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第三章・前章、夏休み~校内大会・帝国編~
第八十三話:彼女の知らない裏側でⅡ(彼女が関わるその前に)
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キソラたちよりも先に街に辿り着いたノークたちは、街にある騎士団の支部を訪れていたのだが。
「確かに、本部の騎士たちがこちらへ来ることは聞いていましたが……なるほど。君たち三人が来ましたか」
「あ、はい。お久しぶりです。ラヴィンさん、ヴァステットさん」
応接室で待っていた三人を出迎えたのは、初老にも見える男性と秘書らしき女性の二人である。
ノークたちがまだ学生だった頃、騎士団の仕事を体験してみよう、と一番近い支部だったこの場所へと来たことがあり、その際、担当したのがこの二人だったのだ。
「ははっ、それにしても、四年ぶりですか。君たちが城にある騎士団本部の方に就職したとは聞いていましたが、そうですか。もうそんなに経ちますか」
懐かしむように目を細めるラヴィンに、ヴァステットも懐かしんでいるのか、微笑みをノークたちに向ける。
「っと、ラヴィン様」
「ん、ああ、そうだな……感動している場合ではなかったな」
いち早く正気に戻ったヴァステットがラヴィンに声を掛ける。
そもそも、今日来た目的は、感動の再会なのではなく、協力要請で来たのだ。
「ラヴィンさん。単刀直入に言います。犯人を捕まえるために、俺たちに力を貸してもらえますでしょうか?」
「私個人としては貸したいところだがな」
「正直、期待しない方がいいです」
「どういうことです?」
ラヴィンとヴァステットに言われ、ノークたちは顔を見合わしたりして、疑問を口にする。
「数年前まで、こちらに住んでいた貴方たちなら知っているかもしれませんが、この街は基本的に平和です。貴方の妹と人類最強と言われている冒険者ギルドのギルド長という二人によって保たれている状態です」
「ええ、まあ……」
空間魔導師一人居るだけで、その場所の防御力は跳ね上がる。
「冒険者ギルドでは、ギルド長という圧倒的な実力者が居るから、目に見えて騒ぎを起こそうとする者たちは少ないし、君の妹が監視者として居るから、下手に犯罪を起こすことも出来ない」
犯罪が少ないというのは良いということなのだがね、とラヴィンは続ける。
「圧倒的強者により、維持されている平和。余所からしてみれば、平和ボケしているようにも見えるのだろうな。それこそ、金で地位を得たお坊ちゃんたちの良い標的だ」
馬鹿にされるのが目に見えている。
「実際、戦うことがほとんど無いので、実力があっても腕を悪くさせるし、戦い慣れていない者の方が多いんです」
「それは……」
「だがそれも、彼女に関しては、学院に居る間までのことだろう? 我々に残された時間は有るようで無いのだよ」
街が平和で居られる残り時間は約二年。
そんな中で、本来あるべき姿の街にするのは難しく、規模は違うが、内容的には国王とアイゼンが話していたようなものに近かった。
「まあ、未来のことについて、議論しても仕方がない。今は目の前のことについてだ」
「そうですね」
ラヴィンに言われ、ノークも頷く。
「正直に言って、俺としては、うちの妹が動く前に捕まえておきたい所です」
時間が経てば経つほど、街の守護にも関係しているキソラが事件に関わる可能性が高まってしまうため、だからこそ、ノークとしては、彼女が動くその前に犯人を捕まえておきたいのだ。
「それもそうだな。彼女が動けば、我々は裏で動きやすくなるが、手を借りなくて良いのなら、その方がいい」
ラヴィンの言葉に、面々は頷く。
「とりあえず、まずは分かりやすく、警備強化だな。下手に暴れられても困るし」
「けど、デメリットもあるよな。ここだと思うように行動できないからって街を出られるとき、こっちはいちいち確認しないといけなくなる」
「そもそも、俺のは探索や捜索向きじゃないからなぁ」
レオンの案に、イアンがデメリットを提示するのだが、面々の中で一番の戦力であるはずのノークが自身の能力に唸る。
空間魔導師の中で、探索や捜索に向いているのは、キソラにキャラベル、(あと意外かもしれないが、)エルシェフォードの三人である。
キソラを動かせないとなると、キャラベルかエルシェフォードに協力要請したいところだが、一昨日の件|(特に酒関連)もあるため、微妙に言い出しにくくもあった。
