く女がいたら、見てみたい。

 そうアキは思っていた。


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