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2学期
哀しみの道化師その1
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「あ~~行きたくね~~!」
折角の土曜日を何で久瀬や金井先生と過ごさなきゃならないんだよ!
拒否出来ないけど…拒否してぇ~!
ロンTにカーディガンとデニムのラフな格好で僕は頭を抱えた。
「そうだ…。ブレスレットして行こう。」
少しは勇気が出るかもしれない。
田宮とお揃いの…イニシャル入り。
僕はブレスレットを付けて、一呼吸して家を出る準備をした。
紺色のスーツ姿の金井先生が迎えに来て僕は車に同乗した。
「どうも。元気なさそうですね。」
「はははは。」
乾いた笑いでごまかした。
元気出るわけないだろ!断頭台登る気分だよこっちは!
「金井先生あっと…、田宮とはどんな感じですか?」
「気になりますか?でも、言いませんよ。2人の秘密ですから。」
「はは。そうですよね~。」
何だよ!その勝ち誇った顔は!
なんかムカつく!
「武本先生の方が秘密多そうですしね。」
チクリと釘を刺された。
くそっ!その通りだよ!まったく。
僕は無意識にブレスレットに手を当てていた。
久瀬の家に着くと、自動で門が開き、駐車場に車を誘導された。
「やっほ~。ようこそ。」
久瀬が白のワイシャツを素肌に着て前全開し、デニムを履いたなんかエロさを感じる格好で出迎えてくれた。
「お前…その格好…。」
「セクシーでしよ。どう?ムラムラ来た?」
「来るわけねぇ~!」
ズン!
ボディに一発食らわした。
「もうっ!武本っちゃんは何で俺にだけSっ気出すかな!ドMのくせに!」
「だから!誰がドMなんだよ!」
「いやいや、僕から見ても武本先生はMですよ。」
何故追い討ちをかけるんだよ!金井!
とにかく、3人は久瀬の部屋に移動した。
僕はソファの端でなるべく存在感を消そうとしていた。
久瀬と金井先生は向かい合ってソファに座った。
「武本先生、そうビクつかないで下さい。話しになりませんから。」
「話しって、どうせ田宮絡みだろ。
武本っちゃんメインで話してくれなきゃ!」
こいつらぁ!絶対イジってるだけだよ!
「武本先生が打ち解けるまで、久瀬君、君と田宮の関係性を詳しく聞きたいんだけど…どうかな?」
「あんん?詳しくったってね。
小学生の同級生、勉強会したお友達だよ。」
久瀬は金井先生を警戒してるのか詳しく話さない。
「真朝君のファンなんだって?
友達にファンっておかしな話しですよ。」
「あのさ…金井先生。
俺さ武本派なんだよねー。悪いけど。」
ば!馬鹿!何変な事口走ってんだよ!
「そこが、解せないですよ。
久瀬君と武本先生の接点はあるようで無いですよね。
なのに何故そんなに…。」
「そう言われてもね~。
そこら変の感覚は田宮譲りなんですよ。
口で説明するもんじゃないんですよ。」
金井先生の質問をスイスイかわす…やっぱり久瀬はただ者じゃない。
「久瀬君!僕は彼女を助けたい。
この気持ちは真剣なんだ。」
金井先生の表情が感情的に変った。
「助ける…?
そもそも、その発想が気に食わないね。
田宮が可哀想か?
家族が異常か?
