手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

男の子達の恋話会議5

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彼女の気持ちが欲しいと、ずっと思っていた。
僕の事を見ていて欲しいと…そして…その反面、絶対に叶わないんだと諦めていた。

実感が湧かない…本当なのか?
でも、本人が気が付いてない場合どうしたら…?
「どうしょう…。」

情けない僕の言葉に2人が固まった。
「何が?ってか何を今更言ってんの?武本っちゃん!」
「それって…本人が気が付いてないからですか?」
安東は落ち着いて言った。
久瀬はこめかみに指を付けて考えながら呟き始めた。
「あそうか。そこなんだよな。
難しいっちゃ難しいな…。
普通の恋愛ならここで、押せって思うけど…。
タイミングとかあるし…。
時間かけなきゃダメかな…。
よし!決めた!」
ん?何かに閃いたようだ。

「バレンタインデー、逆手に取るしかないっしょ。」
「はあ?」
逆手に取るしかない?
何するつもりだ…おいいい?

「押してダメなら引いてみな!
バレンタインデー取られて、いじけたフリしろよ!一旦、田宮から距離置けよ!」
「いじけたフリ!?」
「なるほど!田宮さんの中の武本先生の存在を増幅させよって訳だな!」
「ええ~~!せっかく彼女の気持ちが、こっちに向きかけてるのに?」
そんな、もったいない事すんのか?

久瀬が僕の耳元に顔を近づけて囁いた。
「武本っちゃん…。
きっと…これは運命だ!」
「えっ…。」
「俺が望んでた事が現実味を帯びて来たんだ!
田宮を救える!」
「お前…何言ってんだ?」
久瀬の言ってる事がサッパリわからない。
久瀬が望んでた事…それは…田宮を死の世界から救う事…。

死の世界から救うには…生きる理由が必要なはずだ…生きる理由が……。
生きる理由って何だ?
彼女が生きたいと思う理由…理由は……僕!?

「うあ~~ないって!
違うだろそれは…だって!ええ~~!!
想像すらつかねぇ~!
無理!無理!無理だって!」
思わず大声を上げ、頭を抱えながら2人から遠ざかった。
もう頭はパニック状態だった。
そんな僕を横目で見ながら、久瀬は冷静に言った。
「俺は、元々そのつもりだったからね。
願ったり叶ったりだ。
その為に苦労したよ~武本っちゃんがヘタレすぎんだものね。」

僕は壁に張り付いて、現実を受け止めないようにしていた。
頭が回らない…。ぐちゃぐちゃで…何も考えられない…。
固まったまま、動かない僕に久瀬が近づいて来た。

「ま、とにかく。
1つ1つこなして行こう。
まずは、明日から田宮シカト作戦な。
……てな訳で…いずれ田宮に見せる前に、チェックします!」
久瀬君がズンズンと僕に近づいて来た。
「?」
「だって!武本っちゃん、合宿でも風呂一緒に入ってくれなかったじゃん?」
話しが急カーブしてないか?
チェックって何だ?何のチェック…風呂?

カチャカチャ!
「!!」
だー!
久瀬が俺のベルトを外し始めた!
「こらー!何でこうなる!?
チェックって…田宮が見る前にって…!?」
僕は久瀬を引き剥がそうとした。
「だってさ~。
巨根とか粗チンだったらダメかなって。」
粗チンって…!粗末ってか?
「安東~~!止めろ!こいつを止めろ!」
「んん~~。ちょっと興味あるな…。」
おいいい!何言ってんの?安東!
お前の常識どこ行ったんだよ!
「大人しくしろって!見るだけじゃん!」
「わかった!わかったから無理矢理はやめろよ!見せるから!」

学生のノリってやつはどうしてこうなんだよ!
大きさなんて大して関係ないっつーの!
根負けした僕は部屋の隅で何故か、股間を2人に見せなきゃならなくなった。

「んん?これ…粗チンか?」
「久瀬~~お前のと比べたらみんな粗チンだって!僕もこれくらいだぞ。」
「…テメェらも見せろ!僕ばっかだろ!」
「やめた方がいいですよ。
落ち込みますから…久瀬の見ると。」
「ええ~!喜んで見せるよ!ホラ!」
久瀬が股間を全開にした。

「これは!!」
安東と僕はその場に膝をついてうな垂れた。
ご立派すぎだろ~。
16歳でそれかよ…。完敗…。
物凄い敗北感に襲われた…。
「なんで、ちょっと勃ってんだよ!久瀬!」
安東も引いてる。
「いや…、武本っちゃんと先輩に見られて、少し興奮したかも。テヘッ。」
テヘッ…じゃねーよ!テヘッじゃ!

そんな、こんなでバレンタインデーの敗北感で落ち込んでたはずの僕は、一転して優位に立っている事が判明した。
…でも…シカトって…無視って…僕の方が我慢出来るかどうかだぞ~!
下手したら、《勉強会》突入!…とかにならないかな。
一抹の不安が頭をよぎった。

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