我慢してきた令嬢は、はっちゃける事にしたようです。

和威

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第70話・凹む旦那様と悶える私

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名前を呼ばれ、頬に手を添えられ……旦那様の顔が少しずつ近付いて…………。

「あ!!あれって副団長じゃね?」

ガクッと旦那様の頭が目の前に倒れて来ました。

「ババババババカ!?おま、空気読めよ!」

「…………へっ?」

声がした方を見ると魔法師団の人が2人、坂を登りきった所に立ってました。

て言うか私、今旦那様にキスされそうになってた?
なってたんだよね!?
あの2人が来なければ、旦那様とキキキキキキッスゥゥゥ!?

ボンッ!!
と、音がしそうな程に一気に顔が赤く火照ります。

うわ!うわ!うわあぁぁぁ!!
恥ずかしい!!
両手で頬を挟んで、街並みの方を向きます。
キスされそうになったのも恥ずかしいし、ソレを見られた事も恥ずかしい!!

ひぃぃぃぃ!ドキドキが止まらないよ~!!

「…………巡回にしては早くないですか?」

隣から旦那様の普段より若干、低い声が聞こえます。

「すすすすいません!コイツが、ここの夕焼けが好きでして!ほら!お前も謝れ!!」

「ふぇぇぇ!すんませんっした!」

「…………確か、ナルテとヨハンだったな?明日の訓練には参加するのかな?」

うん、何となくですけど……旦那様、笑ってる?

「「はい!!」」

「そうか……ミリア、行きましょう。」

「!!…………ふあ……はははい!」

慌てて向きを変えて、旦那様に背中を押される様に来た道を歩きます。
恥ずかしいし赤い顔を見られたく無いので、頬を抑えたまま顔を伏せてます。

2人の側を通り過ぎる時、旦那様が

「……明日の訓練が楽しみですね?」

「「ひいいっ!!」」

私は何も聞いてない。
聞いてないったら聞いてない!!

ソレどころじゃないです!
旦那様の顔が見れません。
この後、どうしろと言うの~!?

坂を下りきった所で、旦那様が立ち止まったので私も止まります。

う~~~、まだ、ドキドキしてます。

「……すみませんでした。」

「えっ?」

謝られるとは思って無かったので、驚いて顔を上げてしまいました。

「嫌な思いをさせてしまったみたいで……泣かせたい訳ではないんですよ。」

そう言うと旦那様は私の顔の横に手を添えて、目尻に溜まっていた涙を優しく親指で拭ってくれました。

涙に気付いて無かったのでビックリです。

「あ、あれ?いえ、コレは……。」

「いえ、もう……しませんから安心して下さい。」

……ズキッ

あ、あれ?
何で…………傷ついてるの、私?

「さぁ、ケーキを買って帰りましょう。」

「…………はい。」

ケーキ屋さんに向かいます。
手の繋ぎ方が、恋人繋ぎのままで何故かホッとしました。





屋敷に着くと旦那様は、晩餐は執務室で仕事をしながら取ると言われて、またズキッと痛みます。

……なんで?

最近はずっと旦那様と一緒に食べてたから……寂しい?

分からないよ。

よし!…………分からないなら、人に聞こう!
誰に聞くのが1番かな?
キスされそうになったとか……チェリエに話すのは恥ずかしいし、照れくさい。
年の功で、マリエかな?

夕飯や入浴等を済ませ、後は寝るだけになりマリエだけ残って貰いました。
ベッドに上半身を起こし、クッションを抱いてます。

「私に相談とは、珍しいですね?奥様。」

「う……うん。取り敢えず座って。」

マリエが椅子を引き寄せ座るのを待ちます。

「…………あのね、その~斯々然々?」

「…………奥様、斯々然々では分かりませんよ?」

で~す~よ~ね~?

「斯々然々」では通じないので、今日の事を話します。
聞いていく内に、マリエの表情が優しい物に変わっていきます。

「…………て言う流れで帰ってきたんだけど、何でズキズキ痛むのか、分からなくて……。」

思い出すとまた、ズキッと痛みました。

「教えなくとも分かる様になると思いますけど……知りたいですか?」

クッションをギュッと抱き締めます。

「意地悪。知りたいから相談したんだよ?」

「クスクス…………。そうですわね。では、御教えしますよ。ソレはですね……。」

「…………ソレは?」

「恋ですよ。」

「…………恋?恋愛の恋?誰が……誰に?」

「奥様が旦那様にですよ!」

奥様、は私で……旦那様、はジーク。
私が、ジークに、恋?
恋って事は……私はジークが好き?

…………好き!?

一瞬で顔が赤くなり、慌ててクッションに顔を埋めます。

好きって……あの好き!?
あの好きってどの好き!?
あああああ私がジークを!?えっ旦那様を……!?

どう言う事!

キスされそうになってドキドキして、しないって言われてズキッてなったのは……して欲しかったの?

グハッ!!

たたた確かに、でこチュ~を嫌だと思った事無い……。
無いけどさ。
コーサを紹介された時、妙にイラッとしてたのは……まさかの嫉妬?
大人の女性で、胸もおっきくて……。
抱き締められたり、笑顔にドキドキしてたのも…………。

うにゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!!

クッションにバッフンバッフン、何度も頭を打ち付けて……。
顔を埋めたまま、

「ゼェ~ハァ~、ゼェ~ハァ~…………マリエ。」

「何でしょう?」

「……仕事行きたくない、です。」

「では、旦那様に「奥様は恋煩いで休みです。」と、御伝え致しますね?」

「ご免なさい。止めて下さい。お仕事行きますぅぅぅぅ。」











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