上 下
57 / 61
第10章

ダック大臣の娘①

しおりを挟む

 翌朝、アルを叩き起こしに王の寝室を訪れた。

 コンコン。

「アル、起きましたか?
 今朝から王たる仕事が満載ですよ?」

 ガチャ。

「おはようだべ、ナナシ。
 丁度いい時に来たべ。
 昨日までの服が洗濯に持ってかれてしまって、どれ着ていいかわかんねぇべ。
 使用人呼ぼうかどうか迷ってたべ。」
「なるほど、それはこちらも都合がいいです。
 中で話しながら、服を選びましょう。」

 私はズイズイと中へ入った。

「まず、服を選ぶ前に今日の予定について…って、アル、パンツ落ちそうです。
 パン1で寝るからゴムが緩んだんじゃないですか?
 まったく。」
「おわっ、オラのモノが出そうだべ。
 とりあえず下着のシャツ着るべ。」
「着ながらで構いませんので、聞いてください。
 今日から少しアルと私は別行動をします。
 なので、このリングの範囲を拡大して貰いたいのですが。」
「別行動?どうしてだ?」
「アルには国王としてロン村の開発事業の指揮をとって貰います。
 なに、詳細の指示はちゃんと教えておきます。
 私はこちらで、今までの契約書類の精査をしなければなりません。
 アルには出来ない仕事でしょう。」
「だども、出来るかなぁ。
 オラ、自信がねぇべ。」
「これは国王としての必要なパフォーマンスです。
 誰が物事の指揮を取っているか、国民に知らしめる為のものでもあるのですよ。」
「パフォーマンスは苦手だべ。
 ナナシの方がずっと華があるべ。
 けんど、書類なんて読めねーし。
 仕方ねぇべ。
 指輪はロン村までは反応しないように設定しておくべ。
 あ、戻ったらすぐに戻すだよ。
 ナナシは逃げようとするから不安だべ。」
「逃げませんって。
 もう。
 それで結構ですから、お願いします。
 あと、服装ですが、あえて作業着っぽい物を選びましょう。」
「国王が作業着だべか?
 オラは好きだけんど。」
「っぽいってとこに、深い意味があるんです。
 国民の関心を引くには、2つ技があります。
 1つはデブラブのように不安を煽る事。
 もう1つは、共感連鎖を利用するです。」
「共感連鎖…だべか?」
「そうです。
 人間とは共感により喜びを感じやすいとされます。
 王様が自分達と同じ感覚、そして同じ価値観を共有してると感じると、仲間意識を持ちやすくなります。
 そして、ポイントはその共感により、評価が緩くなるという事です。
 細かい事を厳しく問いただす事をしなくなる、それが目的の1つです。
 ともすれば、味方にさえついてくれるでしょう。」
「なるほど。
 確かにそっちの方がオラに向いてる。」
「あ、でも微かに高貴さも出さないといけません。
 王様とはいざという時に権威を行使しなければなりませんから。
 ちょっとだけ上の存在というイメージを植え付けるのです。
 なので、服装は今から私が選びましょう。」

 私は時間を惜しむように、テキパキとアルの服装を選んだ。
 消去法で選べばいい。
 何せここのデザインは8割方悪趣味だ。
 つまり2割から、作業着としての機能性と上品な仕立てとデザインを選べばよい。
 そうだな、色は赤のような攻撃色ではなく、柔らかな深緑あたりか。
 軍服まで行かずともそれに近いデザイン。
 短パンは無し。
 ブーツは茶色。
 
