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第七章

干ばつの村攻略作戦②

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 この村に少しばかり希望の光がある事を理解して、村人との接触に取り掛かった。

「これはこれは王様。
 ワシはこのロン村の村長だす。
 この度は井戸の拡張してくれて、ワシらもうこの土地を手放そうとしてた矢先だで、助かっとります。」
「あ、いやどうも王様だべ…じゃない。
 コホン、あ、えー。
 ナナシ~。」

 早い!早い!バトン渡すの早すぎだろう!

「はじめまして、王の助言師のナナシです。
 あの井戸拡張工事は生活水を確保するには役立ちます。
 ただし、私の見立てでは一時的な事です。
 いずれ井戸も枯れるでしょう。
 ですから、新たなる水脈を確保した後に再度井戸を掘り、また畑の地盤のかくはん作業も行い、畑の質改善の工事を行います。」
「は、はいいい?
 何と申しましただすか?
 え、難しすぎであの、ワシらにもわかる様に。」

 あー!
 めんどくせー!
 今ので理解出来ないってか?
 言葉の選び方だな、うーむ。

「この村を盛大に改革します!」

 ひえぇえ!何口走ったんだ私は!

 捻り出した答えがこれだ。
 どっかの政治家か何かの演説か?
 言った後で私は恥ずかしくなってしまった。
 しかし、村長にはグッサリと刺さった様だった。

「本当だすか!
 そんなにワシらの村の事考えてくれただすか?
 税金も払えなくなって、村捨てるまで考えただすよ。
 えがった。本当に良がった。」

 村長は私の両手を握りしめて、ブンブンと振って喜んだ。

「期待度MAXだべな。」
「黙って下さい。
 少し後悔してるんですから。」

 耳打ちしてくるナナシを片手で払った。
 民衆というのはどうしてこうも、ビックマウス発言の方が喜ぶんだ。
 中身を見て欲しいんだが。
 簡単な事ではないのだよ。
 第一、必要経費も全くかからない訳じゃないし、財務大臣を落とす策も練らねばならない。
 まあ、デブ詐欺師に騙される程度なのだからそれほど苦ではない気もするが。

「とりあえず、ここの畑で作っていた作物や収穫量など、現在ある井戸の数、位置、教えて頂けますか?」

 私はアルに他の村人を任せて、村長に作物倉庫を案内してもらい、この村でのひと通りの作物を見せてもらった。
 どれも貧相で、虫も食わない形やら、パサパサの葉やら。
 
「この土地ではコレがやっとだすよ。」
「苗は出来ても、土壌に移すと、こうなるという事だな。
 そもそも、土壌を計算しての作物を選んでない様ですね。
 根菜が少ないのがいい証拠です。
 この土地で葉物野菜を育てるのは、かなり品種を選ばないと難しいでしょうね。」
「作物を変えるだすか?
 だけど、芋や根っこばっかりを食っては生きて行けねぇだす。」

 はあああ!
 思考しろ!
 平坦な考えを捨て去れ!
 この土地に、合った作物の生産性を上げて、ない物は少々高くても他から買い入れる!
 経済とはそうやって回していく物だ!
 自分の足元しか見ないからこういう事に!くそッ!
 とはいえ、コイツらにそれを理解させるのも時間がかかって面倒だ。
 こうなりゃ、強硬手段で一目瞭然まで持っていくまでだな。

 しかし、根菜や芋も他国で多く流通してる物しか作っておらず、質も悪い物が多かった。

 作物…硬い地盤…他国でそれ程生産量がなく流通していない物…、どこかでそれに共通する物を私は…。

 頭の中で青々とした若芽の草が風に揺れた。
 小ぶりだが、生命力に溢れた栄養価も高い草。

……サツキ菜!

 私は慌てて、肩掛けカバンに入っているサツキ菜の種を取り出した。

……これだ!

 全ての事を解決するまさに、魔法の草だ!
 

 
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