75 / 119
第二章、戦争
第七十二話:国内・学院攻防戦XVII(黒竜退治Ⅲ・過去からの因縁)
しおりを挟む
さて、黒竜を送還するとは言ったが、まずはその動きを封じなくてはいけない。
だが、それすらも無理だった。
その理由というのが――
「何かさぁ。こいつを返そうと躍起になってるみたいだけど、そう簡単に返させないわよ?」
そう言いながら、黒竜の頭上にいきなり女が現れたからだ。
「もしかして、黒竜の召喚者さん?」
「そ。私はこいつの召喚者。召喚士よ」
キソラの問いに、女は頷いた。
だが、同時に厄介でもあった。前に一度言ったと思うが、迷宮管理者と違い、召喚士は召喚対象と主従関係になるからだ。
もし、女の言う通り、黒竜が彼女の召喚獣なら、彼女に送還してもらう必要があるのだが。
「お姉さん。召喚者だけど、そいつを送還する気無いよね?」
そもそも、そんな気が少しでもあれば、最初から黒竜を召喚しようとも思わなかったはずだ。
「あら、分かった?」
「目的は何なの」
可愛らしく首を傾げる女に、キソラは単刀直入に尋ねる。
返事次第では、黒竜の強制送還も厭わない。
だが、女の返事は意外なものだった。
「貴女」
「は?」
「だから、貴女よ」
再度同じことを言ったかと思えば、女は顔を歪めた。
「本っ当、あの女が生きてるみたいで嫌になる」
それを聞き、彼女から感じたのは、嫌悪などの負の感情。
(あの女って、多分……)
ちらりとギルド長へと目を向ければ、珍しく厳しい表情を露わにしていた。
(うわぁ、当たってほしくなかったなぁ)
まさかの正解に、内心そう思いつつ、キソラは息を吐いた。
「それで、用は何でしょう?」
とりあえず、用件を聞いてみる。
「用? そうね――」
その瞬間、キソラの目の前を何かが通り過ぎる。
それが剣の切っ先だと分かったのは、とっさに回避した後だった。あともう少し遅ければ、真っ二つか目を駄目にされていただろう。
そんなキソラを余所に、女は言う。
「貴女を殺すためよ」
☆★☆
甲高い音がぶつかり合う。
女が放つ剣技や魔法は、こちらの剣技や魔法のことをよく分かってるのか、相殺したり打ち消したりするのだ。
「大体、母との因縁を娘である私にまで、巻き込まないでもらえます?」
「それは無理よ。恨むなら、顔が似ていることやあの女から生まれたことを恨みなさい」
「却下します。母親を貶すほど、親不孝者ではないので」
さすがに、生身で戦うにはいろいろと限界があるので、上手いこと移動していたイフリートと“精霊憑依”したが、どうもおかしい。
『攻撃力、上がってるよね?』
『ああ。けど、あの女が何かしたんだろ』
精神世界で会話するが、忌々しいと言いたげに、イフリートが顔を歪ませる。
(ま、知り合いだよね。お母さんの時にはもう居たわけだし)
『対黒竜用に魔力は残しておきなさいよ』
とりあえず、意識を浮上させれば、女の相手に集中する。
「それにしても、貴女の恨みを買うほど、母が何かしましたか。娘である私にまで巻き込むほどの恨みみたいですけど」
「そうね。したわ。そして、あの女と同じ顔の貴女を見ると、いやでもあの女の顔を思い出すのよ!」
風切り音を発しながら、女はキソラに向かって剣を振るう。
『単なる八つ当たりみたいなものじゃねーか!』
イフリートの声が届く。
「……“精霊憑依”、解除」
『なっ……いきな――』
いきなり“精霊憑依”を解除され、驚きの表情を向けるイフリートだが、言葉は最後まで続かなかった。
何の感情も浮かんでいない、漆黒の眼が女を捉えていた。
「貴女が母をいくら恨もうと勝手ですが、やはり私まで巻き込むのは違うと思いますよ?」
口は笑っているのに、目は笑っていない。
