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第8章

2人の助言師④

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「ご冗談を。
 あそこの村の作物ですが、たとえ干ばつになっていなかったとしても、質が悪く、流通品として扱う価値がほとんどありませんでした。
 元々土地自体が痩せていますからね。
 地質を見たところ、大きく二層に分かれていて下部は上部より水分を含んでいると分かりました。
 そこで、せっかくなので井戸の拡張用の機械を応用して、畑のかくはんを指示し、マシな土壌を作る事を指示しました。」
「土壌を変えただけで、作物が育つなら苦労はしませんな。
 それに、あの土地に適した作物など…。」

 やはりな、そこを突いてくると思った。
 それなりに難儀な土地だが、逆に発想を転換させればいい。
 あの土壌だからこそ育ちやすく、作物を長期的に維持できるモノに。

「ですから、作物を一新するのですよ。
 デブラブ殿。
 サツキ菜をご存じですか?
 古代種の野菜ですが。」
「サツキ…菜…!まさか、アレ?」
「おや、顔色が変わりましたね。
 デブラブ殿。
 どうやら知識人のあなたは、その存在をご存知のようですね。
 この国以外でこのサツキ菜を大量生産可能な土壌がありますか?」
「サツキ菜などごく僅かな人間しか知らぬ作物。
 売り物になど。」
「そんな事はございませんよ。
 何せ、この国にはセールスパフォーマンスが大得意なお方がここにいらっしゃるではないですか。
 ね、デブラブ殿。
 このサツキ菜を知っているならなおの事。
 栄養価の高さ、薬にも加工できる万能野菜です。
 あなたの腕にかかれば他国でも大ヒット間違いなしではないですか。」
「か、買い被りすぎですよ。
 しかし、確かに利益率も高い商売になるでしょう。
 専売特許となれば、この国のウリにも出来ますゆえ。」

 デブラブもさすがにバカではないようだ。
 私の言葉の意味を深く理解して、引き際と見ていた。
 
「あ、あの話しが途中でしたが、温泉は開発しなければなりませんよね。
 間欠泉そのままは利用出来ません。
 その、財務はどうしたら。
 城の工事やら井戸掘りやら建物の改築工事でそれ程余裕はありません。
 財務大臣の私が言うのはなんですが。」

 突如、財務大臣が申し訳なさそうに話しに割って入った。

「そこですよ。
 私もそこを考えましてね。
 ここの兵士は今何をしていますか?」
「へ、兵士ですか?
 もちろん、城を守ったり警備したり、国境を守ったり。」
「さて、その人数は適切なのでしょうか?
 今や戦争は終わり、再建、復興の真っ只中。
 守る城には勇者たる王が君臨。
 また、その城には適度な装飾品や調度品があるのみ。
 国境に至っては連合国規約があるのに攻め入って来るとでも?
 連合国内からの人間には通過パスを作り、入国審査は連合国外からの入国の規制に重点を置くべきかと。」
「あ…。」
「当たり前の事を疑うんですよ。
 王政の在り方を歴代の王の真似事にしたり、他国の真似をする必要など全くないのです。
 兵士の配置を一新、温泉開発に人員を派遣する事を推奨します。
 確かに始めは経費がかかり赤字でしょうが、その後の利益を計算すればそんなもの、痛手にもなりません。」
「ええっ!あ、はい。
 え~と、確かに兵士活用ならば、経費を少しは抑えられますし、力作業も得意でしょうが。
 本当に利益は上がるのでしょうか?
 デ、デブラブ様のご意見を…。」

 財務大臣は機嫌を取るような視線をデブラブへと送った。
 
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