甘い毒の寵愛

柚杏

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 服を脱いで逞しい身体をさらした王子にシアンは黙って頷いた。
 治療で抱いていたとずっと思っていた。けれど王子は最初からシアン自身を求めて身体を重ねていたのだ。
 毎日、毎晩、交わることのない日もこの部屋で眠っていたのはシアンへの恋慕からだった。
「あっ……」
 背後から抱き寄せられ、王子の膝の上に載せられると胸の両方の突起を指でつままれ弾かれる。
 幾度となく愛撫されてきたそこはほんの少しの刺激だけで膨らんでしまう。
 自身の中心に熱が集まる。ジワジワと芯を持つ中心からは淫らな雫が滲み出す。
「おまえは俺のものだ」
 ベッドの中で何度も言われた言葉は命令だと思っていた。けれどそれはただの所有欲だった。
「じゃあ、王子はオレのもの?」
「王子としての俺は国のものだ。だから……ノアという存在をおまえに」
 胸がギューッと苦しくなる。幸せで顔が緩んでどうしようもない。
「ノア……」
 一国の王子ではなく、一人の男としての彼を独り占めできる喜びに涙が溢れる。
「シアン……」
 背後から耳元に囁かれて振り返る。
 濃厚な口付けがシアンを蕩けさせていく。
 前を握られ緩く扱かれると、声はもう我慢できず吐息とともに何度も喘ぐ。
「あっ、んっ、は、ぁ……」
 鈴口から雫が溢れて流れていく。王子の手に雫が絡まり卑猥な水音をたてはじめる。
 その音が喘ぎ声とともに部屋中に響き、背中に王子の硬い楔が当たっているのを感じ、後孔が疼いた。
 早くこの熱がほしい。奥まで貫いて夢中にさせてほしい。
 もう既に夢中なのに、まだ心と身体が王子を欲している。
 いつもの小瓶に自ら手を伸ばし、蓋を開けた。
 王子がシアンの身体を隅々まで愛でている間に、小瓶の中の液体を手のひらに落とした。
「ノア、もう……」
 液体を自ら後孔に塗り、指を入れて王子を誘惑する。この中はすっかり王子の形を覚えて、簡単に解れてしまう。
 四つん這いにされ、腰に手を添えられ引き寄せられる。
 後孔に熱いモノが宛がわれ、シアンは期待に吐息を漏らした。
「はやく……」
 腰を揺らして求めると、雄の表情をした王子の紺碧色の瞳が鋭く光る。
 その瞬間、シアンの中は熱で貫かれ、あまりの強い刺激に嬌声をあげて悦んだ。
 何度も貫かれ、弱いところを抉られビクビクと痙攣する。
 いつの間にか達していたらしく白濁がシーツを汚していた。それなのに身体はまだ王子からの快楽を求めている。
「ノア……ノア……っ」
「シアン……」
 互いの名前を何度も呼びあった。思いを重ねるように身体を重ね、王子が放つ熱を奥で受け止めた。
 それは何度も繰り返され、喘ぐ声も嗄れ果て白濁も全て出し切り、体力が尽きても王子はシアンを求め翻弄し続けた。
 激しい行為に意識を手放しかけた時、王子からの口付けが降ってきた。
 愛おしい者を見つめる紺碧の瞳にシアンは小さく囁いた。
「――愛してる」
 そしてまた口付けを交わす。
 


 それはまるで、甘く痺れる毒のような寵愛。
 癖になりそうな、甘い毒の――。
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