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#71話 込められた想いの行方
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俺はずっと悩んでいた。
真古都へのクリスマスプレゼント…
霧嶋は何を用意するんだろう…
考えたら、真古都にプレゼントなんて初めてだ…
以前辞書を渡したが、今回は意味合いが違う!
柏崎にもしっかり釘を差された…
仕事が終わって、帰り支度を済ませると、バイトも今日で終わりなので、仕事場のみんなに挨拶をして回った。
「バカッ!何やってんだこんな大事な日に!
さっさと行ってこい!」
ハルさんが俺の背中を叩いた。
「イケメンにーちゃんに取られないようにしっかりやってこいよー!」
同じ配達の人達が俺にエールをくれた。
俺はみんなに深々と頭を下げ、真古都の所へ急いだ。
売り場はもう店が閉まっている。
中に入ると真古都が待っていてくれた。
「瀬戸くんお疲れさま」
「お…おう」
「いつもありがとう。こ…これ花の時期はもう少し先なんだけど、綺麗な花だから蕾から咲くまで楽しんでもらえたら嬉しいかな…
わたしからの気持ちだよ」
そう言って、真古都はクリスマスローズの鉢をくれた。
「ありがとう」
俯くように咲く白い花弁の小さな花の写真は、真古都を思わせる可愛い花だった。
俺は鞄から小さな包を出すと、それを真古都に渡した。
「あ…開けてもいい?」
「ああ」
真古都がゆっくり包を開ける。
「こ…これ本当にわたしが貰ってもいいの?」
「だからお前に渡してる」
俺が選んだのは細い銀の指輪。
真古都の誕生石が指を囲むように付いている。
《生涯お前だけを好きでいると誓う》
指輪にはそんな想いを込めた。
今の俺には、こんな物しか買えないが、
これが俺の気持ちだった。
「こんなの初めて…ありがとう」
真古都は頬を染めると俺を見上げて言った。
俺は言いたかったことを伝えようと彼女を引き寄せた。
「真古都、もうひとついいか?」
「う…うん」
俺はゆっくり深呼吸をしてから真古都の耳元で伝えた。
「そろそろ…名前で呼べよ」
「えっ…えっ…あの…」
真古都はもう耳まで真っ赤だ。
「う…嬉しい…みんな…が…呼んでるの…
う…羨ましかったから…あ…あの…」
真古都は赤く染まった顔で、何かを言おうとつっかえ、つっかえ話す。
「でも…あ…あの…みんなと…いっ…一緒じゃ…
嫌…だから…」
真古都はもう泣きそうだ。
「しょ…翔くん…って…よ…呼んで…いい?」
そこまでやっと言うと、俺の胸に真っ赤な顔を埋めてしまった。
彼女の頭をゆっくり撫でた。
「ああ」
俺の返事に、真古都は恐る恐る顔を上げた。
俺たちはその後
長いキスをして、久しぶりに二人だけの時間を過ごした。
「昨日はちゃんと渡せたのか?」
次の日、学校に着くと柏崎が心配してくれる。
俺だってプレゼントくらい渡せるさ!
「彼女は…何をくれたんだ?」
「えっ? ああ、自分の気持ちだと言って花をくれたよ。咲くのは少し先らしいが…」
柏崎は、心配の表情から一変して真顔になった。
「何の花だ?」
「たしか…クリスマスローズ…まあ、この時期だからな…」
霧嶋にはポインセチアを贈ったと云うし、
俺にクリスマスローズでも特に問題ないだろ?
「お前、クリスマスローズの花言葉を知っているか?」
柏崎の真顔はそのまま変わらない。
「俺が知る訳無いだろ」
俺は柏崎の真剣な顔に圧倒された。
「いいか?何の意味もなく女の子が
わたしの気持ちだと言って花なんか渡さない!
お前は直ぐにその花の花言葉を調べろ!
今日も一緒に帰るんだろ?その前に花言葉に込められた彼女の気持ちを考えろ!
二人のこれからがかかってるんだからな!
しっかりやれよ!」
「わ…判った…」
柏崎は恐ろしいくらいの剣幕だ。
以前それで失敗でもしてるんだろうか…
クリスマスローズ…花言葉…
なんだ?花言葉って1つじゃないのか?
〈追憶〉
〈わたしを忘れないで〉
〈わたしの不安を取り除いて〉
アイツは、男がいつか自分から離れて行くのを仕方ないと思ってる…
この花言葉が本当にアイツの気持ちなら…
くそっ! あのバカッ!
俺を見縊るのも大概にしろ!
俺はお前しか見えていないし!
お前しかいらない!
お前が俺にこの花を贈った事を
後悔するほどお前だけを好きでいてやるから
覚悟しるよ!
