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ささやかなる同居
俺は白雪を好きなのだろうか?
しおりを挟む狸が経営していると万千湖が主張するコンビニに二人で行った。
お弁当やおつまみの棚を眺めながら、駿佑は、いろいろと考える。
俺は白雪を好きなのだろうか?
確かに他のやつと住むとか考えられないし。
白雪が他のやつと住むところも想像したくない。
こいつとなら、今まで考えたこともなかった、自分と家族の暮らしというのが見えてくる気がするし。
そう。
仕事以外ではあまり想像したこともなかった自分の未来が見えてくるというか――。
子どもと万千湖があの家の庭で遊んでいる。
アリでもいたのか、ブランコから降りた子どもが地面を指差した。
自分も降り、しゃがんで地面を見る万千湖。
笑顔の万千湖の後頭部をさっきまで乗っていたブランコが直撃する。
……ブランコは危険だな。
万千湖が子どもと代わりばんこに滑り台を滑っている。
ふわっとしたロングスカートが手すりの最初のところに引っ掛かり、慌てて外そうとして、滑り台から真横に落ち、宙吊りになる万千湖。
……滑り台も危険だな。
「庭になにを置いたらいいんだっ」
こいつとの未来は見えるが、庭になにを置いたらいいのかが見えてこないっ、と思い、駿佑は叫んだ。
横にいた万千湖が、ひっ、と怯えた声を出す。
「あ、あの、庭のことなら。
ゆっくり考えられたらいいと思いますよ?」
とこちらの妄想も知らずに言ってくれた。
いや、お前のせいで困ってるんだが。
……なんだか、こいつといると、過保護な親みたいになるな、と駿佑は思っていた。
駿佑とともに狸のコンビニにやってきた万千湖は、狸や狐が買いに来るのか、品揃えのいい棚を眺めていた。
いや、人はたくさんいるのだが……。
何処から湧いてくるんだろうな、こんなに。
周りに家ないのにな、と思いながら、万千湖は、さっき駿佑に言われたことを思い出していた。
『お前はいつもウキウキしてるだろうが……』
確かに。
いつもウキウキしている。
そして、ちょっと緊張している。
OLになってから。
一人暮らしを始めてから。
家を建てることになってから。
すごいおうちに引っ越してから。
いや、違うな、と万千湖は思った。
一番ウキウキしているのはもしかしたら……
課長とお見合いしてから?
「決めたか? 行くぞ」
とカゴを手に駿佑が言う。
「早く呑んで早く寝ないと。
明日は月曜だぞ。
今までより早く出勤しないと間に合わない。
急げ」
急いで帰って、急いで呑めっ、と言われる。
落ち着かない祝い酒だな~、と思いながらも、はーい、と一緒にレジに並ぶ。
そういえば、明日からご飯とかどうするんだろうな。
別世帯だから、やっぱ、別々だよね。
その辺のところはたいして話し合わずに、ふわっとしたまま、引っ越してしまったが、と思ったとき、駿佑が言った。
「お前、絶対起きれないから。
朝、ご飯共有リビングに用意しといてやるから、早く起きて食べろよ」
「えっ、そんな申し訳ない。
あっ、じゃあ、晩ごはん、私、作りますよっ。
うちに来てくださいっ」
と言ったが、
「……作るって、なにを?」
と冷ややかな目で見て言われる。
いやあの……作れないこともないんですよ。
作らないだけで……ええ、と子どものような言い訳を心の中でしていた。
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