(怒りを通り越したか)
何がキソラの琴線や逆鱗に触れたのかは分からないが、怒りを通り越すほど、感情が思いっきり振り切ったということだけは、近くにいるイフリートに分かった。
「っ、」
「次から次へと問題を増やさないでくださいよ。黒竜を片づけて終わりのつもりだったのに、親と因縁のある人が登場とか、全然笑えないし」
キソラが一歩前に進めば、女は一種の恐怖を感じたのか、一歩後ろに下がり始める。
「黒竜、送還してくれません? ただでさえ広がっていた被害が、さらに広がるじゃないですか」
「それは無理よ。貴女を殺すためだけに、召喚したんだから」
「あっそ」
キソラはブレスを吐こうとしている黒竜に目を向け、ふっと笑みを浮かべた。
「じゃあ、私が送還しますね」
「はぁっ!? さっきまでの会話、聞いてた? 黒竜は召喚士である私の召喚したモンスターなのよ? それなのに、送還するって本気?」
バカじゃないの、と鼻で笑う女に、キソラは彼女に目を向ける。
「本気も本気。この程度のこと、どうにも出来ないと思われるとか、迷宮管理者も嘗められたものだなぁ」
そう言いながら、四聖精霊たちに目を向ける。
有り難いことに、魔力にはまだ余裕がある。
「全員、黒竜送還の準備をしておいて。私はこの人の相手もしないといけないから」
「相手『も』……?」
キソラの言い方を、疑問に思ったらしい。
「そのことなんだけど、相手は私が代わりましょうか」
「ギルド長?」
いつの間に屋根の上にいたのか、背後にいた人物――ギルド長に、キソラは首を傾げた。
「どうせ私も、あの時の関係者です。それなら構わないでしょう?」
「私は、その子を殺したいんだけど?」
ギルド長の問いに、女の目がキソラへと向く。
「私はギルド長が死なないと約束してくれるのなら、代わっても良いですよ」
そうすれば、キソラは黒竜送還に集中できるし、話は聞こえていたのか、四聖精霊たちも意識を黒竜へと向ける。
「死にませんよ。私は」
「では、任せます」
そもそも、人間最強なんて言われている人である。そんな人が、自分と同じ人間に負けるはずもない。
「ちょっと、話を勝手に進めないでちょうだい。私は許可してないわよ」
「貴女の許可なんて、必要ないですよね?」
いくらキソラが標的でも、敵の許可は必要ない。
「っ、まあいいわ。さっさと倒して、貴女を狙えばいいんだし」
「そうなると良いですね」
ギルド長が相手である以上、長引くのは目に見えているけど、とは言わない。
(意識は黒竜、気配感知は全方位)
そう思いながら、小さく息を吐きつつ、屋根の上を歩きながら黒竜の元へと向かう。
気付かない間に、かなり離れていたらしい。
「――“セカンド・モード スタンバイ”」
取り出した相棒にそう告げれば、了解の意思表示が伝わってくる。
四聖精霊たちは心配していたが、管理下外の迷宮への送還で魔力が無くなることは覚悟済みだ。
(大丈夫。見ていて、お母さん)
もう、この地に傷を増やさないためにも――
☆★☆
アキトは校内を歩いていた。
だが、ただ歩いているのではない。走ると足音が響いてしまうため、逸る気持ちを抑えながら、なるべく早く目的地に向かうために歩いていた。
「っ、」
リックスたちが帝国軍を叩き落とした後に現れた黒き竜に、一緒にいたジャスパーは驚き、アキトは舌打ちした。
あんなの、もしキソラが感じ取れば、放っておくはずがない。
だから、アキトは向かう。
もしかしたら、足手まといだと言われるかもしれないが、そんなの行かないと分からないし、もし彼女が暴走でもしたら、四聖精霊たちと止めなくてはならない。
「っ、と」
さっと角に身を寄せる。
まだ見回りがいたらしい。
(まさか、いないのがバレた?)
