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ささやかなる弁当

幸福の数

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 結局、駿佑の車で港まで行き、レストランを眺めながら、ラジオを聞くことになった。

 ……港に行くのなら、海を眺めたらいいのでは。

 何故、レストラン、と駿佑が思っていると、万千湖が電話してもいいですか? と言ってきた。

 打つことに疲れたのだろう。

 万千湖がかけてくる前に、駿佑がかけた。

「すみません。
 ありがとうございます」
と言ったあとで、万千湖が言う。

「そういえば、今日、100均に行ったんですけど」

 ……お前はもう100均に住んだらどうだ。

「七福神が七つあって、7×7の幸福が訪れそうだなって思ったんですよ。
 それで、思わず、その場で拝んでしまったんですけど。

 店に置いている間に、そうして拝まれてしまったら、買った人には、その拝んだ残りの幸福しか訪れなくなるんですかね?」

 申し訳なさそうに言う万千湖に、
「……一人につき、七つだろうよ」
と言うと、

「あっ、そうなんですかね?
 じゃあ、うちの七福神様も課長はまだ一回も拝んでないから、七つもお願いできますね。

 課長も今度、拝まれますか?」
と言ってきたので、いや、結構だ、と言おうとしたが、万千湖が、

「今、玄関に飾ってるんです。
 ありがとうございます」
と嬉しそうに言ってきた。

 ……玄関に。

『うちに来て、拝まれますか?』
という幻聴が聞こえたが、万千湖は、

「今度会社に持って行きますね~」
と言う。

「……いや、結構だ」

 そのあと、また万千湖のくだらない話を聞く。

「そういえば、冷蔵庫」
と言い出したので、さっき、万千湖からの連絡を待っていないフリをしようと、意味もなく冷蔵庫まで歩いていったことを見透かされた気分になったが。

 もちろん、万千湖は超能力者ではなかった。

「冷蔵庫って、ときどき、とんでもないものが入ってますよね~」

 入ってそうだな。
 お前の冷蔵庫には……。

「入ってますよねって、お前が入れてるんだろ、それ」

「そうなんですよ~。
 いや~、この間なんて、急いでてノートパソコンを洗濯機に入れかけて」

 もうびっくりしました~と万千湖は笑うが。

 冷蔵庫の話ですら、ないようだが……と駿佑は思っていた。

 まあ、万千湖の中では、すべてがひとつなのだろう。

 冷蔵庫に、まつぼっくりかなにかをうっかり突っ込むことも。

 ノートパソコンを洗濯機に突っ込むことも。

 まつぼっくり、と思ったのは、この間、部屋にまつぼっくりが何故か落ちていたと聞いたからなのだが。

 社内で会うことはあまりないのだが。
 仕事から帰ったあと、時折、そんなしょうもない会話をしながら、二人は日曜日を迎えた。



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