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第三章

国境の谷とセクシーキャッツ⓷

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「ありゃ、もう手持ちの食糧が底をついただよ。
 こりゃ現地調達だなぁ。
 まぁ、なんとかなるべな。
 確かここいらはコウモリも飛んでた筈だぁ。」

 アルと旅を続けて3日、途中馬車にも乗せて貰いながら国境の谷の入り口まで辿り着いた。
 アルは肩掛け袋の中をガサゴソと探りながら、辺りを見回した。
 アルの言っていた通り、橋はボロボロに壊れていて垂れ下がって使い物にはならなかった。
 私は降りる場所がないか確認の為に谷底を覗き込んだ。
 確かに正午を過ぎた頃だと言うのに暗くて底がハッキリ見えない位に深く、コウモリがいそうだ。
 しかしそういう事なら、この谷底の幅は思いのほか広くはないのが推測出来る。
 いくら谷が深いとはいえ、幅があれは谷底はある程度光が差す筈だからだ。
 谷底にさえ行けば、向こう側へ渡るのはそれ程難しくない様に思えた。
 さて、軽く逆算するにここをどうにか降りたとしても、日が暮れる。
 かと言ってここで一晩過ごしても結局のところ暗い谷底では、昼間の日光の恩恵は受けられまい。
 そんな事を考えながら降る道を探すように視線を左右へと流した。
 すると、なだらかに人一人がやっと通れるくらいの幅の坂のような物が下へと続いている様に見えた。
 そしてその先にポッカリと口を開けた洞窟らしき穴が見えた。

「どうやらあの道もその先の穴も人工的なものの様ですね。
 上手くいけば反対側か、もしくは下へ降りる道があるかもしれませんよ。」

 私は断崖絶壁に張り付く様に開いた穴を指さした。
 
「本当だべ。
 あんなとこに穴が開いてるべ。
 大人1人が通れそうな大きさだべ。」

 お互いに頷くと、早速坂道の方へと向かった。
 坂の手前まで行くと、思ったより穴へ向かう坂道の幅は狭く、崖に背を這わせて歩くのが最善策と判断した。
 荷物もだいぶ減っていた事も幸いして、ゆっくりではあるが確実に穴へ向けて進む事が出来た。

 ポッカリと開いた穴の中は少し足場は広がったものの、暗すぎて様子は伺えない。
 私は肩から下げた布バックから細い短時間用の蝋燭と火種石2つを取り出した。
 床に火種石一つ置き、蝋燭の芯である紐を挟む様に上にもう一つの火種石をあてがい、位置を確認した。
 1番上の火種石を下へ向けて打ち付けると、カッツ!と音が鳴った瞬間、蝋燭の芯に火がついた。
 蝋燭の火で足元が見えるのを確認して、入り口で待つアルに声を掛けた。

「火がつきましたよ。
 奥までは照らせませんが、足元の危険は回避できるでしょう。」
「おお、流石ナナシだべ!助かるべ。
 にしても、中も両手が少し開く程度の幅だで、1列にしか歩けねぇべな。
 天井は高そうだけんど。」
「そうですね。
 コウモリの行き来も計算して掘られてるのかも知れません。
 明らかに人の手による物ですね、ホラこの先も一定のスペースのまま奥へと道が続いてます。」
「だな。
 しかも道は結構斜傾がキツいべ。
 やっぱり谷底に続いていそうだべ。」

 足元に注意しながら慎重に前に進んだ。
 道は螺旋を描く様にしたら下へと続いていた。
 何時間歩いてどのくらいの距離を進んだのか、薄明かりの中でわからなかったが、斜傾のかかった道から急に平らの道になり、谷底に着いたのであろうと予測が出来た。
 丁度、蝋燭の火も限界が来ていた頃だった道の向こうに灯りが見えていて、なおかつ開けている様に見えた。
 誰かがいるという事なのだろうか。
 
「灯りが見えるべな。
 行ってみるべ。」
「しっ!
 静かに警戒して行きましょう。
 山賊やら荒くれ者の可能性は充分にあります。」

 ゆっくりと歩幅を詰めながら、灯りのある場所へと近寄った。
 慎重に覗き込んで見たものの、誰もおらず、あちこちに松明が焚かれた大きめの広間のように平で円形のスペースが広がっていた。
 そしてその向こうから水の流れる音が耳に流れ込んできた。

「なんだべなぁここ。
 住んでる人がおるのか?
 まあ、谷底へ来れたんだから良かったべな。」
「そうですね。」

 とは言ったものの、何か違和感を感じていた。
 考えるとここに着いたのは道なりだったからだ。
 まるで、ここに誘われた様な感覚が頭から離れなかった。

 ドドン!ガラガラ!ドン!

 急な激しい地響きと落石の音が穴を抜けた向こう側から聞こえてきた。
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