『だったらさぁ。ウチらを使えば良いじゃん、主殿』
「……勝手に出てきてるんじゃねーよ」
ノークの頭の上に置いた腕に顎を乗せ、足を浮かせながら現れた、どこか楽しそうにしている存在に、ラヴィンとヴァステットは警戒するも、ノークはいつもと変わらず、イアンとレオンも現れた存在の話し方から、ノークとの関係性を把握した。
『大丈夫だよ。お嬢に伝わらなきゃ良いんでしょ? だったら、主側の守護者たちだけで行動すればいい』
良い考えでしょ、という存在――ノークの管理する迷宮の守護者の言葉に、ノークは頭を抱えた。
確かに、案としては良いのだが――
「お前は、俺たちを兄妹喧嘩させるだけではなく、内部分裂まで起こさせたいのか」
いくら先代迷宮管理者であり、自分たちの母親であるノゾミの管理下にあった守護者とはいえ、キソラ側の迷宮・ダンジョンとノーク側の迷宮・ダンジョンの守護者たちは基本的には仲が良いが、やはりというべきか、仲が悪い者たちもいる。
『まっさかー。僕たちだって、お嬢だけは敵に回したくはないよ』
相手が可哀想になるぐらい怖いもん、とにこにこ笑みを浮かべながら守護者は言う。
「この街の中で、どう動くつもりだ」
『んー。お嬢にバレる前に、相手を見つけて捕縛しなきゃなんないなら、当然罠を張らなきゃなんないよねー』
誰も肯定も否定もしない。
『罠に関しては、僕の専門だって、知ってるよね? 主』
ニヤリと何度もノークへの呼び方を変えながら問う守護者に、ノークは目を細める。
――迷宮、“罠世界”。
幾重にも広げられた罠だらけの迷宮。
そこを守護するのが、茶髪の罠師、トリエットである。
罠の仕掛けから解除まで、その技術だけを見れば、それはまるで『盗賊』だと思われても仕方がない。
そして何より、エターナル兄妹に罠について教えたのは、彼だった。
「ああ、そうだな。だが――」
『ああ、殺しはしないよ。関係ない奴が引っ掛かったら大変だし、面倒だからね』
それこそ、血なんか流れれば、キソラがその嗅覚で飛んできて、説明を要求されるのは目に見えている。
(しかも、血が関わると怖いんだよなぁ、お嬢)
トリエットは遠い目をしながら思う。
おそらく、彼女のあの能力は、空間魔導師としての能力も関わっているのだろう。
「呉々も流血沙汰にだけはするなよ」
どうやら、ノークも分かっていたらしい。
「何とか方針が決まったところで、だ。捕らえた奴には何を聞く?」
「暗闇の中で何をしていたのか、というのと、この街に来た理由だ。正直、奴が戦争に乗じてようが乗じてまいが、他国からやってきたとは思えないからな」
この国全体を覆うキソラが張る結界。
空間魔導師である彼女が張った結界を破るのが不可能とは言わないが、一般人が攻略するのは難しいだろうから、普通に考えれば、ノークが見掛けたという二人は、自国の者だと考えるべきなのだろう。
「だが、彼女の結界も完全ではないんだろ? だったら、隙を付かれた、ってことも……」
「その可能性はあっても、国内にさえ入ってしまえば、あいつの得意範囲ですから」
ラヴィンの言葉に、ノークはそう返す。
街が駄目なら、範囲を広げて探し出せるほどに、彼女の探索能力は馬鹿に出来ない。
「つくづく君の妹は敵に回したくなくなるな」
「俺も、あいつが妹で、味方であって良かったと思いますよ」
自分たちが本気で喧嘩すれば、冗談抜きで世界が壊れかねない。
迷宮の守護者たちに力を借りようとしても、ノーク側とキソラ側のパワーバランスはキソラ側に傾く(四聖精霊たちの迷宮を管理しているのはキソラである)ため、その辺りの調整も難しいだろう。
『僕は嫌だよ。お嬢と喧嘩するの。勝ち目無いし』
そう告げるトリエットに、ノークたちは苦笑した。
「さて、ここでずっと話していても時間の無駄だからな。みんなに顔見せも兼ねて挨拶でもしに行くとするか」
「そうですね」
ラヴィンに同意すれば、ノークたちは立ち上がる。
『それじゃ、僕は一旦戻るんで』
「ああ」
あっさり姿を消したトリエットに、小さく息を吐くと、ノークはラヴィンたちに言う。
「遅くなりましたが、先程の奴はトリエットと言いまして、俺の管理迷宮の守護者です。今後あいつが顔を見せると思いますので、まあ頭の片隅にでも覚えておいてください」
「あ、ああ、分かった」
今思い出しましたと言わんばかりのノークのトリエットに対する扱いに、ラヴィンたちは戸惑いを浮かべる。
もしこの場に、キソラの迷宮やダンジョンの守護者たちが居れば、「さすが兄妹」と思ったことだろう。
「……こほん。それでは、行きましょうか」
