暗殺貴族【挿絵有】

八重

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第4章 サリエル編

【幕間・悪魔の鍵箱】

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※注意※
内容に軽いGLが含まれます。苦手な方はご注意くださいませ。
なお、こちらを読まなくても本編に影響はありません。
違う角度、視点から物語のカケラを見てみたい方はどうぞ。




この想いは鍵箱に仕舞い込んで…



【悪魔の鍵箱】




「サリエル様ったら毎日あそこで何見ているのかしらぁん」
「さぁな」


 さして興味ない人物について問われてそっけなく答えを返す。いや、今思えばそれは嫉妬心からくる態度だったのかもしれない。
 私の隣の悪魔は遠くに見える天使の姿をどこか楽しそうに眺めている。こいつこんな表情もするんだな、とその横顔を見て思った。そして心の中で何か小さな不安が産まれた。正体はわからないが何か不吉な予感がするのだ…。


「なぁ、レヴィアタン…。あいつのこと好きなのか?」
「ふふふ…好きとかじゃあないわぁ。ただ興味があるだけよぅ」
「ふーん」


 この時私は自分の予想が外れたことにどこか安堵した。しかしこの安堵も長くは続かなかった。


サリエルの前にある人間の少女が現れた。


 そう。全てはここから始まった。





「なんなのよあのガキはぁっ!」


 レヴィアタンの瞳は嫉妬の炎によって、より紅く燃え上がっていた。彼女は七つの大罪のうち“嫉妬"を司る悪魔。嫉妬は彼女の武器であり力だった。
 だからだろうか、この時の彼女がいつにもなく美しく魅力的に見えた。

 私はそんな彼女をもっと見たいと願った。

 事が動いたのはそれから少し後。サリエルと少女の前にある男が現れた。
 その時に見せた孤高の天使の醜い感情。レヴィアタンはその瞬間を見逃さなかった。


「あぁ…あぁ…なんて素敵なのぉ……!」


 彼女の頬は紅潮し、瞳は潤んでいた。

 私は気づいた。

 彼女が醜い感情を剥き出しにした天使に心を奪われたのを。



「ねぇ、アラストルゥ。ちょっと面白い提案があるのよぅ」
「……つまんねー提案だったら覚悟しろよ」
「いやん。短気ねぇん」
「うっせーな。いいから早く内容話せよ」
「わかったわよぅ。実はねぇー…」


 簡単に言えばレヴィアタンの提案とは、人間のガキを使ってサリエルをもっと狂わせること。彼女が生まれ変わるたびに理不尽な死を迎えさせつづける。


「ー…て言う案なんだけどぉ、いかがかしらぁ?」


 正直面倒だったけど私は思った。サリエルが狂うことで、レヴィアタンが喜ぶのならいいか、と。


「まぁ、暇だからやってやるよ」


 こうして私たちはサリエルの感情を揺さぶるため行動を起こすことになった。





「うふふ…本当はぁお腹い~っぱい食べたいでしょう…?」
「あのガキも1日パン食べれなかったぐらいで死ぬわけじゃねぇから大丈夫だって」
「あぁ…お腹いっぱいだぁって満腹感を味わいながら寝たいでしょう?」


 <暴食>を刺激する私(悪魔)達の囁きの効果は抜群だった。

 人間のガキはあっけなく死んだ。



「アイリス…必ずお前を見つける…必ず……」


 サリエルは悲しみと絶望に染まった表情のままアイリスの魂を天へと還した。そんなサリエルの様子を見るレヴィアタンは嫉妬で肩を震わせている様にも、興奮している様にも見えた。



サリエルは人間のガキに

レヴィアタンはサリエルに

私はそんな彼女(レヴィアタン)の表情に執着するようになった




 アイリスの魂が再び地上に降りた時、サリエルは彼女を探し、私たちはそんなサリエルの後を追った。

 サリエルがアイリスを見つけた時、彼女はリラと言う名前で15歳の少女だった。どうやらリラはアイリスとは違いサリエルの姿を認識できないようだった。
 それでもサリエルは毎日彼女の様子を見に来ては熱の籠った視線を彼女に送っていた。



完全に天使は恋に落ちていた。



 そして面白いことにリラの実の兄、ルースもサリエルと同じように妹に恋をしていた。これは利用する手はない。
 私達は再び作戦を立てることにした。そして新たな計画を立てた。



サリエルを自分達のものにする計画を。


********


全てがうまくいくはずだった。

レヴィアタンはサリエルを手に入れることができるはずだった。

手に入れたサリエルをぐちゃぐちゃにして愛でるはずだった。

そして私はそんなレヴィアタンの隣にいるはずだった。





「ぎゃぁぁっぁあ゛っぁああ゛あ゛ぁぁぁあ゛ぁああぁ」



熱い 熱い 痛い 熱い 熱い 痛い 痛い




あなどっていた

人間だからとあなどっていた

こんなことなら早く人間を殺してレヴィアタンに加勢すれば良かった

サリエルとの戦闘を心から楽しむ彼女の邪魔をしないようにしたのが間違いだった

私は自分の馬鹿さ加減と甘さに憤怒した




あぁ! 熱い熱い熱い熱い熱い!




両目を抑え、内側から燃え上がる熱を、痛みを感じながら彼女の事を考えた。

あぁ お前も今私と同じ 熱と 痛みを 感じているんだな

ははっ

なぁレヴィアタン

こんな終わり方もいいじゃねぇか

いかにも悪魔らしくて

そう考えたらこの痛みも心地いいものじゃねぇか

なぁ レヴィアタン

お前のサリエルに対しての思いも

私がレヴィアタンに対する思いも

それぞれ形が違えど

あれだ……人間が言うところの

 愛

だったのかもしれねぇな




なぁ レヴィアタン

私たちはどうやったら

また 会えるんだろうな

もしまた会えたとしたら

私は…



ぁあ゛っぁああ゛あ゛ぁぁぁあ゛ぁああぁあああああ!!!!




そこで私の存在と思考は塵となって消えて行った

あっけなく


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