それはどの基準で言ってるのかな?」
「久瀬君。君の思考はやはり真朝君に似ているね。」
「似てるだけだよ。
田宮程の能力は僕は持ってないんだよ。
真似事に過ぎない。」
「能力と言ったね。」
金井先生がほくそえんだ。
「ちぇっ。だから金井先生は好きになれないんだ。」
久瀬の表情が変った。真剣に。
「君は真朝君から何かを与えられてる。
それも小学校の時期に。
勉強会…おそらくそれが秘密なんだね。」
すげぇ。勉強会の話まであっと言う間に辿り着いた。
「あ~~。ハイハイその通り。
勉強会は特別な物だよ。
武本っちゃんには話してるけど…。
死にたい子供の集まりだった。
自殺願望の子供のね。」
「なるほど…。
でも、君も真朝君も死んではいない。
真朝君が何かをしたんだね。」
「したよ。」
「何をしたんだ。真朝君は。」
「内容については無理だよ。
説明しろと言われてもね。
個人情報もあるし。
あれは本来、体験しなきゃわからないし、何度も回数を必要とする。
唯一言える事は、田宮は話しを引き出す才能があるって事さ。」
「話しを引き出す…。」
「そう…深層心理の深くまでの話しをね。」
「なかなかだね。
その話しは…カウンセラーの僕の興味を掻き立てるね。」
「そういう態度が俺は気に食わないね。
金井先生。
あんたやっぱりダメだわ。
大事なところ見えてないよ。」
「武本先生には見えてるのかい?」
「さあね。
ただ傷のない人間がいくら相手をいたわろうと、その痛みは理解出来ないんですよ。」
「なるほど…武本先生には真朝君並みの傷があると言いたいんだね。」
「!!」
ちょ…ちょっと待て!田宮並みの…傷!?
記憶の欠落…。それが…。
「頼むから…もっと詳しく教えて欲しい。勉強会とは何だったんだ?
彼女を知りたいんだよ。僕は!」
金井先生は久瀬に食いついた。
久瀬は呆れた様子で溜息をついていた。
コンコン。
急にドアをノックする音がした。
「和也様…麗華様がお戻りになりました。」
執事の1人が久瀬に声を掛けた。
「はあ?夜のはずだろ!」
「早く…和也様にお会いしたいと…急遽…。」
「誰だよ!情報漏らしてる奴は!
ったく…間の悪い…。
ちょっと待ってろ!」
久瀬の態度がいつになくピリピリしていた。
「…悪い2人共、1時間くらい席を外すけど、ゆっくりして行ってくれ。
…金井先生。わかったよ。
1時間後に本当の勉強会の意味…教えてやるよ。
目の当たりにした方が説得力あるだろう。」
久瀬の表情は硬く、まるで別人のようだった。
そして、そのままドアの向こうへ消えて行った。
折角の土曜日を何で久瀬や金井先生と過ごさなきゃならないんだよ!
拒否出来ないけど…拒否してぇ~!
ロンTにカーディガンとデニムのラフな格好で僕は頭を抱えた。
「そうだ…。ブレスレットして行こう。」
少しは勇気が出るかもしれない。
田宮とお揃いの…イニシャル入り。
僕はブレスレットを付けて、一呼吸して家を出る準備をした。
紺色のスーツ姿の金井先生が迎えに来て僕は車に同乗した。
「どうも。元気なさそうですね。」
「はははは。」
乾いた笑いでごまかした。
元気出るわけないだろ!断頭台登る気分だよこっちは!
「金井先生あっと…、田宮とはどんな感じですか?」
「気になりますか?でも、言いませんよ。2人の秘密ですから。」
「はは。そうですよね~。」
何だよ!その勝ち誇った顔は!
なんかムカつく!
「武本先生の方が秘密多そうですしね。」
チクリと釘を刺された。
くそっ!その通りだよ!まったく。
僕は無意識にブレスレットに手を当てていた。
久瀬の家に着くと、自動で門が開き、駐車場に車を誘導された。
「やっほ~。ようこそ。」
久瀬が白のワイシャツを素肌に着て前全開し、デニムを履いたなんかエロさを感じる格好で出迎えてくれた。
「お前…その格好…。」
「セクシーでしよ。どう?ムラムラ来た?」
「来るわけねぇ~!」
ズン!
ボディに一発食らわした。
「もうっ!武本っちゃんは何で俺にだけSっ気出すかな!ドMのくせに!」
「だから!誰がドMなんだよ!」
「いやいや、僕から見ても武本先生はMですよ。」
何故追い討ちをかけるんだよ!金井!
とにかく、3人は久瀬の部屋に移動した。
僕はソファの端でなるべく存在感を消そうとしていた。
久瀬と金井先生は向かい合ってソファに座った。
「武本先生、そうビクつかないで下さい。話しになりませんから。」
「話しって、どうせ田宮絡みだろ。
武本っちゃんメインで話してくれなきゃ!」
こいつらぁ!絶対イジってるだけだよ!