こういうときだから点呼をし、所在確認した可能性もある。
「……」
このまま進むか、避難場所に向かうか。
(いや、考えるまでもないか)
少しばかり考えていたためか、近付いてきた気配に気付かず、腕を引かれる。
「誰――」
「しーーっ! 気付かれるでしょ?」
誰だ、と大声で問い詰めそうになったアキトに、指を口に当て、静かにするように告げる彼の腕を引っ張った主。
「ガーランド?」
何でここに、と言いたげなアキトに、赤い髪のツインテールが特徴の少女――アリシアが、呆れた目を向けていた。
「それは、こっちの台詞。もしかしなくても、キソラたちと一緒だったんでしょ? なのに、何で単独行動中なの」
キソラはともかく、ジャスパーの単独行動はマズいと暗に告げるアリシアに、アキトは説明する。
「キソラとは夜中に一度分かれた。多分、あの黒竜のおかげで戻ってきているとは思うが、居るかどうかまでは分からない。ジスは時計塔の屋上にいる。下手に見つかるよりは良いだろうし、仮にも王族だからな。何かあったら困るし」
「……あの子といい、貴方といい、こっちはいろいろと驚いているのに、そのスルーっぷりには感心するわ」
許可が必要なはずの時計塔屋上に行けるわ、ジャスパーがあっさり王族であることを告げるわ、『類は友を呼ぶ』という言葉が現実に表れているようにしか見えない。
「俺とキソラを一緒にするなよ? 俺は出来る範囲のことは弁えてるが、あいつは出来る範囲以上のことまでやろうとするんだからな」
「確かに、あの子が無茶をするから、私たち周囲の者たちは、ハラハラしっぱなしなのよね」
それでも、彼女と一緒にいてしまうのだ。
「ねぇ、アキト君」
おそらく、初めてであろうアリシアからの名前呼びに、アキトは彼女に目を向ける。
「キソラの所まで、連れてってあげようか」
驚きを露わにするアキトに対し、アリシアは笑みを浮かべた。
だが、それすらも無理だった。
その理由というのが――
「何かさぁ。こいつを返そうと躍起になってるみたいだけど、そう簡単に返させないわよ?」
そう言いながら、黒竜の頭上にいきなり女が現れたからだ。
「もしかして、黒竜の召喚者さん?」
「そ。私はこいつの召喚者。召喚士よ」
キソラの問いに、女は頷いた。
だが、同時に厄介でもあった。前に一度言ったと思うが、迷宮管理者と違い、召喚士は召喚対象と主従関係になるからだ。
もし、女の言う通り、黒竜が彼女の召喚獣なら、彼女に送還してもらう必要があるのだが。
「お姉さん。召喚者だけど、そいつを送還する気無いよね?」
そもそも、そんな気が少しでもあれば、最初から黒竜を召喚しようとも思わなかったはずだ。
「あら、分かった?」
「目的は何なの」
可愛らしく首を傾げる女に、キソラは単刀直入に尋ねる。
返事次第では、黒竜の強制送還も厭わない。
だが、女の返事は意外なものだった。
「貴女」
「は?」
「だから、貴女よ」
再度同じことを言ったかと思えば、女は顔を歪めた。
「本っ当、あの女が生きてるみたいで嫌になる」
それを聞き、彼女から感じたのは、嫌悪などの負の感情。
(あの女って、多分……)
ちらりとギルド長へと目を向ければ、珍しく厳しい表情を露わにしていた。
(うわぁ、当たってほしくなかったなぁ)
まさかの正解に、内心そう思いつつ、キソラは息を吐いた。
「それで、用は何でしょう?」
とりあえず、用件を聞いてみる。
「用? そうね――」
その瞬間、キソラの目の前を何かが通り過ぎる。
それが剣の切っ先だと分かったのは、とっさに回避した後だった。あともう少し遅ければ、真っ二つか目を駄目にされていただろう。
そんなキソラを余所に、女は言う。
「貴女を殺すためよ」
☆★☆