軽い咳払いした後、そう言ったヴァステットに、ノークが小さく「すみません」と謝ると、今度こそ一行は他の団員たちと顔合わせするべく、この場を後にした。
「確かに、本部の騎士たちがこちらへ来ることは聞いていましたが……なるほど。君たち三人が来ましたか」
「あ、はい。お久しぶりです。ラヴィンさん、ヴァステットさん」
応接室で待っていた三人を出迎えたのは、初老にも見える男性と秘書らしき女性の二人である。
ノークたちがまだ学生だった頃、騎士団の仕事を体験してみよう、と一番近い支部だったこの場所へと来たことがあり、その際、担当したのがこの二人だったのだ。
「ははっ、それにしても、四年ぶりですか。君たちが城にある騎士団本部の方に就職したとは聞いていましたが、そうですか。もうそんなに経ちますか」
懐かしむように目を細めるラヴィンに、ヴァステットも懐かしんでいるのか、微笑みをノークたちに向ける。
「っと、ラヴィン様」
「ん、ああ、そうだな……感動している場合ではなかったな」
いち早く正気に戻ったヴァステットがラヴィンに声を掛ける。
そもそも、今日来た目的は、感動の再会なのではなく、協力要請で来たのだ。
「ラヴィンさん。単刀直入に言います。犯人を捕まえるために、俺たちに力を貸してもらえますでしょうか?」
「私個人としては貸したいところだがな」
「正直、期待しない方がいいです」
「どういうことです?」
ラヴィンとヴァステットに言われ、ノークたちは顔を見合わしたりして、疑問を口にする。
「数年前まで、こちらに住んでいた貴方たちなら知っているかもしれませんが、この街は基本的に平和です。貴方の妹と人類最強と言われている冒険者ギルドのギルド長という二人によって保たれている状態です」
「ええ、まあ……」
空間魔導師一人居るだけで、その場所の防御力は跳ね上がる。
「冒険者ギルドでは、ギルド長という圧倒的な実力者が居るから、目に見えて騒ぎを起こそうとする者たちは少ないし、君の妹が監視者として居るから、下手に犯罪を起こすことも出来ない」
犯罪が少ないというのは良いということなのだがね、とラヴィンは続ける。
「圧倒的強者により、維持されている平和。余所からしてみれば、平和ボケしているようにも見えるのだろうな。それこそ、金で地位を得たお坊ちゃんたちの良い標的だ」
馬鹿にされるのが目に見えている。
「実際、戦うことがほとんど無いので、実力があっても腕を悪くさせるし、戦い慣れていない者の方が多いんです」
「それは……」
「だがそれも、彼女に関しては、学院に居る間までのことだろう? 我々に残された時間は有るようで無いのだよ」
街が平和で居られる残り時間は約二年。
そんな中で、本来あるべき姿の街にするのは難しく、規模は違うが、内容的には国王とアイゼンが話していたようなものに近かった。
「まあ、未来のことについて、議論しても仕方がない。今は目の前のことについてだ」
「そうですね」
ラヴィンに言われ、ノークも頷く。
「正直に言って、俺としては、うちの妹が動く前に捕まえておきたい所です」
時間が経てば経つほど、街の守護にも関係しているキソラが事件に関わる可能性が高まってしまうため、だからこそ、ノークとしては、彼女が動くその前に犯人を捕まえておきたいのだ。
「それもそうだな。彼女が動けば、我々は裏で動きやすくなるが、手を借りなくて良いのなら、その方がいい」
ラヴィンの言葉に、面々は頷く。
「とりあえず、まずは分かりやすく、警備強化だな。下手に暴れられても困るし」
「けど、デメリットもあるよな。ここだと思うように行動できないからって街を出られるとき、こっちはいちいち確認しないといけなくなる」
「そもそも、俺のは探索や捜索向きじゃないからなぁ」
レオンの案に、イアンがデメリットを提示するのだが、面々の中で一番の戦力であるはずのノークが自身の能力に唸る。
空間魔導師の中で、探索や捜索に向いているのは、キソラにキャラベル、(あと意外かもしれないが、)エルシェフォードの三人である。
キソラを動かせないとなると、キャラベルかエルシェフォードに協力要請したいところだが、一昨日の件|(特に酒関連)もあるため、微妙に言い出しにくくもあった。
『だったらさぁ。ウチらを使えば良いじゃん、主殿』
「……勝手に出てきてるんじゃねーよ」
ノークの頭の上に置いた腕に顎を乗せ、足を浮かせながら現れた、どこか楽しそうにしている存在に、ラヴィンとヴァステットは警戒するも、ノークはいつもと変わらず、イアンとレオンも現れた存在の話し方から、ノークとの関係性を把握した。