「よし、これですね。
 少しだけ勲章を足せば、それなりに高貴さは、かもしだせるでしょう。
 アル、試着をお願いします。」

 私は衣装部屋から取り出した服を、アルへと手渡した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

半身転生

片山瑛二朗
ファンタジー
忘れたい過去、ありますか。やり直したい過去、ありますか。 元高校球児の大学一年生、千葉新(ちばあらた)は通り魔に刺され意識を失った。 気が付くと何もない真っ白な空間にいた新は隣にもう1人、自分自身がいることに理解が追い付かないまま神を自称する女に問われる。 「どちらが元の世界に残り、どちらが異世界に転生しますか」 実質的に帰還不可能となった剣と魔術の異世界で、青年は何を思い、何を成すのか。 消し去りたい過去と向き合い、その上で彼はもう一度立ち上がることが出来るのか。 異世界人アラタ・チバは生きる、ただがむしゃらに、精一杯。 少なくとも始めのうちは主人公は強くないです。 強くなれる素養はありますが強くなるかどうかは別問題、無双が見たい人は主人公が強くなることを信じてその過程をお楽しみください、保証はしかねますが。 異世界は日本と比較して厳しい環境です。 日常的に人が死ぬことはありませんがそれに近いことはままありますし日本に比べればどうしても命の危険は大きいです。 主人公死亡で主人公交代! なんてこともあり得るかもしれません。 つまり主人公だから最強! 主人公だから死なない! そう言ったことは保証できません。 最初の主人公は普通の青年です。 大した学もなければ異世界で役立つ知識があるわけではありません。 神を自称する女に異世界に飛ばされますがすべてを無に帰すチートをもらえるわけではないです。 もしかしたらチートを手にすることなく物語を終える、そんな結末もあるかもです。 ここまで何も確定的なことを言っていませんが最後に、この物語は必ず「完結」します。 長くなるかもしれませんし大して話数は多くならないかもしれません。 ただ必ず完結しますので安心してお読みください。 ブックマーク、評価、感想などいつでもお待ちしています。 この小説は同じ題名、作者名で「小説家になろう」、「カクヨム」様にも掲載しています。

裏庭が裏ダンジョンでした@完結

まっど↑きみはる
ファンタジー
 結界で隔離されたど田舎に住んでいる『ムツヤ』。彼は裏庭の塔が裏ダンジョンだと知らずに子供の頃から遊び場にしていた。  裏ダンジョンで鍛えた力とチート級のアイテムと、アホのムツヤは夢を見て外の世界へと飛び立つが、早速オークに捕らえれてしまう。  そこで知る憧れの世界の厳しく、残酷な現実とは……?  挿絵結構あります

斬られ役、異世界を征く!! 弐!!

通 行人(とおり ゆきひと)
ファンタジー
 前作、『斬られ役、異世界を征く!!』から三年……復興が進むアナザワルド王国に邪悪なる『影』が迫る。  新たな脅威に、帰ってきたあの男が再び立ち上がる!!  前作に2倍のジャンプと3倍の回転を加えて綴る、4億2000万パワー超すっとこファンタジー、ここに開幕!! *この作品は『斬られ役、異世界を征く!!』の続編となっております。  前作を読んで頂いていなくても楽しんで頂けるような作品を目指して頑張りますが、前作を読んで頂けるとより楽しんで頂けるかと思いますので、良かったら前作も読んでみて下さいませ。

la poupee

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
お誕生日のプレゼント、それはとても可愛いお人形さんだった…

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

魔法少女の異世界刀匠生活

ミュート
ファンタジー
私はクアンタ。魔法少女だ。 ……終わりか、だと? 自己紹介をこれ以上続けろと言われても話す事は無い。 そうだな……私は太陽系第三惑星地球の日本秋音市に居た筈が、異世界ともいうべき別の場所に飛ばされていた。 そこでリンナという少女の打つ刀に見惚れ、彼女の弟子としてこの世界で暮らす事となるのだが、色々と諸問題に巻き込まれる事になっていく。 王族の後継問題とか、突如現れる謎の魔物と呼ばれる存在と戦う為の皇国軍へ加入しろとスカウトされたり…… 色々あるが、私はただ、刀を打つ為にやらねばならぬ事に従事するだけだ。 詳しくは、読めばわかる事だろう。――では。 ※この作品は「小説家になろう!」様、「ノベルアップ+」様でも同様の内容で公開していきます。 ※コメント等大歓迎です。何時もありがとうございます!

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

処理中です...