甲高い音がぶつかり合う。
女が放つ剣技や魔法は、こちらの剣技や魔法のことをよく分かってるのか、相殺したり打ち消したりするのだ。
「大体、母との因縁を娘である私にまで、巻き込まないでもらえます?」
「それは無理よ。恨むなら、顔が似ていることやあの女から生まれたことを恨みなさい」
「却下します。母親を貶すほど、親不孝者ではないので」
さすがに、生身で戦うにはいろいろと限界があるので、上手いこと移動していたイフリートと“精霊憑依”したが、どうもおかしい。
『攻撃力、上がってるよね?』
『ああ。けど、あの女が何かしたんだろ』
精神世界で会話するが、忌々しいと言いたげに、イフリートが顔を歪ませる。
(ま、知り合いだよね。お母さんの時にはもう居たわけだし)
『対黒竜用に魔力は残しておきなさいよ』
とりあえず、意識を浮上させれば、女の相手に集中する。
「それにしても、貴女の恨みを買うほど、母が何かしましたか。娘である私にまで巻き込むほどの恨みみたいですけど」
「そうね。したわ。そして、あの女と同じ顔の貴女を見ると、いやでもあの女の顔を思い出すのよ!」
風切り音を発しながら、女はキソラに向かって剣を振るう。
『単なる八つ当たりみたいなものじゃねーか!』
イフリートの声が届く。
「……“精霊憑依”、解除」
『なっ……いきな――』
いきなり“精霊憑依”を解除され、驚きの表情を向けるイフリートだが、言葉は最後まで続かなかった。
何の感情も浮かんでいない、漆黒の眼が女を捉えていた。
「貴女が母をいくら恨もうと勝手ですが、やはり私まで巻き込むのは違うと思いますよ?」
口は笑っているのに、目は笑っていない。
(怒りを通り越したか)
何がキソラの琴線や逆鱗に触れたのかは分からないが、怒りを通り越すほど、感情が思いっきり振り切ったということだけは、近くにいるイフリートに分かった。
「っ、」
「次から次へと問題を増やさないでくださいよ。黒竜を片づけて終わりのつもりだったのに、親と因縁のある人が登場とか、全然笑えないし」
キソラが一歩前に進めば、女は一種の恐怖を感じたのか、一歩後ろに下がり始める。
「黒竜、送還してくれません? ただでさえ広がっていた被害が、さらに広がるじゃないですか」
「それは無理よ。貴女を殺すためだけに、召喚したんだから」
「あっそ」
キソラはブレスを吐こうとしている黒竜に目を向け、ふっと笑みを浮かべた。
「じゃあ、私が送還しますね」
「はぁっ!? さっきまでの会話、聞いてた? 黒竜は召喚士である私の召喚したモンスターなのよ? それなのに、送還するって本気?」
バカじゃないの、と鼻で笑う女に、キソラは彼女に目を向ける。
「本気も本気。この程度のこと、どうにも出来ないと思われるとか、迷宮管理者も嘗められたものだなぁ」
そう言いながら、四聖精霊たちに目を向ける。
有り難いことに、魔力にはまだ余裕がある。
「全員、黒竜送還の準備をしておいて。私はこの人の相手もしないといけないから」
「相手『も』……?」
キソラの言い方を、疑問に思ったらしい。
「そのことなんだけど、相手は私が代わりましょうか」
「ギルド長?」
いつの間に屋根の上にいたのか、背後にいた人物――ギルド長に、キソラは首を傾げた。
「どうせ私も、あの時の関係者です。それなら構わないでしょう?」
「私は、その子を殺したいんだけど?」
ギルド長の問いに、女の目がキソラへと向く。
「私はギルド長が死なないと約束してくれるのなら、代わっても良いですよ」
そうすれば、キソラは黒竜送還に集中できるし、話は聞こえていたのか、四聖精霊たちも意識を黒竜へと向ける。
「死にませんよ。私は」
「では、任せます」
