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2学期
彼女を巡る牧師との攻防
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清水先生はパイプイスに腰掛けた。
僕はゴクリと唾を飲んだ。
「言ったはずだよな。田宮に深入りするなって。」
「僕だって…どうしても彼女に確認しなければならない事があるんです。」
「あいつの周りはまともじゃないんだ!あいつを守る気がないなら諦めろ!」
「母親と田宮美月の事ですね!」
清水先生の顔が更に鬼の様に変化した。
「お前…どこまで…。
そこまで嗅ぎつけたんなら解るだろう。
下手に動けば、あいつはメチャクチャにされる…。」
「僕だって…彼女を守ります…僕のやり方で…彼女を守ります!」
バン!清水先生が机を叩いた。
「担任の俺がこんだけ苦労してんだぞ!」
「わかってますよンな事!
…誰よりも判ってますよ。
でも僕は…。」
僕は…彼女を失いたくない…!!
「ったく!勝手にしろ!邪魔だけはするな!いいな!」
清水先生も本気だけど僕だって本気だ。
彼女を守らなきゃ…魔女の手から救い出さなければ…。
僕は生徒指導室を出ると、旧理科準備室に急いだ、田宮美月が何か仕掛けないか心配だった。
これからの僕の目的は、彼女を田宮美月から守る事になるんだ。
ESS教室の前を通ると、ふと人の気配がした。
ドアノブを回してみると、開いていた。
岸先生?ガサゴソと人のいる音がした。
「先生、んんぅ。」
「愛してるよ、ゆかりん。」
なっ!何やってんだ!岸~~!
僕は予想外の光景に動揺した。
岸先生が女生徒と教室内でキスやらそれ以上をやっていた。
マジか~!!確か相手は3年の佐藤ゆかり!
ってか、教室でやるなよ!見つかったら懲戒免職だぞ!
あまりの光景にクラクラしてきた僕は、気づかれないように、そっとドアを閉めた。
なんなんだ、この立て続けのイベントはぁ!
魔女との対決で疲労困ぱいだってのに。
とりあえず、岸先生の件は後回しだ。
先を急がなきゃ…。
「はぁ。なんか一気に老けそう。」
心の声が漏れ出した。
旧理科準備室へ入って、僕は机の小瓶からフルーツキャンディを1つ取り出して口に入れた。
頭が上手く回って無かった。
一呼吸おいて、中扉の小窓を覗く。
田宮は絵の仕上げが最終段階に入っているのか、少し描いては眺め考えている。
身体を斜めに見たり遠くから見たりと何度か角度を変えて見ていたが、煮詰まったのか筆を置いた。
すると、奥から何やらゴソゴソ大きな物を取り出した。
「あれ?牧田が着てた着ぐるみ…。」
映像研究部で撮影に使用した半魚人の着ぐるみだった。
おもむろに、着ぐるみを着だした。
えっ?何?
着ぐるみは牧田サイズの為、彼女では足が長く出てしまった。
「ぷはっ。なんだそれ。」
彼女は実験台の上にそのまま腰掛けると、足をバタつかせ始めた。
お茶目な姿だった。
いつものどこか遠い彼女じゃなく近くに感じた。
可愛い奴…。
彼女に日に日に…いや…1秒ごとに惹かれていく。
ちょっとした仕草さえ愛おしい…。
壁1つ挟んでも、彼女をこんなにも近くに感じた。
僕は緩みっぱなしの顔で中扉に寄りかかっていた。
リラックス出来たので、少し落ち着いて考える事にした。
清水先生のように担任じゃないが、出来る限り彼女の周りを見張っていよう。
放課後もなるべく、ここに来て田宮美月が何かしないか注意しないと。
清水先生は田宮の事を真剣に心配してる。
僕にキツイ態度を取らなければならないのは仕方ない。
香苗との婚約は破棄しよう。
今度ちゃんと納得させなきゃ。
僕の心はもう彼女しか見えていないのだから。
葉月もかなり面倒な存在だ。
特に僕が田宮を好きなのがバレたら…。
感情を顔に出さないように気をつけないと。
…岸先生は…まずいよな…多分…。
1度話した方がいいかも、大事になってからじゃ遅い。
でも…気持ちは…解る…解るけど…。
あの様子だと相手の佐藤ゆかりも本気で、岸先生の事を…。
『ダメですよ…先生…間違えちゃ。』
田宮のあれは本気で言ったのか…?それともワザと僕を遠ざける為に…。
あのキスは本当に彼女への想いだったのに…。
確かに酔ってた…でも…だからこそ、自分の本心がさらけ出された…。
あんなにも、欲しくてたまらない気持ちになったのは初めてだったのに…。
…僕は少しだけ傷ついていた。
彼女が僕の事を好きでいてくれたら、僕は…。
いつものように、夜に彼女は帰って行った。
本当なら送って行きたいくらいだが、教師の立場上それは出来ない。
かと言って、後をつけるなんてストーカーみたいな真似も…。
「なんで、僕は教師なんだよ…。」
同級生なら携帯で連絡を取り合う事も可能なのに…。
同級生…。同級生…!
久瀬は、協力してくれるだろうか?
いや、まて早まるな。
久瀬に借りを作るってのは…。
僕は迷ったあげく、久瀬に電話を掛けた。
「ワォ!武本っちゃんから電話してくれるなんて嬉しい!」
「要件だけ言うぞ、田宮の身を守りたい。彼女の行動を把握したい。
ちゃんと家に着いたか確認を取って欲しいんだ。」
「な~んだ。やっと気づいたのか。遅っ。」
「なんのことだ?」
「武本っちゃんの携帯から調べられるようにしといたんだよ、この前酔い潰れてる間に。アプリ増えてるだろ。
GPS探索っての。
田宮の携帯場所の探知が出来るから。」
「お前、何勝手に…。」
「多分、田宮美月がいるとなると、必要じゃないかって思っててね。
役立つ男でしょ俺。」
とにかく、僕は久瀬にアプリの使い方を簡単な聞いた。
…!…!何か、電話の向こうに声がした。
「久瀬、誰かいるのか?邪魔して悪かったな。」
「あぁ、今、エッチの最中で…。」
プチッ。電話を切った。
その後、僕は彼女が無事帰宅しているのを確認出来た。
なんだかんだ言っても、久瀬はやつばりいい奴だな。性欲旺盛だけど…。
僕はゴクリと唾を飲んだ。
「言ったはずだよな。田宮に深入りするなって。」
「僕だって…どうしても彼女に確認しなければならない事があるんです。」
「あいつの周りはまともじゃないんだ!あいつを守る気がないなら諦めろ!」
「母親と田宮美月の事ですね!」
清水先生の顔が更に鬼の様に変化した。
「お前…どこまで…。
そこまで嗅ぎつけたんなら解るだろう。
下手に動けば、あいつはメチャクチャにされる…。」
「僕だって…彼女を守ります…僕のやり方で…彼女を守ります!」
バン!清水先生が机を叩いた。
「担任の俺がこんだけ苦労してんだぞ!」
「わかってますよンな事!
…誰よりも判ってますよ。
でも僕は…。」
僕は…彼女を失いたくない…!!
「ったく!勝手にしろ!邪魔だけはするな!いいな!」
清水先生も本気だけど僕だって本気だ。
彼女を守らなきゃ…魔女の手から救い出さなければ…。
僕は生徒指導室を出ると、旧理科準備室に急いだ、田宮美月が何か仕掛けないか心配だった。
これからの僕の目的は、彼女を田宮美月から守る事になるんだ。
ESS教室の前を通ると、ふと人の気配がした。
ドアノブを回してみると、開いていた。
岸先生?ガサゴソと人のいる音がした。
「先生、んんぅ。」
「愛してるよ、ゆかりん。」
なっ!何やってんだ!岸~~!
僕は予想外の光景に動揺した。
岸先生が女生徒と教室内でキスやらそれ以上をやっていた。
マジか~!!確か相手は3年の佐藤ゆかり!
ってか、教室でやるなよ!見つかったら懲戒免職だぞ!
あまりの光景にクラクラしてきた僕は、気づかれないように、そっとドアを閉めた。
なんなんだ、この立て続けのイベントはぁ!
