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保健室同盟(仮)と前期図書委員

第28話

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「何がおかしいの?神谷君。」

 土屋先輩はトボケ顔で横を向いた。

「当事者だよ!事件の当事者!
 不思議な現象が起こった当事者が、口を紡ぐなんて、隠し事してますって言ってるようなもんだ。」

 神谷先輩のセリフに少し不快感な表情を浮かべた高橋先輩が、反論した。

「それは…どうかしら…。
 結局、図書委員の子達は怪人について迷惑していても利益は得てないはずです。
 わざわざ、自分達で散らかしてから片付けるなんて、意味がないんじゃないかしら。
 本の修復も細かな作業で大変だし。
 最初の事件の鍵を開けた1年生は、茫然自失で重谷君が駆け付けるまで、腰を抜かしてたらしいわ。」
「鍵を開けたのは朝早くですか?」
「ええ。
 年明けだったし、図書室開放の前準備もあったから。
 重谷君も1年の指導がてら早くに登校していたのよ。
 後から、その事件の話しを直接重谷君から聞いたから間違いないわ。」
「そうですか。
 高橋先輩には怪人の心当たりは、全く無いんですか?」
「無いわ。
 と、言うより…どういう理由で図書室を荒らすのか、全く理解出来ないんですもの。」
「そうですよね。
  …つかぬ事をお聞きしますが、図書室内に動物が出入りした事はありませんか?
 そうですね…例えば…白っぽい感じの。」

 神谷先輩は高橋先輩の言動の変化を探るように問いかけた。

「動物?
 さあ、見た事無いわね。
 そもそも図書室に動物が出入りしていたら問題じゃないかしら。
 変な事聞くのね。」
「すみません。参考までに。」

 高橋先輩は《動物》というキーワードに何ら、特別な反応は示さなかった。

「実はね、私…動物苦手なの。
 でも、神部君や重谷君は結構生き物好きだったわ。
 図書室に大きなカマキリが出た時に、2人は喜んでたもの。」
「では…話しにくいかも知れませんが、神部先輩の状況についてお聞きします。
 その…お付き合いしていたとか…怪人事件の後で疎遠になってると、聞きました。
 関係ありますか?」
「図書室の怪人事件とは、単なる時期が偶然重なっただけかしら。
 あ…でも…。」
「でも⁉︎何です?
 何か 心当たりがありますか?」
「いえ。
 そういうのではなくて。
 入院してから、重谷君との仲は更に良くなったみたいに見えたわ。
 重谷君は神部君の為に、自分の時間を割いてまで本を運んだり、話し相手になったり。
 
少し…ヤキモチ焼いたかな。
 2人の親友としての関係に。
 …神部君が辛い時に1番必要だと感じたのは、彼女としての私じゃなくて、親友としての重谷君なんだって思ってしまって。
 今考えると、馬鹿みたいだわ。
 何も出来ない自分の歯痒さを重谷君のせいにしたかったのかも知れないけど。」
「事故後…彼等の関係は、より親密になったんですよね。
 それって…まさか、秘密の共有もあり得るんじゃ…。」

 秘密の共有⁉︎
 神谷先輩は重谷先輩と神部先輩を、図書室の怪人の共犯者だと断定してるのか?

 僕は薄っすらと手に汗をかきはじめた。
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