「武本先生が打ち解けるまで、久瀬君、君と田宮の関係性を詳しく聞きたいんだけど…どうかな?」
「あんん?詳しくったってね。
小学生の同級生、勉強会したお友達だよ。」
久瀬は金井先生を警戒してるのか詳しく話さない。
「真朝君のファンなんだって?
友達にファンっておかしな話しですよ。」
「あのさ…金井先生。
俺さ武本派なんだよねー。悪いけど。」
ば!馬鹿!何変な事口走ってんだよ!
「そこが、解せないですよ。
久瀬君と武本先生の接点はあるようで無いですよね。
なのに何故そんなに…。」
「そう言われてもね~。
そこら変の感覚は田宮譲りなんですよ。
口で説明するもんじゃないんですよ。」
金井先生の質問をスイスイかわす…やっぱり久瀬はただ者じゃない。
「久瀬君!僕は彼女を助けたい。
この気持ちは真剣なんだ。」
金井先生の表情が感情的に変った。
「助ける…?
そもそも、その発想が気に食わないね。
田宮が可哀想か?
家族が異常か?
それはどの基準で言ってるのかな?」
「久瀬君。君の思考はやはり真朝君に似ているね。」
「似てるだけだよ。
田宮程の能力は僕は持ってないんだよ。
真似事に過ぎない。」
「能力と言ったね。」
金井先生がほくそえんだ。
「ちぇっ。だから金井先生は好きになれないんだ。」
久瀬の表情が変った。真剣に。
「君は真朝君から何かを与えられてる。
それも小学校の時期に。
勉強会…おそらくそれが秘密なんだね。」
すげぇ。勉強会の話まであっと言う間に辿り着いた。
「あ~~。ハイハイその通り。
勉強会は特別な物だよ。
武本っちゃんには話してるけど…。
死にたい子供の集まりだった。
自殺願望の子供のね。」
「なるほど…。
でも、君も真朝君も死んではいない。
真朝君が何かをしたんだね。」
「したよ。」
「何をしたんだ。真朝君は。」
「内容については無理だよ。
説明しろと言われてもね。
個人情報もあるし。
あれは本来、体験しなきゃわからないし、何度も回数を必要とする。
唯一言える事は、田宮は話しを引き出す才能があるって事さ。」
「話しを引き出す…。」
「そう…深層心理の深くまでの話しをね。」
「なかなかだね。
その話しは…カウンセラーの僕の興味を掻き立てるね。」
「そういう態度が俺は気に食わないね。
金井先生。
あんたやっぱりダメだわ。
大事なところ見えてないよ。」
「武本先生には見えてるのかい?」
「さあね。
ただ傷のない人間がいくら相手をいたわろうと、その痛みは理解出来ないんですよ。」
「なるほど…武本先生には真朝君並みの傷があると言いたいんだね。」
「!!」
ちょ…ちょっと待て!田宮並みの…傷!?
記憶の欠落…。それが…。
「頼むから…もっと詳しく教えて欲しい。勉強会とは何だったんだ?
彼女を知りたいんだよ。僕は!」
金井先生は久瀬に食いついた。
久瀬は呆れた様子で溜息をついていた。
コンコン。
急にドアをノックする音がした。
「和也様…麗華様がお戻りになりました。」
執事の1人が久瀬に声を掛けた。
「はあ?夜のはずだろ!」
「早く…和也様にお会いしたいと…急遽…。」
「誰だよ!情報漏らしてる奴は!
ったく…間の悪い…。
ちょっと待ってろ!」
久瀬の態度がいつになくピリピリしていた。
「…悪い2人共、1時間くらい席を外すけど、ゆっくりして行ってくれ。
…金井先生。わかったよ。
1時間後に本当の勉強会の意味…教えてやるよ。
目の当たりにした方が説得力あるだろう。」
久瀬の表情は硬く、まるで別人のようだった。
そして、そのままドアの向こうへ消えて行った。
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