魔女との対決で疲労困ぱいだってのに。
とりあえず、岸先生の件は後回しだ。
先を急がなきゃ…。
「はぁ。なんか一気に老けそう。」
心の声が漏れ出した。
旧理科準備室へ入って、僕は机の小瓶からフルーツキャンディを1つ取り出して口に入れた。
頭が上手く回って無かった。
一呼吸おいて、中扉の小窓を覗く。
田宮は絵の仕上げが最終段階に入っているのか、少し描いては眺め考えている。
身体を斜めに見たり遠くから見たりと何度か角度を変えて見ていたが、煮詰まったのか筆を置いた。
すると、奥から何やらゴソゴソ大きな物を取り出した。
「あれ?牧田が着てた着ぐるみ…。」
映像研究部で撮影に使用した半魚人の着ぐるみだった。
おもむろに、着ぐるみを着だした。
えっ?何?
着ぐるみは牧田サイズの為、彼女では足が長く出てしまった。
「ぷはっ。なんだそれ。」
彼女は実験台の上にそのまま腰掛けると、足をバタつかせ始めた。
お茶目な姿だった。
いつものどこか遠い彼女じゃなく近くに感じた。
可愛い奴…。
彼女に日に日に…いや…1秒ごとに惹かれていく。
ちょっとした仕草さえ愛おしい…。
壁1つ挟んでも、彼女をこんなにも近くに感じた。
僕は緩みっぱなしの顔で中扉に寄りかかっていた。
リラックス出来たので、少し落ち着いて考える事にした。
清水先生のように担任じゃないが、出来る限り彼女の周りを見張っていよう。
放課後もなるべく、ここに来て田宮美月が何かしないか注意しないと。
清水先生は田宮の事を真剣に心配してる。
僕にキツイ態度を取らなければならないのは仕方ない。
香苗との婚約は破棄しよう。
今度ちゃんと納得させなきゃ。
僕の心はもう彼女しか見えていないのだから。
葉月もかなり面倒な存在だ。
特に僕が田宮を好きなのがバレたら…。
感情を顔に出さないように気をつけないと。
…岸先生は…まずいよな…多分…。
1度話した方がいいかも、大事になってからじゃ遅い。
でも…気持ちは…解る…解るけど…。
あの様子だと相手の佐藤ゆかりも本気で、岸先生の事を…。
『ダメですよ…先生…間違えちゃ。』
田宮のあれは本気で言ったのか…?それともワザと僕を遠ざける為に…。
あのキスは本当に彼女への想いだったのに…。
確かに酔ってた…でも…だからこそ、自分の本心がさらけ出された…。
あんなにも、欲しくてたまらない気持ちになったのは初めてだったのに…。
…僕は少しだけ傷ついていた。
彼女が僕の事を好きでいてくれたら、僕は…。
いつものように、夜に彼女は帰って行った。
本当なら送って行きたいくらいだが、教師の立場上それは出来ない。
かと言って、後をつけるなんてストーカーみたいな真似も…。
「なんで、僕は教師なんだよ…。」
同級生なら携帯で連絡を取り合う事も可能なのに…。
同級生…。同級生…!
久瀬は、協力してくれるだろうか?
いや、まて早まるな。
久瀬に借りを作るってのは…。
僕は迷ったあげく、久瀬に電話を掛けた。
「ワォ!武本っちゃんから電話してくれるなんて嬉しい!」
「要件だけ言うぞ、田宮の身を守りたい。彼女の行動を把握したい。
ちゃんと家に着いたか確認を取って欲しいんだ。」
「な~んだ。やっと気づいたのか。遅っ。」
「なんのことだ?」
「武本っちゃんの携帯から調べられるようにしといたんだよ、この前酔い潰れてる間に。アプリ増えてるだろ。
GPS探索っての。
田宮の携帯場所の探知が出来るから。」
「お前、何勝手に…。」
「多分、田宮美月がいるとなると、必要じゃないかって思っててね。
役立つ男でしょ俺。」
とにかく、僕は久瀬にアプリの使い方を簡単な聞いた。
…!…!何か、電話の向こうに声がした。
「久瀬、誰かいるのか?邪魔して悪かったな。」
「あぁ、今、エッチの最中で…。」
プチッ。電話を切った。
その後、僕は彼女が無事帰宅しているのを確認出来た。
なんだかんだ言っても、久瀬はやつばりいい奴だな。性欲旺盛だけど…。
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