そもそも、人間最強なんて言われている人である。そんな人が、自分と同じ人間に負けるはずもない。
「ちょっと、話を勝手に進めないでちょうだい。私は許可してないわよ」
「貴女の許可なんて、必要ないですよね?」
いくらキソラが標的でも、敵の許可は必要ない。
「っ、まあいいわ。さっさと倒して、貴女を狙えばいいんだし」
「そうなると良いですね」
ギルド長が相手である以上、長引くのは目に見えているけど、とは言わない。
(意識は黒竜、気配感知は全方位)
そう思いながら、小さく息を吐きつつ、屋根の上を歩きながら黒竜の元へと向かう。
気付かない間に、かなり離れていたらしい。
「――“セカンド・モード スタンバイ”」
取り出した相棒にそう告げれば、了解の意思表示が伝わってくる。
四聖精霊たちは心配していたが、管理下外の迷宮への送還で魔力が無くなることは覚悟済みだ。
(大丈夫。見ていて、お母さん)
もう、この地に傷を増やさないためにも――
☆★☆
アキトは校内を歩いていた。
だが、ただ歩いているのではない。走ると足音が響いてしまうため、逸る気持ちを抑えながら、なるべく早く目的地に向かうために歩いていた。
「っ、」
リックスたちが帝国軍を叩き落とした後に現れた黒き竜に、一緒にいたジャスパーは驚き、アキトは舌打ちした。
あんなの、もしキソラが感じ取れば、放っておくはずがない。
だから、アキトは向かう。
もしかしたら、足手まといだと言われるかもしれないが、そんなの行かないと分からないし、もし彼女が暴走でもしたら、四聖精霊たちと止めなくてはならない。
「っ、と」
さっと角に身を寄せる。
まだ見回りがいたらしい。
(まさか、いないのがバレた?)
こういうときだから点呼をし、所在確認した可能性もある。
「……」
このまま進むか、避難場所に向かうか。
(いや、考えるまでもないか)
少しばかり考えていたためか、近付いてきた気配に気付かず、腕を引かれる。
「誰――」
「しーーっ! 気付かれるでしょ?」
誰だ、と大声で問い詰めそうになったアキトに、指を口に当て、静かにするように告げる彼の腕を引っ張った主。
「ガーランド?」
何でここに、と言いたげなアキトに、赤い髪のツインテールが特徴の少女――アリシアが、呆れた目を向けていた。
「それは、こっちの台詞。もしかしなくても、キソラたちと一緒だったんでしょ? なのに、何で単独行動中なの」
キソラはともかく、ジャスパーの単独行動はマズいと暗に告げるアリシアに、アキトは説明する。
「キソラとは夜中に一度分かれた。多分、あの黒竜のおかげで戻ってきているとは思うが、居るかどうかまでは分からない。ジスは時計塔の屋上にいる。下手に見つかるよりは良いだろうし、仮にも王族だからな。何かあったら困るし」
「……あの子といい、貴方といい、こっちはいろいろと驚いているのに、そのスルーっぷりには感心するわ」
許可が必要なはずの時計塔屋上に行けるわ、ジャスパーがあっさり王族であることを告げるわ、『類は友を呼ぶ』という言葉が現実に表れているようにしか見えない。
「俺とキソラを一緒にするなよ? 俺は出来る範囲のことは弁えてるが、あいつは出来る範囲以上のことまでやろうとするんだからな」
「確かに、あの子が無茶をするから、私たち周囲の者たちは、ハラハラしっぱなしなのよね」
それでも、彼女と一緒にいてしまうのだ。
「ねぇ、アキト君」
おそらく、初めてであろうアリシアからの名前呼びに、アキトは彼女に目を向ける。
「キソラの所まで、連れてってあげようか」
驚きを露わにするアキトに対し、アリシアは笑みを浮かべた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる