上 下
4 / 4

第4話

しおりを挟む

「飯前だけど、やっぱ風呂上がりにアイスはサイコー!」
「本当!奈落といると、お金も貯まるし、物も貰えるからラッキー!」
「そうだ…お前達は、将来的に華京院から独立する事は考えてないのか?」
「んん?何で?
 別に、楽しいし!華京院サイコー!」
「それって、天童さんが独立希望出した件ですか?」
「んん、まぁ、それもあるけど。
 家に縛られるなんて事だけは、避けて貰いたいからさ。
 華京院だろうと何だろうと、自分の意思で動けよ。
 そこはさ…、ちゃんと理解のある家だと、私は思ってる。」
「爽は今の仕事、好きなんだな!」
「好き…というか、自分にない物の情報を得られるってのは、人間性が豊かになる事だしな。
 私は先を見据えて成長して行きたいんだ。
 自分に恥じる事のない人生を生きたいんでね。」
「僕はどんどんチャレンジして行きたいな!
 新しい事や未知なる業種!
 華京院に新しい風を吹かせるんだ!」
「なんだよー、槇ちゃんも爽も!
 そだなぁ~俺はぁ………。
 とにかく華京院で頑張る!」

 ガクッ!

「まったく、しょうもない奴だな、お前は。」

 浴衣でアイスを食べ終えて、その後3人で軽くゲームで遊び、夕飯を食べて過ごした。
 久し振りに腹から笑い、ふざけ合って、2人は各々の家へ帰って行った。

 私は事務所に戻って、2人のレポートを作成した。

『華京院 槇、及び華京院 奈落、コミュニケーションプログラム。
 3日目  担当 華京院 爽

 体験 。
 地元テレビ局でのアンケート収集、商業施設内でのアンケート収集。
 結論。
 2人共にアンケート収集、情報収集の適性有りと判断。
 華京院 奈落に関してはプラスアルファの適性が垣間見える。
 
 コミュニケーション実績。
 『お湯~ランド』にて大浴場での裸の付き合い。
 及び娯楽、会食による交流。
 楽しむ事を目的とし、腹を割って語り合える環境が出来たと思われる。

 感想。
 ………。』

 …感想…。
 ここで、私の手は止まった。
 いつもなら、極普通の外面気取った感想を書いていた。
 けど…。
 今回だけは、素直に自分の気持ちを書きたくてたまらなかった。

「ふう…。」

 深く深呼吸をしてから、再びパソコンに向かって続きを書き始めた。


『感想。
 とても楽しかった。
 そして、出来る事ならば、自分の元に華京院 奈落を置いて、お互いを磨ける環境を作りたいと願うばかりです。』

 レポートを完成させて、上層部へ送信した。

 
 この夏の1日は、私にとっての人生のターニングポイントとなった。

 そして1年後…奈落は私の希望通り、再びここを訪れる。
 それはまた…別の話になるのだが…。

                                           【完】
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。


処理中です...