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第六章
詐欺師とナナシ⑤
しおりを挟む「『運命』にって…。」
「ま、行き当たりばったりと言えば、それまでだけんど、オラは自分の野生の勘とか、運の強さを信じてるだ。
自力でというより、今まで周りの人達が何度となく都合良く助けてくれた。
自分じゃ出来ない事も、その人達のおかげて成し遂げられたべ。
『運命の人』を嗅ぎ分ける、嗅覚はきっと今回もオラを助けてくれるべ。」
待て待て待て待て!
頭がガンガンして来たぞ。
『運命の人』って、つまりは…この、私なのかー?
いやいやいやいや!無理無理無!
もう、お腹一杯ですって!
私はままだ話しの前半だというのに、耳を塞ぎたい気分になった。
「いや、だから、そのハズレってのもあるでしょう。
百発百中なんて、ははは。」
「ハズレなんてねぇべ。
大当たりだべ。
こうやってナナシに出逢えた。」
だから、その白い歯を見せて純粋に笑うなよ。
どこから、その自信が湧いてくるんだ?
私はお前が、倒した敵だぞ。
仲間の生命を踏み台に、逃れ生き延びた、最悪の人だ。
お前の期待してる聖人なんかじゃないんだよ。
『運命に任せてみるのも悪くないですぞ。
全てが計算上にあるわけではございませぬ。
だからこそ、生きるという事は苦しくても、辛くても、結果は楽しめるのです。』
説教ジジイの戯言が耳に蘇った。
コレが、そうなのか?
それでいいのか?
なぁ、答えてくれないか。
「…私は、無能だぞ。」
振り絞って出た言葉だった。
誰よりも私は、無能なのだ。
「オラだって、無能だべ。
だから周りが助けてくれるんだべ。」
「‼︎」
「で、ナナシに出逢えた事でオラの目的はとりあえず達成したども、ナナシが大人しく、この先もオラの側で知恵を貸してくれるとも思えなかった。
オラから離れたかったべな?」
気が付いていやがったのかよ。
まったく、コイツは。
「オラにも時間はないべ。
そこで手っ取り早く、このリングを使う事にしたべ。」
あ…やっとリングの件だ。
「コレは魔術などはかかってない様に思える様ですが…。」
「そだなぁ、コレは元々デルアが方向音痴のオラの為に、機械技工師ゲンナイが作った精密機械と錬金術を組み合わせた物だ。
別れの時、破棄しようとしてたのを記念にとセットで貰ったんだべ。
まさか、こんな使い方するとは当時は思わんかったけんど。
操作や指示はオラのリングからしか出来ない。
そっちはあくまで受信して反応する。
だから魔法はかかってないし、ナナシに渡した時にリングに指示は出してなかったんだべ。」
「あ、なーるほど、ってなるかい!
外せんぞ!
早く外して下さい!」
「無理だべな。
外し方はゲンナイとデルアしか知らないべ。
しかも、2人同時じゃないと外せないべ。」
テメェ!
って事は最低あと2カ国の王と接見が必要って事かよ!
マジか?なんて事を。
グゥー。
「あ、腹が鳴ったべ。
まあ、説明はそんなところだ。
って、言い忘れたんだけんど、食事はこの部屋の隣の書斎でいつも独りで食ってたんだども。
どうする?」
「王様が独りで書斎で食事ですか?
何故です?
食堂はないんですか?
そこまで貧乏なんですか?
王の間は派手でしたが。」
「んにゃんにゃ。
食堂で食うとなると、めちゃくちゃ豪華な料理を無理して出して来るべな。
しかも、大臣やら側近の分まで。
干ばつもあるし、食料は大事にしたいんでな、書斎で食べるなら、独り分片手で食える分でこと足りるだろ。」
「アル、アル!
それ、いい事なんだが、少しだけズレてますよ。
はぁ。
いいですか、それによって職を失う者も出てきます。
バランスを考えて下さい。
一方面からではなく多方面から状況をですね……あ。」
「ほぉら。
やっぱり、ナナシはオラに必要だべ!」
ああくそッ!降参だ。
もう私はアルの手の上で転がされ始めているしゃないか。
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