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第一章
第二話 時間はあっという間
しおりを挟む前世の俺は処刑された。それは俺が我儘で、頑固で、とにかくどうしようもない奴だったからだ。
だから現世は更生するために出来る限り優しく、いじめは勿論の如く、無意味な罵倒は無しで生きていきたい。
今の俺の年齢は13歳。前世ならばキンモクに会っていた年齢。だかしかし!現世は会わない!
何故ならばキンモクはミズマと結ばれる運命だからだ。会っても結末は変わらないのならば会う必要はない。
それに、キンモクにはあまり会いたくはない。
なんせ、失恋した相手だから、会ってしまったらどんな顔をして話せば良いのだろうか…。
だからこそ、距離は取っていきたいのだ。
そう、思っていた。
「おい、なに考えている」
なのに、なのに何故目の前には同年齢のキンモクがいるのだろうか。
「貴様、アザレアだろう?おい、聞いているのか?アザレア」
これは、俺が悪いのか?…いや違う。こいつだ、キンモクから会ってきたのだ。そもそも俺は10歳後半になるまで同年齢とは会わないようにしていたし、アザレア・チェンジングという名前が目立たないようにパーティーの時も隠れて行動していた。
前世の俺は駄々こねるわ、パーティーで礼儀も知らずはしゃぎまくるわで悪目立ちしすぎていたからな。そのせいでキンモクや他の貴族達に良い奴ではないと思われた。
更生するためにはおとなしさが必要なのだ。
なのにも関わらず、キンモクはチェンジング家に来た。しかも来た理由が俺に会いたいからだと。本当にやめてほしい。
「なにか喋れ」
「え、ぁー…ここは大変退屈でしょうからご自宅に帰っていただいた方がよろしいのではないでしょうか…?」
「帰ってほしいのか?」
「い、いえいえ!滅相もない…」
気まずい、気まずい!なんなんだこの時間は!
帰ってくれ!俺の更生を得るために帰ってくれ!
「なんで敬語を使う?」
「え」
「無し、敬語は無しだ、命令だからな」
「えッ…」
こんなこと、前世では言わなかったくせに…。
というかまずい、敬語を第一王子の前で使わないとなると相当目立つし皆から世間知らずと思われる…!
「駄目ですよ!貴方はこの国の第一王子、おれ…私はただの貴族なんですから」
「……」
な、なんだその鋭い目つきは…。そんな顔しても敬語を外すわけにはいかないんだからな。
「「……」」
……本当に、なんなんだ…。
ーーー
その後はあまり思い出したくないが気まずい雰囲気がキンモクの執事が来るまで続くだけだった。
おかしい、前世では俺が我儘を言って強引にキンモクと会って知り合ったというのに…何故キンモクから会いに来たんだ?
心の中で悶々と広がる疑問はキンモクが帰ってからも続いたが、冷静に考え第一王子がなんの関わりもない貴族の元へわざわざ行ったという自体が周りから見たら異例過ぎる事に気づいた。
それからは第一王子がしがない貴族の元へ行ったという噂が広まらなければいいな…と思っていたのもつかの間。直ぐ様この噂は貴族から市民へ次々に広まってしまった。それもそうだ、未来の国王が護衛もなしに執事一人だけ連れて貴族の元へ行った、なんて噂になるしかない。
これからどうなることやら…と思っていたのだが、幸い過ぎることにそれ以来キンモクとは会わなかったし、俺が目立ったのはこの出来事だけだった。
そして、3年後。
俺が16歳になり伯父がグレートスクール以外の学校に入ることは許さないと脅され仕方なく前世と同じ学校に通うことになった。別にグレートスクールに通うこと自体は想定内、問題なのはこれから。
時の流れは早い。どうやって前世のような生き様を逃れられるかを考え、実行している内にあっという間にグレートスクールに入学してしまった。
これから2年後、前世だったら俺は死んでいる。
なんとしてでも回避して、更生して、罪を償わなければ。
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