真古都へのクリスマスプレゼント…
霧嶋は何を用意するんだろう…
考えたら、真古都にプレゼントなんて初めてだ…
以前辞書を渡したが、今回は意味合いが違う!
柏崎にもしっかり釘を差された…
仕事が終わって、帰り支度を済ませると、バイトも今日で終わりなので、仕事場のみんなに挨拶をして回った。
「バカッ!何やってんだこんな大事な日に!
さっさと行ってこい!」
ハルさんが俺の背中を叩いた。
「イケメンにーちゃんに取られないようにしっかりやってこいよー!」
同じ配達の人達が俺にエールをくれた。
俺はみんなに深々と頭を下げ、真古都の所へ急いだ。
売り場はもう店が閉まっている。
中に入ると真古都が待っていてくれた。
「瀬戸くんお疲れさま」
「お…おう」
「いつもありがとう。こ…これ花の時期はもう少し先なんだけど、綺麗な花だから蕾から咲くまで楽しんでもらえたら嬉しいかな…
わたしからの気持ちだよ」
そう言って、真古都はクリスマスローズの鉢をくれた。
「ありがとう」
俯くように咲く白い花弁の小さな花の写真は、真古都を思わせる可愛い花だった。
俺は鞄から小さな包を出すと、それを真古都に渡した。
「あ…開けてもいい?」
「ああ」
真古都がゆっくり包を開ける。
「こ…これ本当にわたしが貰ってもいいの?」
「だからお前に渡してる」
俺が選んだのは細い銀の指輪。
真古都の誕生石が指を囲むように付いている。
《生涯お前だけを好きでいると誓う》
指輪にはそんな想いを込めた。
今の俺には、こんな物しか買えないが、
これが俺の気持ちだった。
「こんなの初めて…ありがとう」
真古都は頬を染めると俺を見上げて言った。
俺は言いたかったことを伝えようと彼女を引き寄せた。
「真古都、もうひとついいか?」
「う…うん」
俺はゆっくり深呼吸をしてから真古都の耳元で伝えた。
「そろそろ…名前で呼べよ」
「えっ…えっ…あの…」
真古都はもう耳まで真っ赤だ。
「う…嬉しい…みんな…が…呼んでるの…
う…羨ましかったから…あ…あの…」
真古都は赤く染まった顔で、何かを言おうとつっかえ、つっかえ話す。
「でも…あ…あの…みんなと…いっ…一緒じゃ…
嫌…だから…」
真古都はもう泣きそうだ。
「しょ…翔くん…って…よ…呼んで…いい?」
そこまでやっと言うと、俺の胸に真っ赤な顔を埋めてしまった。
彼女の頭をゆっくり撫でた。
「ああ」
俺の返事に、真古都は恐る恐る顔を上げた。
俺たちはその後
長いキスをして、久しぶりに二人だけの時間を過ごした。
「昨日はちゃんと渡せたのか?」
次の日、学校に着くと柏崎が心配してくれる。
俺だってプレゼントくらい渡せるさ!
「彼女は…何をくれたんだ?」
「えっ? ああ、自分の気持ちだと言って花をくれたよ。咲くのは少し先らしいが…」
柏崎は、心配の表情から一変して真顔になった。
「何の花だ?」
「たしか…クリスマスローズ…まあ、この時期だからな…」
霧嶋にはポインセチアを贈ったと云うし、
俺にクリスマスローズでも特に問題ないだろ?
「お前、クリスマスローズの花言葉を知っているか?」
柏崎の真顔はそのまま変わらない。
「俺が知る訳無いだろ」
俺は柏崎の真剣な顔に圧倒された。
「いいか?何の意味もなく女の子が
わたしの気持ちだと言って花なんか渡さない!
お前は直ぐにその花の花言葉を調べろ!
今日も一緒に帰るんだろ?その前に花言葉に込められた彼女の気持ちを考えろ!
二人のこれからがかかってるんだからな!
しっかりやれよ!」
「わ…判った…」
柏崎は恐ろしいくらいの剣幕だ。
以前それで失敗でもしてるんだろうか…
クリスマスローズ…花言葉…
なんだ?花言葉って1つじゃないのか?
〈追憶〉
〈わたしを忘れないで〉
〈わたしの不安を取り除いて〉
アイツは、男がいつか自分から離れて行くのを仕方ないと思ってる…
この花言葉が本当にアイツの気持ちなら…
くそっ! あのバカッ!
俺を見縊るのも大概にしろ!
俺はお前しか見えていないし!
お前しかいらない!
お前が俺にこの花を贈った事を
後悔するほどお前だけを好きでいてやるから
覚悟しるよ!
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