『大丈夫だよ。お嬢に伝わらなきゃ良いんでしょ? だったら、主側の守護者たちだけで行動すればいい』
良い考えでしょ、という存在――ノークの管理する迷宮の守護者の言葉に、ノークは頭を抱えた。
確かに、案としては良いのだが――
「お前は、俺たちを兄妹喧嘩させるだけではなく、内部分裂まで起こさせたいのか」
いくら先代迷宮管理者であり、自分たちの母親であるノゾミの管理下にあった守護者とはいえ、キソラ側の迷宮・ダンジョンとノーク側の迷宮・ダンジョンの守護者たちは基本的には仲が良いが、やはりというべきか、仲が悪い者たちもいる。
『まっさかー。僕たちだって、お嬢だけは敵に回したくはないよ』
相手が可哀想になるぐらい怖いもん、とにこにこ笑みを浮かべながら守護者は言う。
「この街の中で、どう動くつもりだ」
『んー。お嬢にバレる前に、相手を見つけて捕縛しなきゃなんないなら、当然罠を張らなきゃなんないよねー』
誰も肯定も否定もしない。
『罠に関しては、僕の専門だって、知ってるよね? 主』
ニヤリと何度もノークへの呼び方を変えながら問う守護者に、ノークは目を細める。
――迷宮、“罠世界”。
幾重にも広げられた罠だらけの迷宮。
そこを守護するのが、茶髪の罠師、トリエットである。
罠の仕掛けから解除まで、その技術だけを見れば、それはまるで『盗賊』だと思われても仕方がない。
そして何より、エターナル兄妹に罠について教えたのは、彼だった。
「ああ、そうだな。だが――」
『ああ、殺しはしないよ。関係ない奴が引っ掛かったら大変だし、面倒だからね』
それこそ、血なんか流れれば、キソラがその嗅覚で飛んできて、説明を要求されるのは目に見えている。
(しかも、血が関わると怖いんだよなぁ、お嬢)
トリエットは遠い目をしながら思う。
おそらく、彼女のあの能力は、空間魔導師としての能力も関わっているのだろう。
「呉々も流血沙汰にだけはするなよ」
どうやら、ノークも分かっていたらしい。
「何とか方針が決まったところで、だ。捕らえた奴には何を聞く?」
「暗闇の中で何をしていたのか、というのと、この街に来た理由だ。正直、奴が戦争に乗じてようが乗じてまいが、他国からやってきたとは思えないからな」
この国全体を覆うキソラが張る結界。
空間魔導師である彼女が張った結界を破るのが不可能とは言わないが、一般人が攻略するのは難しいだろうから、普通に考えれば、ノークが見掛けたという二人は、自国の者だと考えるべきなのだろう。
「だが、彼女の結界も完全ではないんだろ? だったら、隙を付かれた、ってことも……」
「その可能性はあっても、国内にさえ入ってしまえば、あいつの得意範囲ですから」
ラヴィンの言葉に、ノークはそう返す。
街が駄目なら、範囲を広げて探し出せるほどに、彼女の探索能力は馬鹿に出来ない。
「つくづく君の妹は敵に回したくなくなるな」
「俺も、あいつが妹で、味方であって良かったと思いますよ」
自分たちが本気で喧嘩すれば、冗談抜きで世界が壊れかねない。
迷宮の守護者たちに力を借りようとしても、ノーク側とキソラ側のパワーバランスはキソラ側に傾く(四聖精霊たちの迷宮を管理しているのはキソラである)ため、その辺りの調整も難しいだろう。
『僕は嫌だよ。お嬢と喧嘩するの。勝ち目無いし』
そう告げるトリエットに、ノークたちは苦笑した。
「さて、ここでずっと話していても時間の無駄だからな。みんなに顔見せも兼ねて挨拶でもしに行くとするか」
「そうですね」
ラヴィンに同意すれば、ノークたちは立ち上がる。
『それじゃ、僕は一旦戻るんで』
「ああ」
あっさり姿を消したトリエットに、小さく息を吐くと、ノークはラヴィンたちに言う。
「遅くなりましたが、先程の奴はトリエットと言いまして、俺の管理迷宮の守護者です。今後あいつが顔を見せると思いますので、まあ頭の片隅にでも覚えておいてください」
「あ、ああ、分かった」
今思い出しましたと言わんばかりのノークのトリエットに対する扱いに、ラヴィンたちは戸惑いを浮かべる。
もしこの場に、キソラの迷宮やダンジョンの守護者たちが居れば、「さすが兄妹」と思ったことだろう。
「……こほん。それでは、行きましょうか」
軽い咳払いした後、そう言ったヴァステットに、ノークが小さく「すみません」と謝ると、今度こそ一行は他の団員たちと顔合わせするべく、この場を後にした。
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