手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

王子の町娘奪還作戦3

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「どうします?車に乗り込まれたら…。」
僕は不安になった。
「安心しろ。
おそらく川を挟んだ向こう側へ橋を渡って行くはずだ。」
「なんで、わかるんですか?」
「ラブホテル街なんだよ。」
「ひぇっ!?ラブ…ホテル街?」
「なんだよ。
お前、彼女いた時行かなかったのか?」
「行ってませんよ!」
「結構色んな種類のホテルあるぞ!」
「何でそんなに詳しいんですか!」
「バカ!違ぇよ!メグちゃんとだよ!」
「…へ~~。」
まぁ5人もいれば…1人や2人は…。
「何だよ!その目は!完全に疑ってんだろ!」
「いえ…そんな…ははは~。」
別な意味で引いてました。
「乾いた笑いをするな!」

「参考がてら、後で下見して来いよ。」
いきなり何言い出すこのジジイ!
「下見…って!何で!?」
「そりゃ、田宮とそのうち行くんだろ。」
「ばっ…バカでしょ!あんた!」
そんなやり取りをしながらも、僕等は葉月を見失わないようにしっかり付いていった。

清水先生の言う通り…2人は橋を渡ってホテル街へと向かっていった。

僕と清水先生は猛ダッシュで橋を渡って、葉月を見失わないようにした。
金井先生とも橋を渡ったところで合流した。
「そろそろですよ。
武本先生、準備しておいて下さい。」
「はい。任せておいて下さい。」
僕は先頭に立って、2人を追った。
カメラの準備も万端だ!

2人はあるホテル前で止まった。
男が入ろうとして、葉月が躊躇した。
無理やり腕を掴んで引き入れようとし始めた。

パシャ!パシャ!パシャ!
僕はフラッシュを焚いて、思い切りカメラの連写ボタンを押した。
男が怯んだ拍子に、金井先生と清水先生が男を取り押さえた。
「葉月!こっちに来い!」
僕は葉月の手を引っ張った。

金井先生と清水先生は男を取り押さえながら一喝した。
「今後、ウチの生徒に手を出したら一生後悔する事になりますよ。」
清水先生は男のポケットから、名刺を取り出した。
「あんたの個人情報貰うよ。
もう2度と女子高生なんて狙うなよ。
大怪我するぞ。」
男は観念して暴れるのをやめた。

「ありがとうございます。
やっぱり来てくれたんですね。
ごめんなさい。
バカな事して…怖くて1人では抜け出せなくて。」
「今はいい。
後でゆっくり聞かせて貰うから。」
僕の袖にしがみつく葉月の頭を撫でた。

金井先生と清水先生は男の情報を手に入れて、追い返した。

とりあえず、僕等は地下駐車場に戻り、金井先生の車に乗った。
「今日のところは家に帰って、ぐっすり休め。
話しは月曜日で構わない。」
清水先生が葉月に優しく言った。
「はい。ありがとうございます。」
「家まで送りますよ。
葉月の家を教えて下さい。」
金井先生は葉月から家の場所を聞いて、先に家に送った。

葉月を家に無事に送り帰した僕等は、昨日の呑み会もあり、脱力感でグッタリした。
金井先生が疲れた顔の僕と清水先生にいたわりの言葉を掛けてくれた。
「送ります。
明日の日曜日はお互い、充分に休んで下さい。
月曜日に何があるかわかりませんからね。」


金井先生にマンションまで送って貰った僕は、風呂に入る元気もなく、パジャマに着替えると、そのまま死んだように深い眠りについた。


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