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第10章
ダック大臣の娘①
しおりを挟む翌朝、アルを叩き起こしに王の寝室を訪れた。
コンコン。
「アル、起きましたか?
今朝から王たる仕事が満載ですよ?」
ガチャ。
「おはようだべ、ナナシ。
丁度いい時に来たべ。
昨日までの服が洗濯に持ってかれてしまって、どれ着ていいかわかんねぇべ。
使用人呼ぼうかどうか迷ってたべ。」
「なるほど、それはこちらも都合がいいです。
中で話しながら、服を選びましょう。」
私はズイズイと中へ入った。
「まず、服を選ぶ前に今日の予定について…って、アル、パンツ落ちそうです。
パン1で寝るからゴムが緩んだんじゃないですか?
まったく。」
「おわっ、オラのモノが出そうだべ。
とりあえず下着のシャツ着るべ。」
「着ながらで構いませんので、聞いてください。
今日から少しアルと私は別行動をします。
なので、このリングの範囲を拡大して貰いたいのですが。」
「別行動?どうしてだ?」
「アルには国王としてロン村の開発事業の指揮をとって貰います。
なに、詳細の指示はちゃんと教えておきます。
私はこちらで、今までの契約書類の精査をしなければなりません。
アルには出来ない仕事でしょう。」
「だども、出来るかなぁ。
オラ、自信がねぇべ。」
「これは国王としての必要なパフォーマンスです。
誰が物事の指揮を取っているか、国民に知らしめる為のものでもあるのですよ。」
「パフォーマンスは苦手だべ。
ナナシの方がずっと華があるべ。
けんど、書類なんて読めねーし。
仕方ねぇべ。
指輪はロン村までは反応しないように設定しておくべ。
あ、戻ったらすぐに戻すだよ。
ナナシは逃げようとするから不安だべ。」
「逃げませんって。
もう。
それで結構ですから、お願いします。
あと、服装ですが、あえて作業着っぽい物を選びましょう。」
「国王が作業着だべか?
オラは好きだけんど。」
「っぽいってとこに、深い意味があるんです。
国民の関心を引くには、2つ技があります。
1つはデブラブのように不安を煽る事。
もう1つは、共感連鎖を利用するです。」
「共感連鎖…だべか?」
「そうです。
人間とは共感により喜びを感じやすいとされます。
王様が自分達と同じ感覚、そして同じ価値観を共有してると感じると、仲間意識を持ちやすくなります。
そして、ポイントはその共感により、評価が緩くなるという事です。
細かい事を厳しく問いただす事をしなくなる、それが目的の1つです。
ともすれば、味方にさえついてくれるでしょう。」
「なるほど。
確かにそっちの方がオラに向いてる。」
「あ、でも微かに高貴さも出さないといけません。
王様とはいざという時に権威を行使しなければなりませんから。
ちょっとだけ上の存在というイメージを植え付けるのです。
なので、服装は今から私が選びましょう。」
私は時間を惜しむように、テキパキとアルの服装を選んだ。
消去法で選べばいい。
何せここのデザインは8割方悪趣味だ。
つまり2割から、作業着としての機能性と上品な仕立てとデザインを選べばよい。
そうだな、色は赤のような攻撃色ではなく、柔らかな深緑あたりか。
軍服まで行かずともそれに近いデザイン。
短パンは無し。
ブーツは茶色。
「よし、これですね。
少しだけ勲章を足せば、それなりに高貴さは、かもしだせるでしょう。
アル、試着をお願いします。」
私は衣装部屋から取り出した服を、アルへと手渡した。
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