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箱から覗いてみました……

相変わらず、怖いものなしですね

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「あまりー。
 なんか爽やか系のイケメンが呼んでるー」

 此処、秘書室ですよ!? と言いたくなる発言をしながら、総務の草野が現れた。

 まあ、秘書室の影のボス、秋月が結構好き勝手な話をしているからいいのだが。

 よその部署から秘書室に来た人は、大抵、カチンコチンに固まってやってきて、此処の空気に呑まれたように、しずしずと去っていくのに。

 マスペースだなあ。

 怖いものなしというか。

 草野のことを職場を男を見つけるまでの腰かけだと思ってると揶揄やゆする人たちも居るが。

 だからこそ、先のことを考えずに、ズバズバ物を言ったり、行動出来たりもするので。

 上司に言いにくいことを言ってくれたりして、助かるときもあると思うのだが、と思いながら草野を眺める。

 はい、と桜田のデスクに回覧を置いた草野に、

「誰ですか、爽やか系のイケメンって」
と問うと、

「知らない。
 なんかうちの部長と話してた」
と言う。

 行ってみると、服部だった。

「なんで此処に居るんですか?」
 総務の前の廊下に居た彼に問うと、服部たちが追っているのは、企業専門のコソ泥だと言う。

「社員のフリとかして、会社に入り込んで、ロッカーとかから金目のものを持って逃げるんだよ。

 データ系のものは何処の企業も警戒してるけど、最近は、そっちばっかりで、物品の方はおろそかになりがちだから、一応、警戒してもらおうと思って。

 あのカフェに何度も出没してるから、この辺りの企業には一応、お知らせをね」

「そうなんですか……」
と言うと、

「ところで、君、此処の社員だったの?」

 さっき廊下で見かけたから、総務の人に訊いてみたんだけど、と言ってくる。

「ああ、いえ。
 カフェから出張して、二週間程、秘書に研修に」

 お茶の淹れ方を皆様に教えるというより、結局、此処で、研修させてもらっている気がする、と思っていた。

 秘書室って、気配りの部署だからな。

 秋月さんとかああ見えて、指導もさすがポイント押さえてて、上手いし。

 そんなことを考えていると、
「そうなんだ?
 まあ、此処で話できてよかったよ。

 カフェの方ではちょっと。
 あまり目につきたくないんで」
と服部が言ったとき、通り過ぎかけて戻ってきた者が居た。

「お、服部半蔵じゃないか。
 なんで此処に居るんだ」

 海里だった。

「あれっ? 彼氏さんじゃないですか」
と海里を見上げて服部が言い出す。

 ひーっ。
 此処ではやめてくださいーっ。

 いや、何処ででもやめてくださいーっ。

 第一、彼氏じゃないしーっ、と思ったのだが、口に出せばまた、海里に、
「往生際が悪い」
と言われるのはわかっているので、黙っていた。

「なんの用だ、服部半蔵」

「あのー、この人、めっちゃ偉そうなんですけど、誰なんですか?」
と海里を示して、服部が訊く。

 何者なのかという意味だろう。

「そ、その方は支社長です……」

 へー、支社長なんですかー、と呟いたあとで、服部は、あまりを見、海里を見、また、あまりを見た。

「では……」
とまずいものでも見てしまったような顔で、服部はそれ以後、目を合わせず、頭を下げると、すすすっと行こうとする。

「いやっ、待ってくださいっ」
 あまりは服部の肩をつかんでいた。

「私、愛人とかじゃありませんからっ」
と小声で叫ぶ。

 だが、海里はその手を手にしていた青いファイルで跳ね上げた。

「みだりに男に触るな」

 そのとき、後ろから、別の声がした。

「……なにやってんだ。
 暇なのか? この会社」

 パンの入ったケースを抱えた成田が立っていた。


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