手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

王子の恋の駆け引き2

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翌朝早朝、僕は朝日と共に支度を始めて、何度もブレスレットを確認して鞄に入れた。
そして…久々に天使の人形も置いてみる事にした。
何せ10体セットの小さな置物だ。
3月までに全部置いてもいいくらいだろう。
人形も鞄に突っ込んだ。

「ふう。よし!行くぞ!」
気合い十分でマンションを飛び出した。

曇り空の下を猛ダッシュで走り、学校へと到着した。

職員玄関から真っ直ぐに旧理科室に向かった。
おそらく一番早く出勤してるだろう。
校内に人の気配すらなかった。

先ずは旧理科室に入り、人形をセットしてすぐに旧理科準備室に移動した。

コートを脱いで、ソワソワしながら田宮を待った。
まだかな…。
そりゃまだだよな…早すぎだっつーの。

ところが、何故か待てど暮らせど田宮は現れなかった。
えっ…休み?イヤイヤ、違うよな。
昨夜、田宮 美月はそれらしい事何も言ってなかったし。
えっ…どうして…?

そうでなくても禁断症状末期だってのに、胸の中にモヤモヤが広がっていった。

職員の朝のミーティングの時間になり、仕方なく僕は旧理科準備室を後にした。

モヤモヤ…。
はぁ。
これで、午後まで我慢しなきゃならないハメになってしまった。
職員室に入ると清水先生が駆け寄って来た。
「うっす!昨日はお疲れさん!」
「…ああ、おはようございます。」
「何だ、何だ?その浮かないツラは?
昨日の話しは上手くいったって金井先生から聞いたぞ…って、姫か?」
察しのいい事で。
「まぁ、そんなところですよ。」
「顔に思い切り出てんぞ。
生徒に会う前に何とかしろ!」
「はい。わかってますよ。はぁ。」

わかっちゃいるけどさ…。
限界MAXなんだよ~!禁断症状末期なんだよ!
顔見たい!声聞きたい!あーもうキスしたい!
「清水先生…その今日、来てますよね。
その…姫…。」
「ん?ああ、来てるだろ。
休みの連絡は入ってないし。」
「はあ。」
「んだよ!来てるのにその顔!
何やってんだよお前は。」
「すいません。切り替えます。」
来てるのに…だから問題なんだよ!
これじゃ、僕が焦らしてるんじゃなくって、田宮が僕を焦らしてるみたいじゃないか!

結局、午前中は1度田宮には会えなかった。
清水先生はちゃんと教室に居たって言うし…。

不安の中職員室から旧理科準備室に移動中、昼休みに入ってすぐに携帯の電話着信が来た。
ブルルルルブルルルル。

牧田だ…!
「はい!武本だ!」
「およ、随分勢いあんのね~。
茉麻とは大違い。」
えっ…田宮と大違い…?
「何が違うんだよ。」
「今日の真朝はねー、機嫌良かったってかルンルンだよぉ~。」
「ルンルン…?古い言い方するなぁ。」
「てっきり武ちゃんと、何かあったのかなーって思ったのに。」
僕じゃない…金井先生かな…?

「金井先生とデートでもしたんじゃないかな。」
予想はしてたさ…。
せっかくの連休だしデートくらい…。
「それはないみたいよん。
休み中は、お姉さんと居たって言ってたし。」
「あっ!」
そうか…あの喫茶店の事を、田宮 美月が話したのか?
どこまで話したのか、わからないが、きっと謝罪して貰ったんだ…。
姉からの、自発的な謝罪に喜んでいるんだ。

「…何うんうん、1人で納得しちゃってんのよぉ。」
拗ねた声が電話の向こう側から流れて来る。
「あーすまん、すまん。
でも、機嫌がいいなら良かった。
休みから今日はまだ、会ってなかったから。」
「じゃあ、午後の授業でまってるよん!
ちゃんと、シカト出来るかなぁ~?ププッ。」
「からかうな!からかうな!じゃあな!」
プッ。
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